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15話 交差する感情part2

数時間後、服を買い終わった為俺は宿に戻ろうとしていた。

ちなみに服選びに時間がかかったのは、どの服が一番自分に合っているのか、と言う事を考えていた為だ。

合っているのか、というのは、この世界から見て一般的な服であろうと、それが俺の黒髪碧眼の容姿とあっていなければ違和感が目立ってしまうからだ。

決してオシャレに気を使ったわけではないのだ。

そして値段、一般度、趣味、そして他人の目線を判断して買った服がこれだ。

ジーパンによく似た淡い青色の服に、少し緑がかったシャツ、と言った感じの服だ。

因みに帽子をつけている人はこの世界には少ない上に、あまり売っているわけでもない。

ちなみにミスラと碌に話ができてない今、こんなどうでもいい事ばかり考えているのは現実逃避に近いものなのかもしれない。

と、言うか嫌われているのではないかと言う不安を服の話で頭を埋め尽くして隠しているだけだ。

そんな事を考えている間に、もう宿へ着いてしまった。

まったく、楽しい事が来るまでは待つ時間が長いくせに憂鬱な時間とは早く来てしまうものだ。

俺は宿へ入り、ミスラのいる部屋へ向かう。


コンコン

「ミスラ、入るぞ」


軽く言葉をかけるも、帰ってくるのは無言のみ。

意を決して入ってみれば、そこには寝ているミスラが。

やれやれ、人が苦悩していると言うのに呑気な事である。

しかしまぁ、ベッドの上で布団もかけずに寝ているのでは格好としてもあまりいいものではない。

俺がそっと布団をかけてやった時に、見てしまった。

まるで泣きはらしたのであろう赤く腫れた瞼を。

自分はやはり、ミスラに辛い思いをさせてしまったのだろうか。

そう考えると、”申し訳ない”。

? 今少しだけ、自分の感情に違和感を感じた。

自分で思った事に自分で疑問を持つなんて相当疲れているか、思い悩んでいるのだろう。

俺も少し寝るか……。

俺は既に使われているベッドではなく、ソファに横になると少しの間その意識を手放した……。

———

目が醒めると、ボクの体にはなぜか布団がかけられていた。

ボクは泣き疲れてそのまま寝たはずではなかったのか?

その答えはすぐ横にあった。

ソファの上で、寝るときもなお笑顔を崩さないユズキの姿がそこにはあった。

かけてくれたのか......。

少し気を使わせてしまったな、反省。

ちなみに泣き疲れる程に泣いた理由は、まず数時間前に考えに考えた結果自分の気持ちの悪さに気がついたところ、と言うのが一点、もう一点はそんな気持ちの悪い自分が嫌で嫌でユズキを避けるようにしていると、少しだけユズキは笑顔に曇りを見せるようになった為、その罪悪感からだ。

ユズキが思ったよりボクのことを気にかけてくれていた、と言う言い訳は出来ない。

何せ、ボクを作り出して最初に偉ぶっていたボクですら「歓迎する」、とまで言ってくれていたユズキだ。

歓迎してもらって、「気にかけてもらっているなんて知らなかった」なんて言うのは、最低といっても過言ではないだろう。

自分から望んでおいて相手の好意を受け取らないというのはルール違反ではなかろうか。

もう知ってしまったことは覆せない。

そう、受け入れるしかないのである。

この”気持ちの悪い自分”を受け入れ、ユズキと今まで通り接することがやはりボクにとってもユズキにとってもいいのではなかろうか。

いや、それも言い訳だな。

本当は自分が楽になりたいだけでしかない。

ユズキに迷惑をかけた上、気持ちの悪い自分を受け入れるしかない、と甘んじて、それを最善策だと思い込む。

あまりに無責任ではなかろうか。

やはり自らで罪を償い、誠意を持って対応するのが最善策ではないか。

ならば、もうここにはいられまい。

ボクは散々迷惑をかけた。

そしてユズキの笑顔に曇りをもたらした。

もうボクがここにいる資格など、ないだろう。

そう思いドアを開けて出ようとすると、笑顔をユズキから寝言が漏れ出す。


「行かないでくれよ......お前まで......」


それは、まるで今の状況を分かって言っているのではないかと思わせる寝言。

このお前、はボクのことではないだろう。

あんなことをしておいて自分が求められていると考えるのは、あまりにも傲慢だ。

これは恐らくユズキが地球にいたときの夢を見ているのだろう。

ユズキにも、大切な家族や仲間達が居たはずだ。

何せユズキもまた、あんな穢れを抱えているとは言え”普通の”人間だったのだから。

それでも、妄想してしまう。

自分であればいいのに、自分を求めていてくれ、と。

あまりにも我が儘で自己中心的な発想。

しかしボクは、ドアノブを握る手を下ろし、ベッドに座ると、謝る為の言葉を一枚のメモ用紙に書き始め、それを練習し始めた。

———

一方その頃地球では。


「おい、聞いた? お前。ボスが行方不明だそうだ。」

「大丈夫か......? ボスなしでどうやってこの機関は生き残ればいいんだよ......」

「え?でも俺さっき執務室付近でボスを見かけたんだが......? 」

「なんだよデマかよお前。そんなのを信じてるからお前はいつまでたっても脳筋って言われてるんだよ」


黒服の、ガタイの良さそうな男達は輪になって話し始める。

そこの付近に、もう一人隠れた黒服が。

こちらは、一切の気配を感知させず、すっと廊下へ消えていくと、何やらマイクのようなものに小声で言う。


「こちらY=7隊隊長、ボスの複製体(クローン)の目撃情報の散布の成功を確認しました。」

「こちらA=2隊隊長、了解。固有体(オリジナル)の捜索は切り上げ、今後は複製体(クローン)のみでの活動を主体とする事を最高権限複製体(サブスティテュート)が指示した事を報告する」

「承認しました。それではこれより本部へ帰還します」


そこで通話は切れる。

舞台は変わり、最高責任者室には。


「最重要人物がここに集められた理由は全員分かっているな? 」


一人の幹部らしき男が答える。


「はい、僭越ながら私ダルグ • テンペルトが答えさせて頂きます。用、というのはボスが固有体(オリジナル)の消失により最高権限複製体(サブスティテュート)に移行する、と言う事でしょうか」

「そうだ、と言っても記憶共同体だから大した変わらないがな。一つだけ違うのは固有体(オリジナル)最高権限複製体(サブスティテュート)かどうかと言うだけだ。今回はこの事を言う為だけに集まってもらったんでな、もう帰ってもいい。それぞれ仕事に戻れ」


黒服達は、一斉に頭を下げて少しずつ出て行く。

そこには、一つの大きな大きな組織が、変化に対応をしている姿があった。

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