13話 豹変
闘技場に入ると俺はまずイメージのみで[鉱化]を発動。
あらかじめ壁は撤去してあるため、犬人達からは大きな岩が降ってきたように見えるだろう。
しかし、前回の灰色の姿と違って俺は金色に輝いていた。
そこで俺は一つ推測を立てる。
この[鉱化]は、今まで触れた物体で最高硬度の鉱石を自分の体として生成出来るのでは無いのかと。
それを自由に操れるの走っていたが、あの時神様から貰った金剛石がこんなところで役立つとは思いもしなかった。
恐らく、犬人族ではこの体にはダメージを負わせることは出来ないだろう。
金剛石とは、もとよりそのくらい硬い鉱石なのである。
降ってきたものから逃げる者、攻撃する者、警戒して少し距離をとるものの様々な行動を各々がとる中、俺は自分を”液状化”させた。
これが今回ここに飛び込んだ理由である。
この[鉱化]の能力が如何程のものなのか、また殺傷性はどのくらいあるのか。
液状化自分の体を触手のようにして、一つ、また一つと心臓を貫いていく。
追尾のように追いかけて確実にさせるのでかなり便利な能力といえよう。
そして、液状化が出来た為俺は新たな実験に移る。
この世界に来て間もない以上、実験に実験を重ねて試行錯誤を繰り返していく事が戦闘にて命を落とさない為の方法だ。
まぁこの最強の防御魔法があれば安心だと思うが。
液状化した自分を一箇所に丸めて集めていく。
その集まった金剛石は次第に弾力を持ち始め、楕円形になった。
そう、新たな実験とは自分をスライム化させる事である。
やがて動きは落ち着き、人一人くらいのサイズのスライムが出来上がった。
腕を伸ばす、そんなイメージで触手を生やす。
そしてここで発動させるは、あの日草原で作り上げた一つの魔法。
まず、一つの光で魔法陣が描かれる。
その魔法陣は炎を浮かばせ、その炎の形はじきに複数の魔法陣をかたどっていく。
魔法陣が魔法陣を生み出し、またその魔法陣が魔法陣を生み出す。
そして、大量の魔法陣が最終目標であるある魔法陣が完成させた。
それは一瞬で辺り一面を崩壊させる炎の魔法[火の玉]。
名前負けしているイメージが否めないが、頑張って頑張って600秒間考えた結果だ。
今回これほどまでに大規模な魔法陣を用意したのには意味があり、この魔法は実は——
パタリ、バタリ
一人ずつ、周りの犬人が倒れていく。
しかし”外傷”はない。
この魔法は、[魂魄魔法]と火の魔法の複合魔法なのである。
近くにある敵対的魂を燃やし尽くす、簡単に言うとそんな感じだが、この魔法陣は作るのにかなり頭を使った。
これで発動しなかったらミスラに抱きついて大泣きするところだったぜ...
全員が倒せた所で、俺はスライムモードを解除する。
目の前に広がった血まみれの光景。
吐いてしまいたくなるような、嗚咽が漏れだすような、苦しくなるこの—————————
”生ぬるい”
光景。
戦略も碌に立てず、想定外の事にすら対策も立てず、自分達の力を過信して猪突猛進の馬鹿のように攻めてくる。
面白くない、やりごたえのない応戦。
考えが甘すぎて、甘ったるくて吐き気がする。
「ユズキー!捕獲した指揮官どうするのー?」
何処かでミスラの声が聞こえる。
俺はまた、無表情から、いつも通りで変わらない貼り付けたような笑顔に戻る。
「とりあえずそこに置いといてー」
おもちゃを片付ける前に置いておくかの如く、俺はそう言った。




