11話 試験運用
一晩明けた朝、俺達は宿のおばちゃんにニヤニヤされながら宿を出て、街に来ていた。
やはりミスラはこの世界の住人からしても可愛いのであり、一部屋に2人で寝ると言うことはそう言うこと、と思われているようだ。
何故こんなにあっさりしているのかと言うと、昨日おばちゃんに散々説明したのだが、一度思考モードに入ったおばちゃんを止められるはずもなく、隣の部屋の強面の冒険者も優しい顔で-諦めな?-と説得してきた。
結果80分粘ってダメだったので諦め、そのまま寝ることにした。
ちなみに街に来た理由は、ミスラの冒険者登録の為である。
今回も同じように払って、登録する。
知能のある魔物、という事で驚いていたようではあるが、魂魄魔法の産物であるとすぐにギルドの受付の人は理解していた。
流石ギルド受付員、魔法にも詳しいと言う訳だ。
ちなみにこの場合ミスラは[人型スライム]と言う種族の扱いになるらしく、基本的には人と同じ扱いを受けることが出来るそうだ。
そして、依頼の品でもあったブラッドウルフの大牙を4本納めると、報酬として5000Fが貰えたので今回はこれを使ってそのままミスラを登録する。
これでミスラも冒険者の仲間入りという訳だ。
まぁ俺もまだ一回しか依頼を受けたことは無いのだが。
ミスラの登録も終わったので、今日も街の平原に出る。
プロタイトさんが今回は居ないな、と思ったら、視界の先で騎士らしき人が副団長らしき人に引きずられているのが映った。
何が手を伸ばして叫んでいたがスルー。
俺はあんな引きずられて人に助けを求めるような騎士団長は知らない。
俺の知ってるプロタイトさんはここの門番のはずだ。
そして、本来の門番の人に通行証を見せて街の外に出ていく。
今回街の外に出た理由は、言わずもがな魔法を使う為だ。
しかし、攻撃用魔法は使わずに、便利系魔法...言うなれば感知系魔法だったり、隠遁系魔法だったりするものだ。
まず俺が使いたいのは、[気配察知]と、[処理能力向上]と[魔法強化]と[広範囲化]を組み合わせて作った、俺用魔法[◯ーグルマップ]だ。
これは自分を起点として、イメージした範囲内の魔力を感知できると言ったものだ。
また、殺気や攻撃意思なども感知できる為非常に便利な逃げ魔法である。
また、これは範囲を決めて常時展開が可能であり、範囲内に入った殺意や強大な魔力を感知する事で未然に色々準備もできたりする。
ミスラにもこれを使わせると、
「おぉ...世界が地図のようだよ...」
と言っていた。
それはたしかに某マップなのだから地図だろうな、とツッコミたかったが、別の魔法の行使に忙しかったのでやめた。
さて、気を取り直して次の作品へ。
今度は、水魔法の一種である[霧発生]に[魔法強化]をかけ、[処理能力向上]と[広範囲化]を使った上で[気配隠遁]と[幻影気配]を行使する、6つの魔法同時行使を一つの魔法にまとめた[気配霧散]である。
この魔法は、広範囲にわたり大きな霧を発生させ、かつ自分の気配を消すことで相手の視界の悪化と逃亡を図る逃げ魔法である。
また、[幻影気配]によっていくつか俺の気配そのものに見えるものを発生させる事が出来るので、これに攻撃させて時間を取らせることもできる。
通常[幻影気配]は、気配のみで戦っている人間や、戦う際に相手の気配を読み取る人間の気を散らすだけのものなのだが、こうして[霧発生]で視力を奪うことによって気配頼りにさせる事で居ない自分を作り出せる、と言うものだ。
ちなみに[気配隠遁]も本来見つかりにくくする、程度なのだが、霧発生と相まってとてもいい仕事をしている。
これを使ってみると、どこかでミスラが
「ユズキー?どこに行ったのー?」
と言っていたが、[◯ーグルマップ]で探知しろよ...と思った。
あ、そういえば[気配隠遁]と[幻影気配]を使ってるんだったっけ...。
こちらからは気配を感知できるのでミスラの隣に行き、魔法を解く。
瞬間、霧が晴れて俺がミスラの隣に現れた(ように見えた)。
これをミスラに使わせて見たのだが、まぁわからない。
誰がミスラでどこにいるのかがさっぱりわからなかった為、自分でもなかなか有用なものを作ってしまったと自画自賛する。
さて、これが最後、これも水魔法の[氷壁生成]と、[処理能力向上]、おなじみ[広範囲化]、[魔法強化]と、最後に少し難しめの魔法、[対象転移]と[無機物再生]と言う、0.1秒経過ごとに対象の無機物を0.1秒前の状態にする[複製魔法]の一種だ。
[対象転移]は、範囲を指定した中にあるものを別の指定先に飛ばす魔法だ。
これによって作り出せるものがこちら、[氷の大迷宮]である。
どこかの姉のように氷で城を作るとまではいかなかったが、壊してもすぐ再生をし、一つの街レベルの大きさの大迷宮を秒で作る事ができ、相手をすぐさま転移させる事が出来るという割と強い逃げ魔法だ。
これを使い、ミスラと俺を転移させたが、破壊出来ない出口がない、寒いの三連コンボで相当辛かった。
これもミスラに覚えさせたが、ミスラは使おうとはしなかった。
想定に反してかなり寒かったようである。
そうして2人で火魔法で温まっていると...
「「ッ!!」」
と、2人が一斉に同じ方向を向いた。
2人は壮絶な、大量で一定の速度の...殺意の塊を[◯ーグルマップ]で感知したのだった。




