あめがた(佐賀銘菓)
前に、佐賀銘菓のあめがたが贈られてきた。ぬかの中にオブラートにくるまれたあめがたが一本ずつ潜り込んでいる。仙台の笹かまぼこを大きくしたような舟形をしていて、触ると柔らかい。食べる時は、机のヘリに勢い良く叩きつけると、パキッと音がして二つに割れるのだ。割れた時にだけ石のように硬くなる。だが、食べる時はぐにゅぐにゅに柔らかくなった。
口に含むと、白い部分は、水あめを少し固めたような感触で、どことなくミルクを薄めたようなやわらかい甘さを感じる。食べ進むうちに、中に仕込まれている黒砂糖が舌をざらつかせて、ほのかな塩味が、舌の中央を突く。やがて甘い部分と黒砂糖の野性味なコクの深さがアクセントとなって、あめがたの世界に取り込まれてしまうのだ。
子供の頃に食べた時、製品名はよくわからなかった。次に食べたいと思った時は、作っていないと母から言われた。しばらく存在すら忘れていたが、十年前ぐらいに、作っている職人さんが見つかったからという理由で、一度だけ贈られてきた。
子供の時以来食べていなかったあめがたの箱を開ける。あの当時の感覚、ぬかの匂い、飴細工のようでいて餅にも近い柔らかさが思い出される。隠し味の黒砂糖も健在なのだろう。
ぬかの香ばしさが食欲をそそる。黄土色の粉の中にうずもれていた『あめがた』を掴んで、テーブルの端でたたき割り、硬い断片を口中に入れると、ゆっくりとやわらかい飴に変化した。黒砂糖の塊がアクセントとなり、単調でいて癖になる甘さに別の趣向を加味する。そしてゆるゆると、少年時代に堪能した不思議な食感の虜になっていく。
あめがたは家族で食べた。友人には渡さなかった。なぜ家族だけで賞味していたのかはわからない。たまたまチャンスがなかっただけかもしれないし。渡す前に消費してしまったのかもしれない。一家全員、甘いもの好きだというのも影響しているのだろう。
あめがたの漢字での名称は知らない。飴型かもしれないしあめ型と表記されている可能性もある。でも、私としては、ひらがなで「あめがた」と書かれた方がしっくりとくる。それ以前に、名前の分からない九州のお菓子として認識していたので、名前なんてわからなくても、いいのかもしれない。