7歳、魔王に三行半を叩き付ける訳で その1
「う~ん・・・やっぱ有り得ん」
一人、部屋に居た俺は裸で姿見を見ながらつぶやく。
3年、3年で有る。『男子三日会わざれば刮目して見よ』とはよく言われるのだが・・・
刮目してみてもこれは・・・無いわ。
俺、7歳。身長、大体170cm位 体重は・・・乙女らしく秘密にしとく。スリーサイズ、83-60-86。美乳!
髪は腰辺りまで伸び、少しウェーブが掛かっている。手入れが大変。でも慣れた。順調に乙女化してるわ・・・自分。
体型、グラビアとかTVで見てたモデル体型に+20%程筋肉を足した感じ。腹筋とか割れてる。・・・割れてるんだよ・・・
・・・・・・前世のだらしなかった自分の体型を思い出して少し泣いた。
顔、幼さが抜け、清楚さと凛々しさに磨きが掛かってる。つい見惚れてしまう。
・・・いや、ナルシストとかじゃ無いよ?ホント。
中身オッサンだからさ、つい美人を見ちゃうの仕方が無いじゃん?
それが偶々自分だったって可笑しな状況なだけじゃん?
まぁ多分 スキル『身体能力強化』の効果も付属してるんだろう。とは言えこれは明らかに育ち過ぎだ。
6歳の時、周りからも異様な目で見られてたよ。今?もう慣れたんじゃね?
(早熟が関係してたりするのか、魔族の特性なのか・・・確かめる術が無いんだよなぁ)
そんな事を思いつつ支度を整えて行く。そんな折、メイドが慌てた様子で部屋に飛び込んで来た。
「お嬢さ・・・あ、し、失礼いたしました!!」
「良いのよ。それより何か急用かしら?」
「あ、ハイ!ヴォルフ様の部隊が・・・亜人領から敗走したとの事です!!」
マジか!!ヴォルフはこの3年でさらに実力が伸び、魔王軍の副幹部の位置に名を連ねる程になって居た。
「・・・まさか・・・ヴォルフ殿程の実力者を跳ね除けるなんて・・・」
「はい・・・未だに信じられません・・・卑しい亜人風情が、其処までの力を持っていたなどと・・・」
部屋から出ると、施設内は物凄く慌しかった。多分情報処理が追い付いて居ないのだろう。
それ程までに衝撃的な出来事だった。
亜人領・・・エルフ、ドワーフ、日本でよく見る人間の割合が高い獣人等々の連合だ。
周りを大小様々な島に囲まれ、一つ一つの島が天然の塹壕の役割を果たす。その所為で直接的な本土侵攻が困難なのである。
特に『ミグェラル海域』と呼ばれる魔族領と亜人領の間の海域には、無数に在る島毎に強力な防衛網が敷かれており、
対空、対海力は強力。で、付いた名が『奈落の絶海』である。
それに対し、魔王軍は比較的離れている島を1つ1つ潰して回ると言う地道な作戦を展開していた。
ヴォルフの隊は、その列島制圧作戦に置ける、重要な拠点となっていた島の防衛任務だった。
その島を失ったと言う事は、この作戦のほぼ失敗を意味する。
嫌な流れが始まった気がした。
(スケジュール・・・早めないと駄目かもしれん)
そろそろハーミットで能力を隠し続けるのも限界だろう。実際、監視の目は厳しくなって来ている。
それでも好き勝手に動けているのは多分、泳がされているのだろう。
少し前、隙を見て魔眼を使いメイドにアナライズを使用した。
【諜報員】と言う想像通りの結果が判明。能力も結構高く、施設内のメイドの6割がソレだった。
・・・まぁ気が付いて居ない『演技』を見破れては居ないみたいだけど。
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スキル
記憶・136 念動力・116 演技・134 錬金術・110
身体能力強化・109 隠密・101 魔力操作・122
軍隊格闘・113 etc
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前に取ったスキルは軒並み100越え。最早誰も到達出来ない領域である。
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付属スキル
記憶⇒サーチ・記憶領域拡張・カメラアイ・new[トレース・賢者(熟練度の20%が各知識を習得したと同義になる)]
念動力⇒ベクトルコントロール・ベクトルブースト・new[多重発動・カウンターベクトル・ベクトルブースト++]
演技⇒ポーカーフェイス・感情抑制・胆力・new[感情刺激・感情沈静]
錬金術⇒形成・new[分解・精製・複製・結合]
身体能力⇒持久力・new[反応速度上昇・反応速度上昇++・瞬発力・持久力++]
隠密⇒足音減少・new[足音減少++・スニーキング・索敵・索敵範囲上昇]
魔力操作⇒複合詠唱(複数の魔法を同時に展開)・new[複合詠唱++・魔力変換(筋力)・魔力偽装・魔力変換(筋力)++]
軍隊格闘⇒ナイフ技術・ディスアーム・new[徒手格闘・ナイフ技術++・呼吸法]
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結構揃ったものだ。特に賢者の項目は驚いた。壊れスキル?と思ったが、
考えてみれば普通は100が限界でそこから20%・・・20では所詮『町の物知り人物』程度でしかなく、100にする労力を考えると・・・まぁ、ね。そう言う事だ。
ヴォルフが帰還したのはそれから1日程後。何とか致命傷は免れていたものの、相当ボロボロだ。
部下達を先に逃がし、殿を務めた事は容易に想像が出来た。
「悪ぃ、やられちまったよ」
部下に心配を掛けさせまいと気丈に振舞う。
「・・・畜生、俺らは何も出来なかった・・・」
「そんなに自分を責めんなよ、ありゃ化けモンだ。仕方が無かったんだ」
「クソッ、何なんだよ!ありゃーよ!!!」
ガンッ!苛立ち紛れの蹴りが机に入り、花瓶が揺れる。
「一体何が有ったのですか?」
「お嬢か・・・実は」
そこで一通りの顛末を聞く。
「・・・そうだったの・・・」
「悔しいが・・・俺らじゃ太刀打ち所か前に立つ事すりゃ無理だ」
隊の一番古株が冷静に分析する。確かに無理だろう。話から想定するに、それは異世界からの転移者・・・
転生が有るのだから、転移だって有るだろう。唯、問題は・・・・・・・
(此方の神様の仕業では無いんだろうな)
そう、此方の神様がわざわざ事態を複雑にするメリットが今の所無い。
X(そう呼ぶ事にした)の仕業と考えるのが妥当だろう。
(それに、もし何か大きい事をするんだったら、コンタクトを取って来るハズだからな)
こりゃ益々スケジュールを早めた方が良いだろう。忙しくなりそうだ。
少し加筆