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そして集まって来る訳で

リューナを覆っていた光が薄くなり、周囲が見え始める。

周囲を見渡すと、ソコは鬱蒼うっそうとした森の中らしかった。

(この感覚・・・エルフの森ではない様ね。光太の魔力をトレースして来たんだけど・・・)

もう一度トレースを発動させると、確かに反応が有った。

(西南へ3~4kmって所ね)

反応の有る方向へ向き直し、歩みを始めようとしたその時、リューナの『感覚』が接近する者を捕らえた。

(敵!?)

瞬時に身構え近付いて来る者の方を向く。

「・・・おやおやぁ?な~んでこんな辺鄙へんぴ野蛮やばんな場所に、至高で清らかなエルフ様が居るのかねぇ?」

その方向から腰に両手を当て、さげすんだ様に顔を伏せながらあおる言葉を発し、リザードマン・・・トムがゆっくりと茂みの中から歩いて出て来た。

「そうねぇ、確かに貴方の様な『魔族』が居るんですものねぇ?此処が辺鄙へんぴ野蛮やばんな場所にも成るってものよね?」

それを聞いたトムは一瞬呆気に取られたが、すぐさま何時もの調子に戻る。

「・・へぇ、皮肉を皮肉で返すエルフが存在するたぁな。驚きだわ」

「全部が全部、『至高で清らかなエルフ様』ではないって事よ」

「・・・成る程。で?アンタはどっから、何しに此処へ来たんだ?」

「・・・・・・・」

リューナは迷っていた。それは当然の事だ、自分の居る場所がまだ把握出来ていない上に接触したのが『魔族』。

嫌な予感がぎる。

(まさか!?此処は【魔族領】!?3人は・・捕まった可能性が・・・)

と、考えているとトムがあっさりと言い放つ。

「あ?もしかしてお前、あの3人の関係者か?」

「え!?」

「やっぱな。警戒網に行き成り現れたからそうじゃね~かと思ったわ。人族2人に獣人族1人、間違いね~だろ?」

「え・・・ええ」

「あぁ、それと言っとくが、此処は【魔族領】じゃねーからな?【人族領】の未開の地だ。俺等の他に人族も大量に居んぞ?」

「え・・っと?いや、え?」

最初こそ警戒していたリューナだったが、トムの呆気羅漢あっけらかんとした振る舞いと話に困惑してしまう。

「ま、立ち話も何だ、一緒に来てくれや。あぁ、流石に武器は渡してくれよ?」

(・・・信じて良いのかしら?・・・いや、3人の存在が知られている以上、付いて行く選択肢しか無い・・か)

リューナは自らの特殊警棒を2つ取り出し、トムへほおった。

パシッ!

それを受け取るトムを見詰め、リューナは気を引き締める。

飄々(ひょうひょう)とした雰囲気を醸し出しているにも関わらず、全くリューナから目を切らずに警棒をキャッチしたからだ。

(・・・ヤバイわねぇ・・・この『魔族達』、相当ヤルわ)

リューナはその間に『気配感知』を駆使し、トムの他に3人までは特定出来ていた。だが・・・他にも確実に『居る』と判るのに、その位置や数をそれ以上確認出来ない。

・・・数秒後、深い溜め息と共にリューナは肩の力を抜き、研ぎ澄ました神経を緩め両手を挙げた。

「降参よ。全く、何なの?貴方達は・・・本当に化け物じみてるわね」

「クハッ、中々のモンだろ?因みに正解は6人だぜ。しかしアンタもエルフなのにヤルなぁ?本当にエルフなのかよ!?」

トムが愉快そうに言った。





「取り合えず、多少の傷は有るけど酷い外傷は無し。大部分は肉体と精神疲労ね」

ベットに寝ている3人を診たミメイが俺に向かい言う。

「なら心配は無さそうね」

「・・・って言うか、イシスさんだって診断出来るでしょ!?」

「出来るわね」

「くあぁぁ~~~!!負けないから!私!絶対負けない!!」

そう言って部屋から駆け出していくミメイを見送る。・・・何か変なキャラに成って来てるな、彼女。

(しかし・・・この感じ、エライ物を持って来た様だな)

傍らで寝息を立てる赤髪の少女を見下ろすと、凄まじい負のエネルギーを感じる。

内々に込められたソレは今にも破裂しそうな危うさを含みつつ、何とか平静を保っていた。

そしてもう1人、獣人の子供の方は・・・『転移』持ちだな。

何ともタイムリーだ。少し『解析』してみたいのだが・・・まぁ本人が起きてからでも良いか。

『おーい!お嬢、客人がまた1人来たぜ、何とソイツ・・』

ピッ!と言う音と共にトムからの通信が入る。

「エルフとか?」

『うぐっ!オイオイ出鼻挫くなよぉ・・・ま、そっちに連れてくぜ。オーバー』

さて、先ずはその人から話を聞きましょうかね。

30分後、トムが件の人物を連れベースの治療所へと入って来る。

「おぅ、お嬢。コイツだ」

「・・お初にお目に掛かります。私、『リューナ・ジレ・アルガ』と申します。以後お見知り置きを」

メイド服を着たそのクール・ビューティーなその人がカーテシーを決めながら言った。

身長は・・俺と同じ位かね。何ともタダならぬ雰囲気を持ってる、トムが気に入りそうな訳だ。

「ご丁寧にどうも。私が此処の統括司令をしている『イシス・ヒメカミ』です。そこまで畏まらなくても大丈夫ですよ?」

俺は椅子から立ち上がり、ニコリと微笑みながら礼を返す。

「・・・そうですか。では・・・あ~!肩凝るわー!」

「行き成り大幅に崩してきたな!?」

余りの落差にトムが突っ込む。

「あはは・・まぁこれが地金かな」

「もう少し警戒するモノとばかり思っていましたけれど?」

「あぁ、まぁ・・ね。3人が無事そうだったから、取り合えず一安心かなと」

リューナが寝ている3人に目をやる。

「・・・しかし、亜人領からこうも続けて来るたぁな」

「そうね・・・出来れば理由を知りたい所なのだけれど・・・」

「では、事のあらましを説明させてもらうわね」

壁にもたれ掛かるトムと共にリューナの方を見ると、リューナが口を開いた。



・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・

・・・・・



「・・・成る程なぁ。しかし話がデケェな」

腕を組みながらトムが頷く。

「一応、コレが私の知っている事の全て」

「『世界樹ユグドラシル』に『死淵石ダーク・オリハルコン』ね・・・」

「厄介な問題を持ち込んだ事は謝るし、もし迷惑なら・・・直にでも此処を出るわ」

「・・・この子達と一緒に?」

「勿論」

俺が3人を見るとリューナが力強く応えた。そしてそれを見たトムが返し始める。

「まぁ、『今なら』それでも良いだろうよ?だがチョット前だったら・・・無理だったぜ?」

「如何言う事?」

「此処はな、人間領の中でも【ブラインドエリア】って言われる場所なんだよ」

「此処【ブラインドエリア】だったの!?」

「あ~、やっぱ知ってたか。まぁ今じゃ危険な生物なんざほぼ居ないけどな」

「なら、尚更・・」

「駄目よ」

「「え!?」」

俺のピシャリとした一言。リューナとトムが目を丸くして俺を見た。

「何故なの?」

「一番の要因は・・・この子ね」

「シオン?何故この子・・・『死淵石ダーク・オリハルコン』!?」

リューナが赤髪の少女を見据えた。

「ええ。中々に厄介よ?本人が意識しようがしまいが、無造作に『負のエネルギー』を吸収しているわ」

「ん?それだと何か不都合があんのか?お嬢?」

「『許容量なんてお構い無し』な勢いなの」

「あぁ、ソイツは・・ヤベェな」

「何らかの方法で放出出来れば良いのだけれど、それでも手に届く所に置いて置きたいのよ。万が一の為に、ね」

「そう言う事か。で?アンタはソイツを踏まえてどうすんだ?」

トムがリューナの方を向いた。

「・・・迷惑を掛けるかもしれないわよ?」

申し訳無さそうに目を伏せるリューナ。

「今更ね」

「だな。今更だろ?それにアンタ、面白そうだ」

「・・・ならお世話になるわ。皆共々宜しくお願いします」

座っていたリューナは立ち上がり、しっかりとした礼をした。

こうして俺達に新たな仲間が増えたのである。






「・・・・う・・・」

ベットから声が上がる。どうやら3人の内の誰かが目覚めた様だ。

一番最初に目が覚めたのは、赤い髪をした女の子。名は 「響 シオン」と言うらしい。

「・・・此処は?」

「此処は人間領の【ブラインドエリア】と言う場所よ」

まだ焦点が合わない様で、彼女は薄目で周囲を覗っている。

「・・そうだ!?コータ君!豪!?」

意識が覚醒すると同時に勢い良くガバッっと起き上がる。

「大丈夫、2人とも無事よ。貴方の隣で寝ているわ」

そう言われ、シオンが横を確認すると、ホッと胸を撫で下ろした。

「・・・あの、有難う。私・・」

「響 シオンさんね」

「え?」

「リューナさんから聞いたわ。彼女も此方に来ているわよ」

「・・・そっか。私ら・・・助かったんだ・・・そっか」

暫く何かを噛み締める様に天井を望み、俺の方を向き直す・・・と、何故かシオンが絶句した。

「・・・・・・マジ?こんなイケてる人見た事無いんだけど!?」

そこかい。まぁ悪い気はしないけどね。

「有難う。そう言えば自己紹介がまだだったわね。私は「イシス・ヒメカミ」よ。宜しく・・」

「イシスヒメカミぃーーーー!!!」

「ぅひゃっ」

滅茶苦茶食い気味に俺の名前を叫びながら顔を寄せてくるシオンに、滅多に怯まない俺が怯む。

畜生、うっかり可愛い声出してしまった・・・まだまだ修行が足りんね。

「あ、アンタ、じゃない!貴方が「イシス・ヒメカミ」さんで間違い無いの!?」

「え、ええ。私の様な名前は・・・多く無い筈よ?」

「そっか・・・行き成り会えた。あの!「ひじり 礼菜れいな」って知ってる!?」

「「聖 礼菜」・・・さん。御免なさい。知らないわ」

「・・・そっか。あ、ゴメン。変な事聞いちゃったよね」

明らかに落胆するシオン。何とか力になってやりたい所なのだが・・・

「・・・その「聖  礼菜」さんを探しているの?」

「そだね・・・『白い子』にさ、貴方を探せって言われたから・・てっきり知ってるんだとばっか思って」

あぁ、神様に会ったのか。確かに中々厄介なモノを抱えてるからな、彼女。しっかし・・・こっちに丸投げかよ神様、ったく、仕方が無いな。

「はぁ、あの子の話なら・・・仕方が無いわね。此方でも出来る限り情報を集めてみるわ」

「マジで!?ホントに有難う!!」

そう言うと急にシオンが辺りをキョロキョロと見渡す。

「リューナさんは?」

どうやリューナを探していた様だ。

「彼女はメディカルチェックをしに、治療所へ行って貰ったわ」

それを聞くとバタリとベットへ倒れ込む。

「・・・あぁ~~・・・マジ死ぬかと思ったよ~」

「災難だったわね・・・残りの2人が起きるまでゆっくりと休みなさい。飲み物は此処に置いて置くわ」

「あんがと・・・そうさせて貰うね」

シオンはそう言うと、ベットの脇に置いた水差しから水をコップへと注ぎ、飲み干す。

その後直に寝息を立て始めた。








「え?マジで?」

「マジよ?貴方、このままじゃ・・・暴走して周囲にとんでもない被害を出すわ」

シオンが俺の言葉を聞いて狼狽する。

あの後、3人が目を覚ますのを待ちつつ、戻って来たリューナに此処の事を話すと、「では私、此処でもメイドとして働かせて頂きます。以後良しなに」

と、瞬時に仕事モードへ移行し、早速仕事へと取り掛かっていった。俺のライバル登場である。しかも相手は本格派?相手にとって不足無し・・・

・・・話を戻そう。リューナから3人を任され、外の広場で現在それぞれに状況を説明している所だ。

因みにこの話は、各主要人物達にも『グリフォン』を通じて伝わる様にしてある。

「けどさ・・・正直、私に何が出来んのさ?制御って言ったって・・・」

そう言いながら持っている銃を見詰める。ふむ。

「・・・成る程。少し『ソレ』を貸してもらえるかしら?」

「え?・・・いやまぁ、良いケドさ・・・」

シオンから渡された銃を手に取ると、早速俺は『解析』を始める。

どうやらコレには意識見たいなモノが有る様だが、今の所は大人しくしている様で『解析』にも協力的に感じた。

「ほぇ~」

間の抜けた様な声を上げつつ、シオンが俺から発生した黒い魔法陣に包まれ宙に浮く銃を眺めて居る。

程無くして『解析』が終わり、銃が俺の右手に戻るとその銃身が光った。

光りの中からは2つ程の球体が分離し俺の左手へ集まる。

光りが消えるとゴルフボール程度の大きさが有る、2つの黒い球体が姿を現した。

「・・・コレで魔力のロスは少なくなったわ・・暴走も多少は落ち着くでしょうね」

そう言いつつ、まずは幾分スマートなフォルムになった銃をシオンへ返す。

「あ、本当だ。何か・・・「スッ」って感じ」

「いや判らんぞ!?」

「感覚だから説明ムズいんだって!」

「随分と仲が良いのね?」

「「いやいや!腐れ縁だって!(ですよ!)」」

(・・・息ぴったりじゃね~か!ったくリア充めが・・)

などど思いながらシオンと豪を見て居た事は内緒だ。

さて、俺の手には銃から分離した残りが在る。

俺は普通の『オリハルコン』を同数取り出すと、今度は『分解』と『精製』、そして『製造』を続けざまに使う。

『黒い魔法陣』が高速回転をし、黒い球体が2つ程形成される。

「さて、暫く待っててね。今新しい武器へと変えてるから。それで豪君?」

「はい、あ、自分の事は呼び捨てで構わないですよ」

「そう?じゃぁ豪。貴方の装備なんだけどね・・」

俺の傍らに置いた彼の装備一式を手に取る事無く、『魔法』で宙へと浮かばせ『解析』を始める。

「・・・・性質たちの悪い悪戯いたずらが施されているのよ」

「・・悪戯・・ですか?」

怪訝そうに聞き返して来る。

「そう、これ等にはね・・・『精神汚染』の術式が精巧に組み込まれて有るわ」

「「『精神汚染!?」」

物騒な単語に声を荒げる2人。まぁそうなるわな。

『それは如何言う事ですか!?』

通信からリューナが声を掛けて来る。

「単語のままよ。静かに、確実に、時間を掛けて使用者の『罪悪感』や、『嫌悪感』を浸食して書き換え行く・・・洗脳にも似た物ね」

「んな物を・・・」

豪が絶句し、何かを急に思い出した様で急に声を荒げる。

「じゃぁ生徒会(あいつ等)3人は!?」

「あっ!?」

シオンが豪と互いに驚いた顔を合わせた。

「他にも居るのね?・・貴方達に使って、他の人に使わない・・・なんて事有ると思う?」

「・・・クソッ!」

憤りを紛らわせるかの様に豪は地面を蹴った。

『・・・例え薬を絶っても駄目だったと言う事なのね』

「即効性と言う意味で薬を使ったんだと思うわ」

『成る程。それでその装備を長く使って行くと・・・』

「人を傷つけたり、殺害しても何とも思わなくなるでしょうね」

「・・うわぁ、最悪」

「何なんだよ!?エルフって奴等は!!」

異世界から来た2人はこの世界のエルフの事がよく判っていない、当り前・・か。

『大体が見た目しか良い所がねぇ、性悪で傲慢な奴等だぜ?』

『エルフが居る所で言うわね・・・?まぁ肯定するけれど』

『肯定しちまうのか』

通信機の先でリューナとトムが会話をする。大体有ってるんだよなぁ、この世界のエルフ・・・結構『良い性格』してるんだわ。

ま、じゃなかったら異世界から誘拐紛いの召喚をしたりしない。

『だとすると・・・俺と戦った『勇者』も君達の知り合いか?』

「えっと?」

『あぁスマン。俺は『ヴォルフ』、隊長をやってる者だ。妙に細身の剣を使ってた奴と戦った事が有ったんだが・・』

「あ~・・・仁美ひとみだね。あの侍カブレ」

「・・・お前結構容赦ないよな!?」

「え~?ソンナコトナイヨ?」

おどけてはみるものの、その内々は複雑だろう。その証拠に、

「・・・私等はツイてたって事・・・かな?」

「・・・だな。俺は幸運だった・・・」

そう言って2人は静かに俯き、周囲に気まずい沈黙が流れる。

そんな沈黙も俺の『解析』と『製造』が終了した事で終わりを告げた。

俺の前には4つ程の装備が浮いている。

豪の大剣と鎧。つい先程までの色味とはうって変わり全てが黒く染まっていた。

そして残りの2つ・・・片方は所謂『リボルバー式』の拳銃。

6連装式で銃身は短い、某【街狩人シティーなんちゃら】が好んで使っていた『カスタムコルトパイソン 4インチ』ベースである。

銃身が短いんで近接仕様、フレームもファンタジー素材をふんだんに使ってガッチガチ。コイツでブン殴ってもフレームは歪んだりしない。いやぁ・・・ファンタジー&銃器・・・・相変わらず相性良いわ。

残りは『マシンピストル』。『ステアー TMP』をベースにした、これまたファンタジー素材たっぷり突っ込んだ代物。

この2つなら大体のレンジでも対応出来るだろう。

「おぉ・・・」

「うわぁすっご」

これを持つ事になる2人は、互いに感嘆の声を挙げた。

俺はTMPの銃身を持ち、グリップをシオンの方へ向けると差し出す。

シオンは戸惑いながらも、おずおずと手を伸ばしソレを握ろうとした・・・・所で俺は銃を上へと持ち上げ、その手を空振りさせた。

「チョ・・イシスさん!?」

それを見た豪と、受けたシオンが苦笑いを溢す。が、俺は厳しい視線を2人に向ける。

「シオン、豪。何気なく『コレ』に手を伸ばした様だけど・・・『コレ』を持つ『意味』と・・・その『覚悟』が有るの?」

そう、これは・・・とても大事で、先送りには出来ない2人への重大な試練。

「「え?」」

そこから何かを感じ取った2人は息を呑み、俺の言葉を待ち・・・

・・・俺は2人へ言い放つ。




「自らの『意思』で『人』を、『生命いのち』を奪う覚悟が」




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