表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/48

リューナの昔語りと暗躍な訳で その1

樋口ひぐち 龍子たつこ」私の前世、日本に居た頃の名前。

どうやら私の人生は、『龍』と言う名詞から逃れられないみたい。今世では『リュー』ナだしね・・・

正直、私はこの龍子たつこと言う名前が好きではなかった。「全く、何処の任侠映画の登場人物だよ!」と、子供ながらに思ったモノだ。

私の実家は武道の道場を開いていた。幼少の頃からそこで色々教わったね。

・・・今思えば何の武術なのか良く判らない・・本当、何の武術だったんだろ?

忍術?に近かったのかなぁ?まぁそれは置いて置こう。

そんなんだったから、小中通してのあだ名は「姉御あねご」とか「あねさん」だった。不本意極まりないよ!

高校から柔道部に入ってインターハイなんかにも出たなぁ。勿論スポーツ推薦枠狙いですが?

で、大学行ってそこから民間の警備会社へ就職したんだよね。そこでは世界の武術を習ったよ。

そんで『SP』になった訳。

私の人生、順風満帆・・とは行かなかったものの、ソコソコ良いと思えた。結婚もしたし、子供も授かった。

・・・人生の転機は・・その子供が生まれた後だった・・・



『先天性心疾患』



病院の先生から聞かされた時・・最初何の事だか理解出来なかった。

ただ、「何で?」とか「どうして私の子なの?」とかの単語が、グルグル頭の中を回っていた事だけ覚えている。

最初の頃はね、旦那とさ、「それでも二人三脚で行こう」なんて綺麗事並べてた。

お互い若かったんだね。そんな器用な立ち振る舞いが無理に成って来たんだ。

何時しか私は私の子供・・「光太こうた」に付きっ切り。旦那も距離を取り始めた。

方々(ほうぼう)手を尽くしたよ?光太も4歳まで生きれたんだ・・うん、精一杯生きてくれた。

天寿を全うした光太が居なくなった時、私と旦那を繋いでいたモノも消えた。

私は復職した。今まで以上に打ち込んだ。取り合えず思い出したくなかったんだ。




その日もさ・・・何時もの繰り返しだって思ってた。

丁度非番だった私は、前日少し・・結構飲み過ぎた。起きたのが何時もより2時間遅い時刻。

酷い在り様でさ、モゾモゾと布団から起き上がろう・・としたその時だった。


『世界が揺れた』


地響きなんて初めて聞いた気がする。ソレと共に凄まじい揺れ。あっと言う間に私の家は倒壊・・・

気が付けば私は瓦礫に埋もれ、動く事も出来ない。

散々鍛えた体なんて何の役にも立たない現実・・そして湧き上がる死の恐怖。

光太を失った時、あれほど未練も興味も失った筈の世界だったのに、今この瞬間、私は「死にたくない」と思った。


「助けて・・・」


誰に言うでも無く、ただ声が出る。

自分ではもうどうしようもない現実を突きつけられた時、私の中に在ったのは「無念」それだった。

そして・・・再びの揺れ。ソレと共に崩れる瓦礫。前世の私が最後に見た光景・・・





ふと気が付くと、私は部屋の様な所に居た。四方が壁で囲まれており家具等は無かった。

「あれ!?何で!?」

声のした方を向くと、シンプルな白い服を着た8~9歳位の少年が一人立って居た。

「・・・・そうか・・・いや、これは・・・」

なんだか1人で思案している。

「あの・・」

「ああ、スイマセン。少し考え事してました」

少年が此方を見た。外見は普通なのに、何故か浮世離れしていると感じる。

「えと、樋口 龍子さんですね」

「え?あ、そうだけど・・・何で私の名前を?」

「あ~・・私、神様なんですよ」

「え?」

「信じられませんよねぇ。しかも、龍子さん・・貴方は亡くなられました」

最後に見た光景を思い出すと、何と無く思い当たる節は有った。

「死んだ・・・のね?私」

「はい。瓦礫に・・・押し潰されました」

「そう・・当事者相手に何とも明け透けに言うのね」

「回りクドイの・・嫌いですよね?」

「そうね」

何とも、神様との会話とは思えないやり取りだなぁと思う。

「それで?私はどうして君の所に居るの?」

率直な疑問を投げ掛ける。

「ソレなんですが、どうやら龍子さんは「引っ張られた」みたいなんですよ」

「「引っ張られた」?」

「はい、龍子さんが亡くなる少し後、同じく亡くなられた方が居ました」

少し思い返す。そう言えば・・・誰かが叫んでいた声が聞こえていた。

「少し前まで、此処でその方と色々話をしていたんですよ」

「へぇ」

「で、その方が此処へ来る切っ掛けとなった『思い』に龍子さんの『思い』が重なった」

「成る程。で、私は此処へついでに来ちゃった。って訳か」

「まぁ、そう言う事ですね。ですがこれは私にとって、とても嬉しい誤算ですよ!」

何だか『白い子』が興奮気味に私に迫る。

「龍子さん!是非私の世界に来て下さい!」

「え?ええぇ!?」

行き成り何を言ってるんだ?この子は!?

「訳の判らないって感じですよね。尤もです!ですが・・・大変重要な事なんです・・・」

そう言うと、『白い子』は視線を床へと落とした。

「重要?」

「ええ。詳しくは言えませんが・・・地球(向こう)にも関係が有る事なんです」

「何とも・・大きな話ねぇ」

「はい。とても大きな規模の話なんです」

正直、私は乗り気じゃなかった。

私の人生、楽しい事も沢山有ったのは判る。けれど、今の私は・・・光太へのウエイトが過ぎていた。

「・・・判りますよ?貴方が何を思っているか」

「そう・・・」

すると『白い子』は顎に手をやり、少し考え始めた。そして・・・

「なら、『報酬』を出します」

「報酬?」

「はい。龍子さんが了承してくれるのなら、それに見合った報酬を贈ります」

「・・・・・・」

思わず黙ってしまう。そんな事が可能なのか?と。けれど相手は一応神様(仮)みたいだし・・・

「だから(仮)じゃ有りませんって・・・」

「私の思考を読んだ!?」

「何この天丼!?」

『白い子』が1人で突っ込みを入れている。何の話?

「はぁ・・話を進めましょう。龍子さん、もし貴方が私の世界へ来てくれるのなら・・・光太君に会わせます」

「なっ!!!」

まさか・・・此処で『光太』の名前が・・出て来るなんて。

「そ・・・んな・・」

声が・・出ない。そんな事が・・

「可能です。流石にソックリそのまま・・・とまでは行きませんが。お互いに認識出来る様にします」

「・・・・」

絶句する私を尻目に、『白い子』は続ける。

「勿論、見た目が全然違っていたら意味が有りませんよね?そこの所も大丈夫です」

「そんな・・・そんな事・・」

死者を冒涜する様な・・・そんな事が・・・光太に・・会える?

「報酬で釣る様な形に成るのは不本意ですが・・・それだけ切迫している状況と言う事なんです」

「・・・・本当に・・・会えるのね?」

「はい!絶対に会えます!会わせて見せます!!」

力強く頷く『白い子』を見て、私の腹は決まった。

「・・・何をすれば良いの?」





・・・それから私はその世界、【ルナルース】の事を教えて貰った。

「で?私に何をさせたいの?」

「スパイです」

「スパイ?」

「はい。龍子さん、貴方には【亜人領】に潜り込んで欲しいんです」

「ぅん?」

「そこで・・・『在る物』を、後から来るであろう『適合者』へ渡して貰いたいんです」

「『在る物』に『適合者』・・・ねぇ。確実に・・『来る』の?」

「はい。確実に・・『行きます』。あの国は・・・古来より『召喚の儀』を行って来ました」

「『召喚の儀』?」

「文字通りですよ。【亜人領】へ他の世界から知性の有る者を呼び寄せるんです」

「それって!?誘拐じゃない!!」

「・・・そうですね」

「何で!?貴方神様でしょ!?何でそんな事・・・」

「私の・・・力が及ばないんですよ・・・アレは『私が干渉した力』では無いんです」

何とも、ばつの悪そうに顔を歪める『白い子』。

「複雑そうね」

「ええ・・滅茶苦茶です」

「・・・まぁ、取り合えずそれは保留にして置きましょう。それで?『在る物』って何?」

「【亜人領】、エルフ族に渡った『ダーク・オリハルコン』と言われる物」

「それを『適合者』へ渡せば良いのね?」

「はい。ですが・・・ソレは国宝として厳重に、しかもその存在は『禁忌タブー』として隠匿いんとくされています」

「それを手に入れて渡すの!?中々ハードね・・」

「ええ。しかもその後、逃げ切らなければ成りませんから」

「そうね・・・逃げ切らなければ意味が無いわ。当てが・・有るの?」

「一応仕込みはします。ただ・・・」

「ただ?」

「光太君にも頑張って貰う事になります」

「・・・そう」

「・・・怒らない・・んですか?」

「何と無く予想は付いていたわ」

「・・・正直な話、龍子さんが此処へ来なければこの『計画』は有りませんでしたし、光太君も登場しませんでした・・・」

「運が良いんだか悪いんだか・・・」

私から思わず苦笑いが漏れる。光太に会えるのは良いが、その所為で光太が危険な目に合うのだ。母親として・・・宜しくないと思うのは当然だろう。

「で?どうやって入り込むの?」

「それは勿論!龍子さんがエルフに生まれ変わってメイドとして!」

スパァン!

「いった!!何故叩かれたし!?」

私は思わず『白い子』を引っ叩いた。

「何なのソレ!?エルフってのはまぁ良いわ!何でメイドなのよ!?しかも決定してる!?」

「良いじゃないですかぁ!姫付きのメイドになれば内部での行動が楽ですよ!?その為の助力は惜しみません!!」

「・・・力一杯言うのね・・・本音は?」

「メイドさん (・∀・)イイ!!」

パァーーン!

再び私の平手が頭へ舞う。

「いったぁー!私!神様!」

「こんな威厳いげんの欠けた神様が居るか!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ