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シオン、その力を振るい、リューナ、過去へと思いを馳せる訳で

少し短め

炎が少し静まって来た頃、シオンはまるでゾンビの様にユラリと起き上がる。

暫く周囲をゆっくりと見渡す。

辺りには最早燃えカスとなったエルフで在った者達の亡骸が多数。

そんな中呆然と地に伏せる豪と目をぱちくりとさせるコータを見つけ、そして何かに納得した様にゆっくりと頷く。

そのまま今度は未だに無事な生徒会3人衆へと視線を向けた。

「・・ッ!」

その表情を見た夜美は、思わず悲鳴を上げそうになる口を強引に噤んだ。当り前と言えば当り前なのだろう。

今のシオンは無表情、瞳に光りは無く、目が合えばその深淵とも言える雰囲気に一瞬で引き込まれそうになったからだ。

その間にも、シオンはゆらりとした動作で右手を夜美の方へ向ける。するとその手には何時の間にか『ダーク・オリハルコン』が握られていた。

『ダーク・オリハルコン』はその手の中で、まるで粘土細工の様にグニグニと形を変え大型拳銃の形へと変わる。

シオンは完全に拳銃の形を取った銃口を3人へ向けると、何かを呟き始めた。

《・・・虚空そらにあるも》

嫌な予感が3人を襲う・・・いや予感では無い。それは『確信』。

《海にあるも・・・》

「皆!私の後ろへ!早く!!」

夜美がそう言うや否や、生き残っていた居た者達が一斉に夜美の後ろへと集まる。

《・・はた 山間やまはざあなにあるも》

『パーフェクト・リフレクション!!』

夜美が『トリガーワード』を唱える。その瞬間、夜美の前に光り輝く壁が発生した。

《およそ この世に・・》

(これなら・・・全ての攻撃を反射するこの『魔法』なら・・)

それは希望。その場に居た、シオンに相対した者たちの願い。だが・・

《死の力の・・およびえぬところはあらず・・禊祓みそぎはらえ実行》

シオンは無感情に引きトリガーを引く。

その瞬間、周囲の黒炎が一瞬にしてその銃へ収縮し銃口から解き放たれた!

ズドオオオォォォオオォオンッ!!!

その黒い塊は音速を超え一気に光りの壁に叩き付けられる!

バギン!ビギンッ!ギ・・・ギギ・・ギギッ・・ギッ!

『パーフェクト・リフレクション』の壁から金属音に近い音が鳴り響く。それらが良い音でないのは直に分かった。

「ぐうううぅぅぅ!!」

その掛かる圧は夜美に直接掛かり、表情が見る見る歪んで行く。

(そんな!この魔法はあらゆる攻撃を反射する筈なのに!?この攻撃は・・・何なの!?)

得体の知れない恐怖が湧き上がり、冷や汗が止めど無く出る。

「クソッ!『ライトニング・アロー!』」

「疾風斬!!」

ドドッ!!ドドドドッ!!!

見かねた仁美と正義が援護とばかりに黒い塊へと何発も攻撃を加えて行くと、やっと勢いが削がれ始め、相殺された頃には夜美は満身創痍になっていた。

圧は相当だった様で、夜美はソレを受け切った後、倒れ込む様に失神してしまう。

その体を慌てて仁美が受け止めると、正義が急いで介抱する為に近付く。

「・・・・あれ?」

そんな相手方を尻目に、不思議そうな声を出しシオンが周囲を見回す。どうやら正気に戻った様だ。

「あれ?私・・アレ?何この状況!?」

「シオン!今は良い!!行くぞ!!」

周囲の混乱に乗じ、豪がシオンとコータの手を取り、森の中へ駆け出す。

ハッ!と気付いた正義は、

「追え!!」

と、まだ無事な衛兵へ指示を出し、その声に応える様に衛兵達は行動を再開した。

・・・ふと、仁美が自分達の居た場所の後方を見る。・・大地はえぐれ、木々は無残に薙ぎ倒されている光景が相当後ろまで続いている・・・

ゾクリと背筋が震える。

(な・・・何なのよ!?アレは一体!?)

再びシオン達が森の中へ消えた方へ視線を向け、静かに戦慄した。





そのほぼ同時刻、亜人領・エルフ族の王宮内の大広間。

中央にはリューナ。そしてその周りを憲兵が囲み、リューナの正面にはレリアとセシーリアが並んで立っていた。

「・・・リューナ、判っているんだろ?」

「ええ。存じ上げております。レリア様」

「お前!」

何の罪悪感も感じていないかの様なリューナの態度に、レリアが苛立つ。

「・・どうしてなのリューナ?何故私達の『国宝』であり、『禁忌タブー』でもある『ダーク・オリハルコン』を・・・持ち出したの?」

「金か?権力か?一体お前に何が起きたんだ!?」

セシーリアも困惑の色を隠せない様だ。しかしリューナは全く動じない。

「金?権力?そんな物の為に『禁忌』なぞ犯しませんよ」

「だったら!」

「報酬は既に受け取っております。それ故、今回の事柄は『報酬に対する対価』・・・と言った所ですね」

「それ程の・・・対価を持つモノが有るの?」

あくまで冷静を装い、セシーリアが尋ねた。

「ええ。私にとって、掛替えの無い・・・本当に大事な者で御座います」

それを聞いたレリアの表情が憎々しいものへと変わる。

「・・・あの忌々しい獣人の小童こわっぱか!?」

ピクリ!と、今まで動かなかったリューナの表情が一瞬動いた。

「そうなの・・・リューナ?」

「・・・ええ。その通りです」

「そんな・・・『たったそれだけ』の為に・・・」

「本当に・・・本当に下らん!お前と言う奴は!『たったそれだけ』の事で自らをおとしめるのか!!」

2人の姫からの落胆とさげすみの言葉。

「・・・フッ・・・フフフ・・・『たったそれだけ』・・ね・・・アハッ!」

「何が可笑しい!?」

リューナの突然の笑い声にレリアが益々怒りをあらわにする・・が、リューナは「お構いなし」と笑い続けた。

「クハッ!ハッハハハハハハハ!!これが、これが笑わずに居られる?人前では散々綺麗事を並べる姫とあろう者達が!たった1人の獣人を!『獣人』と言うだけで!蔑み!忌み嫌う!ほんの数十年前まで手を取り合い生きて来た者達をゴミの様に扱う!」

「奴等は戦争に負けたのだ!だから・・」

「だから『当然』?そうね。そうやって『劣等感』を与え、押さえ付けなければ彼等の報復が怖いものね!?」

「「!?」」

リューナのまるで何かを知っているかの様な言い回しに、思わず絶句してしまう2人。それはつまり『肯定』と言っている様なものだ。

「まぁ良いわ。後は私が時間を稼ぐだけだもの」

そう言ってリューナは、メイド服のポケットから黒いロンググローブを取り出し装着する。

(ドラゴンの皮膚をなめして作ったこのグローブ・・・便りにしてるわよ!)

それを見た周りの者達から驚きの声が上がった。

「そ、ソレは!?お前!まさか!?」

「ええ。そうよ?レリア様。私、獣人族と繋がりを持ってるの。驚いた?」

ドラゴンの皮膚を『なめす』技術は、今の所獣人族にしか無い。その『なめし』た『新品』グのローブを持つと言う事は・・・

「リューナ!貴方何処まで!?」

「フフフ、セシーリア様?そんな大声、似合いませんよ?」

リューナはあくまでふてぶてしい態度を崩さない。

「リューナァァ!お前の連れの動向なぞ既に把握しているんだぞ!!!」

その態度に、とうとうレリアがキレた。が、当のリューナはお構いなし。

「だから、何?言って置くけど・・そう簡単に事は収まらないわよ?」

「馬鹿な事を!」

「さぁ、ね?どうかしらね?」

一体何処からそんな自信が生まれるのか・・・レリアは把握出来ず、困惑する。

実際把握出来ないのは当り前なのである。何せ『白い子』経由の情報なのだから。

「リューナ・・・本当に・・残念です」

セシーリアが右手でリューナを指しながら、悲しげに・・・言い放つ。

「あの者は謀反を企てました!よって今この場にて制裁を加えます!憲兵!捕らえなさい!抵抗するのなら容赦してはいけません!」

「「「「「「ハッ!」」」」」」

憲兵がリューナを取り囲む。それぞれ剣や手槍を構えながら。その数6人。

「・・・ハァ・・・随分私も舐められたものね・・・」

溜め息を付くと、予め太股に備え付けていた棒状の物を抜く。右手でそれを持ち一旦思い切り振ると、「カシャン!」と言う音と共に50cm程度の長さに伸びた。

所謂『特殊警棒』と言う物である。ボディが完全に伸びきった所で、リューナは握りをグリップ中程へ移す。これはエンド部分(グリップした部分から下の場所)を使用する為だ。

「うおぉ!」

気のはやった向かって右の憲兵が剣を振り被る。これでは折角の人数差、囲っている意味が無いだろう・・・と、密かにリューナは思いつつ右のスティックで受け止める。

と、同時に左手でその剣を持つ手首をホールド。一瞬で左腕を絡ませ剣の腹に腕を当てると体を捻り込んだ。

「ぐあっ!」

握っていた剣が手から落ちる。剣をディスアームすると同時に警棒のエンドを叩き込む!

ゴシャッ!ドスン!

エンドは側頭部へクリーンヒットし、その憲兵はそのまま失神し崩れ落ちた。

(全く・・・こんな長い刃物でどうする心算なのかしら?ナイフを『使える』奴の方が数倍怖いわ)

そう言えばあの頃は防刃ベストを着込み、プロテクターも着けて護衛をしていたなぁ・・などと過去・・と言うか前世へとリューナは思いを馳せ始めた。


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