シオン、リューナから色々知る訳で
気が付けば、私は整えられた部屋のど真ん中に立っていた。
足元が微妙に発光しているんで、下を見てみるとどこぞの漫画やアニメの如く魔法陣見たいな・・・
ってか魔法陣だよね?コレ?壁、切り出された石造り。窓無し。光源は・・・何だか判らないこれまた石だね。
「おぉ・・・良く来られましたな『勇者』どの!」
声掛けられたよ。で、声のした方を向くと、どこぞの民族衣装の豪華版を着たオッサンが3人位。
それと騎士みたいな豪華な鎧着た、動き易さ重視のウェーブの掛かったショートボブな肌黒の女性1人、いかにもなお姫様衣装を着た、腰の辺りまで金色の髪を伸ばした色白な女性。
そしてメイド服を着た、ミディアムウルフカットな髪型の女性がその傍らに立っていた。
その他、ランクが落ちた様な鎧きた人々多数。絵図らがモノクロだ。特徴は全員『耳が尖ってる』って事かな。
「疑問は多いでしょうけれど、どうか落ち着いて下さい」
「此処はお前の居た世界とは違う場所だ」
色白のお姫様と肌黒騎士に言われた。うん、まぁ・・・知ってた。此処来る前に言われたし。
「意外と落ち着いて居られますね?普通なら混乱しますのに・・・」
「・・・いや、色々突っ込み所満載で、何から言うべきなのか・・」
色白姫へ「混乱しとるわ!」と、思わず叫びそうになるのを堪え、落ち着いた諷を装う。
こう言う時の妙な『クソ度胸』は両親譲りなんだろな。
「先ずは休め。今後の事はそれかだ」
え?何この上から目線?肌黒騎士何様!?あんた等私の事誘拐したのと変わらないんだよ!?
・・・んで、私の意志なんぞ『関係ない』と言わんばかりに、その他兵士に引っ張られ寝室っぽい部屋へと連れて来られた。何なのこの対応!?
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「・・・・レリア様、あの対応は如何な物かと思いますが?」
それを見て居た私は冷静な口調で、且つ怒りを多少込め言う。
レリアと呼ばれた褐色の、所謂『ダークエルフ』と呼ばれる種族の者は私の方を「キッ」と睨むと、
「何を言っている!あのようなふざけた格好をしている者!碌な輩では無いだろ!?」
・・・まぁそれに関しては多少思う所は有る。何せ『ギャル』の服装だったからなぁ。
そう言えば、この前来た『東上苑学園生達』の制服と同じだった。
・・・何故私が『日本』の事を知って居るか、それは私の前世が日本人だから。
私が姫付きのメイドになったのも、『有る目的』の為。
「駄目よレリア?人を外見だけで判断しちゃ」
「フン!だが結局『人族』だろ?我々とは各が違う!しかもあの髪色だぞ!?」
「それは・・・」
レリアを嗜めようとした姫の名はセシーリア、私が『仮』に仕えている相手だ。
そしてこの会話である。そう、エルフと言う亜人族は他の種族を下に見る。『自分達こそ至高』?馬鹿げているよ。ホント。
比較的軽度のセシーリアですら言い淀む程度に、多種族差別は浸透し切っている。私は出来るだけ感情を殺し、仕える。
全く、『日本』で暮らしていた私からすればこれは『拷問』だ。
「リューナ・・・出来るだけで良いわ。失礼の無い様にね」
「・・・畏まりました」
礼をする。言われずともそうする心算だ。何せ彼女は、私が25年も待っていた『適合者』なのだから。
待っていたよ、この時を。この胸糞悪い領から・・・私の『息子』を連れて出られる日をね。
その為の準備は既に済んでいる。あの2人の姫の信頼も勝ち取っている私なら、後はスムースだろう。
全員が部屋を出て行くのを見送ると、私はニヤリと、笑みを溢した。
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「・・・ハァ、何でこうなった?」
寝室に放り込まれた私は、意味も無く部屋をウロウロしていた。
部屋。まぁそりゃ豪華だよ?けどさぁ・・・窓は嵌め殺しだし、外は見えないし、挙句入り口はコッチから開かないんだよ?
軟禁ってか完全に監禁じゃん!?しかも既に数日。ホント、何なのコレ?
そんでさ、持って来られた食事。まぁ豪華って言えば豪華だったよ?実際食べれば美味しいんだろうね。『食べられれば』。
「これ・・・何か入ってんの?」
最初、食事を持って来た偉そうなオッサンに何気なく尋ねると、
「まさか。大事な『勇者様』にそのような恐れ多い事をする筈が御座いませぬ」
と、『真っ黒』な声色で言われてゲンナリした。・・・異世界に来て最初にした事が、そろそろ始めようと思って居たダイエットだたっとか。笑える・・いや笑えないし。
なので只今絶賛絶食中なのである。ってかまさか食べるまで此処から出さないとか!?
容器の中身をカラにしようにも、部屋にトイレや洗面所なんかの水周りは無いし。
トイレに行きたい時は外に声を掛け、兵士に囲まれるから逃げられないし・・・
詰んでる?変なモン入ってるの判ってて食べんの!?嫌だぁ~・・・
そんでそろそろ限界も近くなった時、その人は来た。
いつも通り食事が運ばれる。ただ、今日それを運んで来たのは、あの時色白姫の隣に居たメイドさんだった。
「どうぞ」
椅子に座った私の前に料理が並ぶ・・・どれも美味しそうなんだよ。水分ですらトイレで取っている現状じゃ、もう我慢出来なさそう・・・
そんな時、この人がそっと、私だけに聞こえる様に言った。
「大丈夫、コレには何も入って無いわ」
驚いた。そんでその声色をを確かめる、嘘は付いてない。思わずその人をガン見してしまう。
彼女は私へニコリと微笑むと、水差しからクラスへ水を注ぐ。手馴れた手つきで、一挙手一投足が綺麗だった。
だが!それよりも!何よりも!!
「頂きます!!!」
久々に思いっきり御飯をかっ込む!
(うっまぁぁぁぁぁーーーーー!!)
理性が吹っ飛びそうになり、叫ぶのを堪えるのに必死になる。それほど飢えてたし、美味しかった。
そんで、その人は私が落ち着いた頃にゆっくり語り始めた。
「始めまして。私、セシーリア様専属メイドの『リューナ・ジレ・アルガ』と申します。お名前をお聞きいたしても宜しいでしょうか?」
丁寧に扱われた事にビックリしたけど、その後未だに名前すら言ってなかった事に驚愕し、更に聴きに来ない上役の奴等に腹が立った。本当、何なの?
「・・・響 シオンです。あの、御飯、有難うございました」
立ち上がって礼をする。まぁコレ位はね。
「・・・響・・シオン、さんですか」
あれ?なんか驚いてる声色が・・・気のせいかな?気のせいだよね?だって此処『異世界』でしょ?
「そんで、私の扱いってどうなの?」
思って居た事を口にする。この扱いだから期待してないけどね。
「・・・正直良く有りませんね」
「あれ?バッサリ行くんだ」
「ええ。隠しても仕方の無い事ですので」
下手に誤魔化さない所は評価出来るかな。
「だったら何で私の事呼んだのさ?」
「召喚する人物は選べません。精々ある程度の『絞込み』位でしょう」
「絞込み?」
「はい、『勇者と呼べる程の力』を持った人物。程度ですね」
「人格とか無視なの!?危なくない!?」
「危ない人物ならその場で処理ですので」
「・・・うわ、最悪!」
「ええ。最悪です」
「え?」
「何か?」
この人・・・自分の仕える所の事なのに平然と言っちゃったよ。大丈夫なのかな?
「私の場合は?」
「まずその服装ですね。そしてその髪の色、私達の間では『赤』は忌み子の持つ色・・・魔族や獣人に多い色なのです」
此処でも先ず髪色なのね・・・何だか・・・気分が下がる・・・
「ですが私は気にしません。むしろ気にする方がおかしいのです」
キッパリと言い切るリューナさん。本当に大丈夫なのかな?この人。
「なので、シオン様への対応は仕方の無い事なのです。不本意ですが」
「いえ、リューナさんが普通?なだけで随分楽になったよ」
「そう言って頂けると・・・私も報われます。それで、シオン様への対応ですが・・・『既に勇者が4人居るから如何でも良い。むしろ忌み子に近いのだから処分すべき』です」
「・・・ふざけんなよ」
余りにも勝手な言い分に怒りを通り越し、無感情になる。
「そして、その『勇者』なのですが・・・どうやらシオン様に近しい人物の様です。その着ている服装が同じでしたので」
それは何と無く予想が出来てる。あの『白い子』に言われていたからね。「学友が居る」ってさ。
「そっか・・・」
「驚かないのですね。まるで『知っていた』かの様です」
「何と無く・・・ね」
「お聞きに成られた・・・のでしょう?『白い子』に」
「ッ!?」
「やはり・・・貴方でしたか」
この人・・・あの子を知っていた!?私の中で色々なモノがグルグルと渦巻く・・・けど、結論へは達せそうも無いなぁ・・・足りないモノが多過ぎだよ。
「大丈夫。私は貴方の敵では無いよ」
「あれ?口調?」
「そこまで畏まれた方が良い?」
「いえ、今ので」
「フフッ、判ったわ。さて、貴方の今後なんだけど・・・選択肢は2つ。1つは・・・言わずもがな。この領への隷属ね」
「れ、隷属!?」
物騒な言葉が出て来ちゃったよ。
「ええ。私が持って来た以外の食事に入っていた薬品を摂取し続ければ、自ずとそうなるの。貴方の場合、何かを察して摂取しなかったのは嬉しい誤算だったわ」
「・・・ますますこの国の事が嫌になった」
「ええ。私もそうよ」
心底嫌そうな顔をするリューナさん。だよね。と、そこで私は1つ気に成る。
「って事は、私の前に来た・・・」
「・・・そうね、彼等は今、傀儡も同然よ。ただ・・・」
「ただ?」
「大森 豪君だっけ?あの子は大丈夫よ」
「え?」
「彼だけ、他の3人とは此方へ来る時期がずれていたの。約1ヶ月位かしら」
それを聞いた私は、あの子の言っていた言葉・・「少しの妨害」を思い出した。これの事だったのかな?
「そのお蔭でね、私の保護が間に合ったのよ」
「そっか・・・それだけでも良かった・・って思った方が良いよね。そうだ!他には?もう1人来てる筈なんだよ!その子の名前は聖礼菜!」
「・・・残念だけど・・・この国にその名前の人物は居ないわ」
「・・・そっか」
「御免なさいね」
「いえ、リューナさんが謝る事じゃないっしょ。それに・・・」
そう、それにここに居ないだけ。別の場所に居る筈だ!だって・・・あの『白い子』が言っていた事は間違ってなかったんだから!
「私、目的が出来たよ。礼菜の事探さなきゃ!」
力強く、リューナさんのエメラルドグリーンな目を見る。リューナさんは頷いた。
「もう1つの道を選ぶのね・・・ええ、そう来なくちゃね!そうじゃなきゃ私も頑張った甲斐が無いわ!」
リューナさんは嬉しそうに頷いた。
・・・私を取り巻く環境は厳しいし、これからの事を考えると頭痛くなって来そうなハズなのに、なんだか胸が高鳴って来る。
(待ってて礼菜!絶対迎えに行くから!)




