そしてそれから・・・厄介事は空から来た訳で sideアスティー
あの出来事から2週間程経ちました。皆さん如何お過ごしでしょうか?
私、アリアスティリア・ホワイトオウルことアスティーは忙しく毎日を送って居ます。
あの後、ミルドさんは早速『グリフォン』を使って本領と連絡を取りました。
【グラルラーゴ家】の行動は素早く、3日もしない内に飛空挺が来ました。極秘扱いなのは言わずもがなですよね。
「我々は早速報告へ向かうよ」
「では、此方からも数人出しましょう。ガルム」
「任せて下さい、お嬢」
ミルドさんに続き、ベース側からはガルムさんを含む数人が、一緒に報告と対応を話し合いに行きました。
『楽園』『レギオン・シード』・・・話さなければ成らない事が山盛りで、大変そうです。
後で聞いた話なのですが、どうやらイシスさんの目論見は成功した様で、近い内に【ブラインドエリア】は【グラルラーゴ家】が実質支配をする運びとなるみたい。
これで安心・・・かな?
そうそう、あれから私達の訓練、凄くなったのね・・・。
「ほ~ら!お前等~!!もっと気合入れろ~!」
今日の教官はトムさんでした・・トムさん案外スパルタなんだよね・・・今はランニングと言う名の森の強行走破をしてます・・・
「ぐはぁ!!」
あ、誰かが朽ちて倒れた木の幹に足を取られて転んだ。
「ほーれ、んな所で遊んでっと魔獣に喰われんぞ~」
そう言いながらトムさんは後ろからドンドン迫ってくる。アレで本気じゃないんだから驚異的です。
「「「ヒイィィィ!!!」」」
因みにトムさんに捕まると、基地に戻った後、追加で3km走追加でありまする・・・鬼ぃ!
しかしトムさんもですが、ヴォルフ隊の皆さんは実に軽快に森を駆け抜けます。
何かコツが有るのかな?と、この前ヴォルフさんに聞いてみると、
「馴れだな」
・・・馴れですかそうですか。
「・・・隊長・・・感覚で教えるのは悪癖だってお嬢から言われたの忘れたッスか?」
「むぅ・・・」
すると後から来たニコさんにヴォルフさんが咎められてました。
「コツは3歩先位を予測するッス。索敵なんかも上手く使えるとなお良しッスね」
「後はバランス感覚だな。お嬢が『インナーマッスル?』ってのを鍛えろと言っていたよ」
そう、ヴォルフ隊のトレーニングで一番驚いたのが筋力トレーニング。
それまではただ重い物を持ち上げるだけしかしていませんでしたが、ヴォルフさん達から習ったのは、ストレッチみたいな緩い動きの『体幹トレーニング』と言うモノでした。
「コイツもお嬢から教えられたんだが・・・最初は俺達も「何だコリャ?」だったよな?」
「そうッスねぇ・・・けど3ヶ月位したらまぁ・・・自分でもビックリしたッスね」
「ああ、体のキレが増してたからな」
「因みに、お嬢は張った綱の上で飛んだり跳ねたりして鍛えてるぞ?」
「アレ出来るの、ウチでもまだ隊長と私含め3~4人位ッスよね」
「・・・・マジデスカ・・」
イシスさん流石です。
そんなこんなで、強行走破は終わりましたが・・・
結果は9割の隊員が捕まり、最早グロッキー状態で訓練場を走って居ます。私?・・・勿論9割の方でしたよ・・・ぐふっ。
訓練が終わると・・・次の地獄が待ってます。
「おらぁ、さっさと席に着けや~!」
・・・・座学です。講師は引き続きトムさんです。何故座学!?と思うかもしれません。実際私達もそうでした。
「んじゃぁ、何時もの通り言語学な。今日は亜人語だ」
「「「「うへぇ・・・」」」」
私も含め全員ゲッソリです。あ、ルークさんも居た。
「こんなん必要なのかよぉ!?」
ルークさんが言います。うん、もっと言って。
「・・・・あのな?前にも言ったよな?俺等みて~な特殊部隊(何でも屋)は、他領にも頻繁に出向いてたんだよ!そこで「言葉ワカリマセ~ン、文字ヨメマセ~ン」じゃ話になんねーーんだよ!」
「だからって何で俺等まで!?」
「お前等賛同したよな?俺達の『訓練に付いて来る』ってなぁ?これも訓練だ、文句言うな。それに『楽園』が絡む可能性考えりゃ、作戦がココだけで行われるとは限んねぇだろ」
「ぐあぁぁぁぁ!!ちきしょう!やってやらぁ!!!トムでも出来たんだ!俺等にだって・・・」
「あぁん!?俺が何だってぇ!?」
トムさんが剣呑な雰囲気を醸し出し始めました。
「ルーク、どうやら俺等は個人的に話す必要が有るみてぇだなぁ?」
「え?いや!?オイ、皆!?え!?何で目ぇ逸らすの!?」
うん、明らかに失言したルークさんが悪い。そしてそれ以上に私達を巻き込まないでくれないかな?バカ。
その後、講義が終わるとルークさんはトムさんに襟首を引っ掴まれ、引き摺られて行きました・・・
「イヤァァァァァ!!!」
「うるせぇ!」
・・・何処かで見たことの有るやり取りですね。
それらが終われば、次は待ちに待った食事の時間です。
今はまだ少ない食料でやりくりしていますが、イシスさん率いるヴォルフ隊の面々が開拓を手伝ってくれているので暫くすれば自給自足も出来る様に成る筈です。
「はいどうぞ」
「有難う御座います、イシスさん」
最早当り前となったイシスさんのメイド服姿を見ながらトレイを受け取る。
本当に家事が好きなんだなぁ・・・私じゃこうは行かないよ。
食材だって豊富ではないのに、メニューが日替わりするのは凄く嬉しい。
「・・・やっぱり美味しいなぁ・・」
用意されていたスープを口に運ぶと、旨味が広がる。本当にどうやって作ってるんだろ?
「グギギギギ・・・相変わらず美味しい・・・ギギギ・・」
声のする方を向くと、ミメイさんが料理を食べながら歯軋りをして何とも言えない表情をしました。器用だなぁ。
「・・・ミメイさん・・・」
「言わないでアスティー!私はこの悔しさをバネとして、絶対に越えてみせる!」
・・・・正直何がミメさんを駆り立てるのか、何を越えるのか判りませんが、まぁ頑張って下さい。私は美味しい食事を続けます。
食事が終わると、当番制で見回りや休息が与えられます。
今日は森の見回りです。集団暴走で、危険な生物は減りましたが見回りはしないと駄目ですよね。
それでも少人数で見回りが済むのは、今も上空で旋回している『グリフォン』のお蔭なんだなぁ・・・とシミジミ思います。
「あ、アスティー?」
「はい、何ですか?イシスさん」
見回りに出ようと思った所、イシスさんに声を掛けられました。
「コレ、ウィーゴとヴォルフ達へ持って行ってくれないかしら?」
そう言ってイシスさんは持っていた篭を見ます。
「良いですよ。見回りの次いでですし」
そう言って篭を受け取ります。
「そう。有難う」
ニコリと微笑むイシスさんは相変わらず綺麗で・・・同姓なのに見惚れてしまいます。
「じゃぁお願いね」
「ハイ、お願いされました」
私は早速、ウィーゴさんが居るであろう『場所』まで移動を開始しました。
その『場所』へはほんの10数分で着きます。
その場所は森を切り開いた、広々とした平原です。そこにはベンチが有り、皆の憩いの場所となっています。
息抜きには最適な場所で、【コロニー】の子供達も良く此処に遊びに来ます。
辺りを見回すと・・・居ました、ベンチに座りリラックスした格好で本を読むウィーゴさんが。
「ウィーゴさーん!」
「ん?どうしたアスティー?」
本に栞を挟み私の方を向きました。
「これ、イシスさんからです」
「・・・おお、すまんな」
ウィーゴさんはニコニコと笑いながら篭を受け取りました。
「何が入ってるんですか?」
「お嬢特製の焼き菓子とハーブティーだ」
「ええ!?贅沢!」
イシスさんが作ったお菓子を独り占めなんてズルイ!
「フッフッフ・・・それなりの対価は払っているのだ。文句有るまい」
そう言って焼き菓子をこれ見よがしに口の中に放り込みました・・・羨ましい・・
「あ~!牛のお兄ちゃん何か食べてる~!」
すると広場で走り回っていた子供がそれを発見し、大声で叫びました。・・・・ふっふっふ!
「・・・おいアスティー・・・何悪い顔浮かべてるのだ?」
「みんなーー!牛のお兄ちゃんがお菓子あげるってさ~~~!!」
「なっ!?!?」
「「「「「わーーーーい」」」」」
一瞬で子供達に囲まれるウィーゴさん・・・・良い気味です。
「アスティーーーーー!!!!覚えていろよぉぉぉぉ!!!!」
ウィーゴさんの叫びを背に、私はヴォルフさん達の居る『場所』へ走り出しました。
・・・勢いでやってしまいましたが・・これ後でどうなるのかな・・・?
・・何だかヒヤッとした物が背中を伝いましたが気にしない様にしとこう。
ヴォルフさんとニコさんが今居るのは、元【第1研究室】だった所です。
この施設は現在、室内戦を想定した訓練と、罠を回避する為の訓練場として使用されています。
施設の前まで来ると、ニコさんの隣で倒れている人と両手と両膝を付いている人が見えました。
どうやらミルドさんの所の隊員の2人ですね。彼等は監視を兼ねつつ、ヴォルフさん達の訓練を研修している様です。
「あれ?アスティーどうしたんスか?」
「あ、これ、イシスさんからのです」
声を掛けてきたニコさんに篭を渡します。
「あぁ、もうそんな時間だったんスか。サンキューッス」
「何入ってるんですか?」
「この2人の為の食事ッスね」
「・・・ニコさん達のは?」
「私等は潜入訓練の為に食事抜きッスね、2~3日は抜きッス」
うぇぇ・・・厳しいなぁ・・・そんな話をしていると倒れていた人がゆっくりと上半身を起こします。
「・・全く、・・・何なんだ君達の訓練は」
黒髪5分刈りの髪型をした、褐色の肌の男性が息を整えながらニコさんの方を向きます。
彼の名前はナグ。『ナグ・アルター』、一兵から叩き上げらしいです。
「何って?普通ッスよ?」
「あれが普通なのか!?」
「普通と言うか・・・少し優しい部類ッスね」
「・・・・・」
ナグさんが絶句します。どうやら2人は『ヴォルフ隊隊員のみ』の訓練に参加していたみたいですね・・・無茶します。
「・・・ふん・・どうせ過大に言っているだけだろう」
その横で足を崩した形に座り直した女性が、憎らしげにニコさんに食って掛かります。
彼女の名前はレティアル。『レティアル・スノウ』、金髪に白い肌をしていますね。
彼女は所謂『エリート組み』。家系が生粋の騎士系列らしいです。
「ハッハッハ~、憎まれ口を吐けるんならまだ大丈夫ッスね。コレを食べたら再開するッスよ」
そう言ってニコさんが2人に篭を渡します。それを受け取った2人は黙々と中身の食事を取り始めました。
「それじゃぁ私、見回りして来ますね」
「ん。気を付けて行くッスよ」
「はーい」
ニコさんと手を振り合い、私は見回りを再開しました。
見回りのルート上の情報は、リアルタイムで更新されて行きます。
イシスさんの通信機(イヤリング状の物)を装備すると、個々の魔力に干渉して情報を視界に直接投影出来るんですよ!
しかもそこには各隊員の位置情報やバイタル、危険生物(モンスター等)の存在なんてのも映し出されます。凄いですよね。
全ては『グリフォン』のお蔭・・・上空を望むと、丁度空の彼方を飛んでいる『グリフォン』がうっすら見えました。
じ~っとその姿を目で追います。
《そんなに見詰められるとー、私困りますー》
「うぉっ!?!?」
急に声がしてビクッ!っとなりました。
《こら、ツヴァイ!申し訳御座いませんアスティー様》
《あはっ、ゴメンねー》
2人?が謝って来ました。暫く付き合って判ったんですけど、ツヴァイは結構お茶目さんだったりするんですよ。
「びっくりしたぁ・・・って言うか私の事見えてるの?」
《勿論で御座います》
《ほらー、こんな感じー》
自分の視界に、空中から見た自分の姿が映し出されました。凄い違和感!
「違和感が凄い!でも斬新かも」
動きが第三者視点から見れるのは新鮮です。そんな事をしていると、「ピッ」と言う音と共にフィールド情報が更新されます。
《アスティー様、フィールド上に魔力のゆらぎを確認いたしました》
アインスがそう言うと、マップに赤い点が表示されました。私の場所からそう遠くない所です。
「判った、確認してみるよ。2人は皆に連絡をお願い」
《了解ー》
《了解いたしました。では同時にアスティー様のサポートも平行して行います》
「お願い」
そして私は駆け出します。何だか嫌な予感と共に・・・
私がその赤い点の場所に近付くにつれ、上空にソレが見え始めます。ソレは霧の様な、陽炎の様な・・・奇妙な『ゆらぎ』と言えば言いのかな?
そんな感じのモノが見えました。
《アスティー様ー、魔力のーゆらぎが大きくなって来てるよー》
ツヴァイの言葉通り、その上空のゆらぎは濃く成って行き・・・不意にフッ!と光ったと思った瞬間、その中心から何かが出て来ました。
《アスティー様、生命反応が3つで御座います。どうやら人の様です》
「!?」
アインスの言葉を受け一気にスピードを上げます!生きてる人があの高さから落ちるのは不味い!
『フィジカルアップ!パワー+(プラス)!!』
最近覚えた補助魔法を使い筋力をアップさせると、幅跳びの要領で距離を詰めて行きます。
イシスさんが、攻撃力強化系の魔法の応用として教えて貰った使い方です。
素早さを上げるより、瞬発力を高めた方が良いって言われてから練習していたんですが・・・まさかこんな所でも役に立つなんて思いもよりませんね。
《落下速度上昇中、危険です》
『アースウォール!』
大地から土壁を発生させ、それを足場にして上空へ飛びます!けどまだスピードが足りない!
と、思ったら急に私のスピードが『グン!』と上昇します。これは!?
《『ベクトルブースト!』》
『グリフォン』から聞き慣れた声がしました。
(イシスさんからの遠距離支援魔法!)
一気に速度が上がり、何とか上空から落下する3人に届くと、私は3人を受け止めます。そして勢いの進行方向に背を向け木々へと突っ込みます!
防御力には自信が有りますからね。木の幹なんかをブレーキ代わりにしつつ上手く着地・・・は決まらず、3人を出来るだけ傷つけない様に、勢いを殺しつつ地面へと抛ると私は地面に叩き付けられました。痛い。
「あたたたた・・」
叩き付けられた背中を摩りつつ、起き上がると直に3人の元へ駆け寄ります。
「・・・え?」
思わず素っ頓狂な声が漏れてしまいました。だってそこに倒れて居たのは・・・見慣れない服装を着た、私と同じ位の歳に見える女性と、豪華な鎧を着た、これまた私と同じ位の歳に見える男性。
・・・そして教本で見た事の有る民族衣装を着た、獣の耳と尻尾の生えた・・・所謂『亜人族』の子供が、女性に守られる様に抱かれて倒れていました。
「・・・アインス、ツヴァイ。至急人を呼んで!治療班も一緒にお願い!」
《承りました。至急連絡を取ります》
「お願い!・・・さて・・・」
倒れている3人を見ながら、またしても何かとんでもない事になりそうな予感を、私はひしひしと感じました。




