後始末と今後についてな訳で その3
「・・と言う事でだ、早速その術とやらを・・・」
「それを見せる前にもう一つ『重大な案件』が有るのよ」
「何だ?まだ有るのかぁ!?」
俺の言葉に、いい加減ウンザリと言った感じでクラウスが反応する。
「『その術』を見せる事とも関連してるのよ。・・・そしてそれ以上に・・・」
そこまで言ってミルドの方を向く。
「この情報の機密性はとても高いの」
「どの位なんだい?」
「『SSS』クラスよ」
「ッ!・・・そこまでなのか!?」
ミルドから冷や汗が滲み始める。
「他の隊長達も覚悟してね?多分、これから関わって行く事に成ると思うわ」
「・・・・・・・・良いだろう・・・」
一瞬でピリッとした空気になった場に、マルコの言葉が響く。
誰もその言葉に否定しない、覚悟完了と言った所か。
「・・・では。アインス!ツヴァイ!出番よ」
指をパチリと鳴らすと、皆が囲んでいた机の上にフッと9インチ程のタブレットが姿を現す。
・・・まぁタブレットなんて解らないだろうが。
その画面からホログラフィーで投影されるのは双子の兄妹。
20cm程度の身長、両方ともタキシードを着て居る。うん、執事をイメージしてみました。
《始めまして皆様、私はマスターに創られた『電子生命体』アインスと申します。以後お見知りおきを》
そう言って礼をする、ワックスでしっかり整えられたウェーブのベリーショートが似合うキリッとした顔付きの雄型が「アインス」。
《始めましてー。私ツヴァイだよー、宜しくねー》
その脇で、軽い感じの挨拶をし礼をするのが「ツヴァイ」。ストレートのミディアムヘアをしている、少し垂れ目気味のやわらかい顔付きの雌型だ。
「・・・え~っと、イシスさん?これは・・・」
俺以外が呆気に取られている中、ミルドが何とか口を開いた。
「使い魔や精霊と言った類の存在だと思って貰えれば良いわ」
《そそ、あんまし深く考えちゃ駄目だよー》
「・・・やはり想像の上を行ったな」
ウィーゴが兄妹を見つめフッっと力を抜く。実に楽しそうな表情である。
「では『アレ』をお願い」
《承知いたしました。皆様此方を御覧下さい》
《皆が『レギオン・シード』を殲滅した直後のモノだよー》
そしてアインスの頭上に画像が映し出された。最初は鬱蒼とした森だけの絵、だが直にズームが始まり、木の幹に佇む2つの人影を映し出す。
「・・・ない。折角の『力』も馬鹿に掛かれば台無しだよ」
「あれぇ~あん時の自信は何処行ったのさぁ?キャハハハ!」
それに1秒程度遅れて音声が入って来る。それを見た全員が再び呆気に取られた。
「うるさいなぁ、僕だってまさかこんな事に成るなんて思わなかったんだよ!」
そう言うのは150cm位のボサボサな髪をした、いかにも「村人」と言う服を着た男だった。
「でもさ!でもさ!『裏切り者』の力!ヤバくね?ヤバイっしょ!」
それに返すのは日本(俺達の世界)では有る意味有名な、所謂「ゴスロリ」を来た160cm位の女。
「うん・・・そうだね。『裏切り者』の力・・・想像以上だったよ・・・」
「けどさぁ、私等の邪魔すんなら殺っちゃうだけだしぃ」
「そうだね。『裏切り者』が何で有ろうと邪魔なんかさせない!」
「「全ては楽園の為に!」」
そう言った後、女の方が手を翳す。すると空間が歪み、やがてその歪みは大きくなって2人を飲み込んだ。
《ここで反応がロストしちゃったんだよねー》
その歪みが元に戻ると既に2人の姿は消え去っていた。
「ロスト?どう言う事だ?」
《文字通り「消失」しました。各種センサーにも反応が無く、正に「消失」した様です》
レムルがツヴァイに質問し、アインスが答えた。
「・・・・・・・・・成る程、イシスさんが「機密」と言う訳だ・・・」
「ああ、この口振り・・・『レギオン・シード』に関わっている可能性が非常に高い」
「・・・・・・・・・・『裏切り者』も気に成るな・・・」
「ってかあの状況での『裏切り者』の力って言やぁ・・・イシスしか居ねぇだろ?」
そう言いつつ俺の方を向くマルコ・レムル・クラウス。
「そうね、話の流れからすれば『私』を指している事は明白でしょう・・・ただ、此方は彼等を知らないわ」
「・・・・・チッ!まぁあの話し振りだと敵認定されてる様だからな」
「そして気に成るのが・・・奴等が言った『エデン』と言う単語だ」
ミルドが手を組んで深く思考を廻らせる。
「何か判らんか?お嬢?」
「『エデン』と言うのは、神話や伝承に出て来る、所謂「楽園」の名称ね」
ヴォルフの質問に返す。なおこの世界には『エデン』と言う単語は無いので、前世のを又引っ張って来た。
つまり奴等は『この世界以外の知識』を持っている可能性が在ると言う事だ。
そうなると、真っ先に思い浮かぶのが『X』の存在である。とうとう動き出した・・・と言う事なのだろか?
そんな事を考えているとトム達がそれぞれ話し始めた。
「楽園の為に・・か。キナ臭いなんてモンじゃね~な」
「ああ、まだ未知の相手だろうが・・・『レギオン・シード』の事も有る。軽く見れる相手ではない事は確かだ」
「それにあの『歪み』・・・魔法の類じゃ無い気がするッス」
「そうなのか?ニコ?」
「断言は出来ないッスけど・・・移動系の魔法なんて聞いた事が無いッス」
それを聞いた俺に一つ心当たりが浮かぶ。・・・あぁ・・・こりゃ益々大変な事に成りそうだわ・・・
「どうしたお嬢?」
余程難しい顔をしていたのか、ヴォルフが俺の顔を覗いて来た。
「ヴォルフ、覚えている?」
「何をだ?」
「亜人領で貴方が負けた相手」
「・・・・・正直忘れたい所だがな」
「その相手が言っていたのよね?『此処の人達に呼ばれた』と」
「ああ、そう記憶して・・・まさか!?!?」
ガタッ!!と勢い良く立ち上がるヴォルフ。そして俺とヴォルフの方に視線が集まる。
「あの『歪み』に、『消える様な移動』『勇者と呼ばれた人族』・・・亜人領の法術が使われている可能性が有るわね」
「・・・正直、此処までの規模とは思って居なかったよ・・・『SSS』と言ったのは伊達じゃ無かったね・・・」
椅子の背もたれに体を預け、宙を仰いでミルドが吐くように呟く。
「まさか亜人領まで絡んでくるとは・・・」
「こいつ等・・・ヤベェな!?」
「・・・・・・・・エライ事に巻き込まれたモノだ・・・」
ベースの隊長ズが各々戦慄していると、今まで黙っていたロギスが俺の方へ向き直した。
「・・・イシスさん。一つ、頼みごとが有る」
「何でしょう?」
「俺達を鍛え直して欲しい!図々しい事は十分承知している!だがそれでも・・・頼まれてくれないか!?」
「ロギスさん・・」
「『レギオン・シード』の件で嫌と言う程実力不足を思い知らされた。犠牲者が0の其方と、30名近く犠牲を出してしまった俺達・・・しかもこれから更に厳しくなる事を考えれば・・」
「どう思う?」
俺はヴォルフ達の方を見る。
「俺は構わんさ」
「別に気にしね~よ」
「俺も異論は無い」
「異議無しッス」
「と、言う事みたいね」
「有り難い!オイ!お前等も良いだろ!?」
今度はロギスがベースの隊長達を見据える。
「フンッ!直に追い抜く!覚悟しとけ!」
「有意義な訓練になりそうだな」
「・・・・・・・・・色々なモノが使えそうだな。フッククク・・・」
「・・・付いて行けっかな?俺・・・」
取り合えず否定の声は上がらなかった様なので、ロギスもホッと胸を撫で下ろす。
「と言う事だ。俺も含め宜しく頼む」
「承知した。但し、俺達の訓練はキツイぞ?死ぬ気で付いて来るんだな」
不敵にヴォルフが笑う。
「さて、話も纏まった様なので、そろそろ根本的な問題を解決しましょう」
「何処へ行くんだい?」
「訓練場よ。広い場所が必要なの」
そうミルドへ返すと俺はタブレットを手に取り、徐に椅子から立ち上がった。
所は変わり訓練場、広々とした場所にゾロゾロと隊長格が集まっているのを見た隊員が集まって来る。
『何か在るのか?』と興味津々な様子だ。
そんな中、俺は上空を望む。うむ、段々と来てるな。
俺の様子を見た人々も揃って目線を空へ向ける。と、その視線上に何か小さい『物体』が上空を旋回しているのが見え始めた。
その『物体』は段々と高度を落とし、徐々にその姿がはっきりと見え始める。
「・・何だありゃ?鳥・・・にしちゃおかしいな?」
ルークがそんな事を言う。ソレは確かに鳥の様に見えるだろうが、俺にしてみれば昔良く見た物だ。
そう、それは飛行機のソレ。航空力学や飛行力学などが発展していないこの世界ではまだ見ることも無い物。
「うわぁ!思ってたより大きい!?」
興味深げに見て居たアスティーが思わず声を上げた。全長は7m程なので確かに大きいだろう。そうしている間にソレはアプローチを開始する。
近付くにつれ周囲にエンジン音が響き始めるのだが、直にエンジン駆動から魔導動力へと切り替わりプロペラは完全に停止し、車輪の展開と共に音は静かになった。
「さて、皆様!。危険なので出来るだけ下がって下さい!」
俺の叫びと共に、その場に居た全員がその物体が着陸するであろう場所から遠ざかり、その物体は『スーッ』とランディングを成功させピタリと訓練場に停止する。
テイクオフとランディングの距離が短くて済むのは魔導機関連を組み込んだお蔭だろう。全く魔法様々だ。
「こいつは・・・何だ!?お嬢!!」「お嬢!コレは何だ!?」「コレは何なのだ!?イシスさん!!」
興奮気味にトムとウィーゴ、そしてレムルまでもが俺に詰め寄って来た。えぇ?レムルお前もか。
「まぁまぁ落ち着いて。コレは『無人航空機(UAV)』。私は『グリフォン』と呼んでるわ」
「「「グリフォン・・・」」」
3人のセリフが完全にシンクロする。お前ら何時の間にそんな芸当が出来る様になった!?
そう、俺が魔法と科学技術を融合させ、この世界で『UAV』を再現した物がコレである。
外見や駆動系統などは既に完成されている米国の『リーパー』を3割程スケールダウンさせたモノだ。
下手に弄らないのは運用における長年の信頼性が在るから。信頼性、コレ一番大事。
だが、それでも基本スペックが落ちない処か上がっているのは、先ず間違い無く魔法や魔導機のお蔭だろう。魔法って・・・やっぱりチート。
その内周りに居た人々が『グリフォン』へ群がる、やはり物珍しいのだろう。
「これはどうやって動かしているんだ!?お嬢!?」
「鼻息荒いわよ?ウィーゴ」
《私達が制御を行っております、ウィーゴ様》
アインスの音声がする方へ一斉に視線が向く。そこは『グリフォン』の胴体上部、そこにアインスとツヴァイが投影されていた。
「『グリフォン』は何が出来るんだ!?」
《偵察と戦術補助だねー。装備弄れば攻撃なんかも可能だよー?。レムル様》
「具体的には?」
《偵察については先程見て頂いた通りで御座います。遠見の魔導機を組み込んだハイブリット高感度カメラには、サーマル・ナイトビジョンを完備。超高感度指向性マイクで会話も拾うことが出来ます》
「それが先程の動画か!」
《そうだねー。レムル様。他にも『M・J・A』やー、『M・S・C・A』なんてのも有るねー》
「・・・・・・素晴らしい!!なんと言う物を作ってしまうんだお嬢は!?」
「いや、あの、そんなに顔を近付けなくとも聞こえるわよ?ウィーゴ?目が純粋な少年のソレ・・・」
「いやはや!『グリフォン』と言う存在は戦争の様子を一変させてしまうぞ!?それだけの物を造ってしまうとは・・・恐れ入るよ。是非とも称賛させてくれ!」
「レムルさん?興奮し過ぎでは?後顔近いです・・」
「イヤ・・・マジでスゲェわ。このフォルム、何か判んねぇ動力。だが総じて機能的だ。しかも・・・おいニコ!」
「え?なんスか、トム?」
「コレ、何にも感じねぇか?」
トムが『グリフォン』の方を親指で指す。
「え?」
「やっぱりな。ニコ、おかしいと思わね~か?さっき『魔法』が発動した筈だろ?」
「・・・あっ!?発動時の魔力を感じなかったッス!」
「多分『浮遊魔石』3つ、『風魔石』が4つ。んで・・・アインス達を構成する為の『魔石』も有る筈だ。なのに魔力を感じねぇ!」
「・・・・コレ・・・モシカシナクテモスゴイッスヨネ・・・・ヤバッ!!急に冷や汗が吹き出たッス・・・」
「あぁ・・・俺も鳥肌が立ったぜ」
「・・トムの皮膚でも鳥肌って立つんスか?」
「オイ!!今ソコ気にする所かよ!?」
いや、俺も気に成るんだけど!?・・・そこは触れないで置こう・・・うん。
因みに魔力を感じないのは、『魔石』を発動させる為のエネルギーを電気にしているからだ。
これはただ単に、「魔法で雷(電気)を発生させられるなら、逆も出来るんじゃね?」と言う思い付きからその機構を作り出した訳で。
ガヤガヤとアインスやツヴァイと会話を交わす隊員達の中、ミルドが俺の方へ来た。
「・・・凄い物を造るんだね・・全く、コレが他の領へ渡ったらと思うと・・・振るえが止まらないよ」
「そうね・・・でも大丈夫、コレは完全にワンオフよ。技術も漏らす心算は無いわ」
「・・・つまり我々にも・・かな?」
「勿論ね。まぁ中身を見る位なら良いわよ?」
「え?」
ミルドが目を剥く。予想外の言葉だった様だ。
「オイオイ・・・お嬢?本当に良いのかよ!?」
「良いのよトム。それにね、仮定として『トムに出来る?』」
「・・・・・あぁ、クックック・・・そう言う事か。いや、無理だろな」
トムがニヤリと笑いながら言った。
「え?え?どう言う事ッスか?」
今一判って居ないニコ。するとトムがニコの方を向き、ミルドの方を横目で見る。そして、
「お嬢はこう言ってるのさ。『真似出来るモンならやって見ろ!』ってな。クッハハハハッ!」
それを聞いたミルドは苦笑いを浮かべつつ肩を竦め、ニコは「成る程ッス」と理解する。
先程の電気を発生させる物として、この世界ではまず再現が不可能なリチウムイオンバッテリーを使った。
下手に再現出来そうな物より、現状完全に再現出来無い技術で造った方が、万が一の時でも模倣が不可能だろうと考えたからだ。
燃料を使うエンジンにしたのもその考えの元である。ただ、燃料を使用する機構にした事で『魔力索敵』に掛からない優位性も得られた。
これによりこの世界でこの『グリフォン』は、ほぼ【ステルス機】と成った訳である。
「今の所は諦めとくよ。それで、【グラルラーゴ】へ通信の件なんだが・・・」
と、ミルドが言い掛けた時、ルークが割って入って来た。
「・・・なぁ?んなに難しいのか?ココから通信するのが」
「オイ、ルーク・・・お前、今までココに居てそんな事も知らんのか!?【ブラインドエリア】を囲う山脈には【魔鉱石】や【魔石】、それに【ミスリル鉱石】・・果ては【オリハルコン鉱石】等の『精神感応鉱石』まで混ざっているのだ」
「いや、それは知ってる」
「ヤレヤレ。それらが複雑に混ざり合う事で発生する『魔力波動』が魔導通信を阻害し、山脈を越えられんのだ」
「へ~」
レムルが呆れた様にルークの疑問に答えた。
「そう言う事。だから『グリフォン』を使うのよ」
《そだねー。私達が中継して通信をサポートするよー》
「だが・・・山脈の影響を受けるのでは?」
《レムル様の御心配は尤もで御座います。ですが私達はあの山脈のはるか上空、高度7000m以上での飛行が可能なのです》
「・・・何ともはや・・言葉が出ないな・・・」
《後ねー、中継局ドローンも出すし、通信自体をブーストするから今使ってる通信機でも心配無いよー。大ー丈夫ー》
「因みにその通信は何処まで届くんだい?」
《この大陸の半分程はカバー出来ます。ミルド様》
「・・・本当に・・・規格外だよ。貴方は・・・」
「褒め言葉として取って置くわね」
畏怖の表情を浮かべつつミルドが言い、俺は素直にソレを受け取る。それを傍で聞いていたニコが何かに気付き、口を開く。
「あ!そうか!お嬢の『魔力索敵』!『グリフォン』を使ってたんスね!?」
「その通り」
「は~・・・何にでも使えるんスねぇ・・・もう溜め息しか出ないッス」
そう言いながらニコも畏怖の表情を浮かべるのであった。
《・・では、そろそろ私達は出立しようかと》
「ええ。2人とも宜しくね」
《承りました。マイマスター》《了解だよーご主人様ー》
2人の言葉を聞き、俺は頷く。
「では皆様!『グリフォン』から離れて下さい!」
俺の叫びで皆が離れる。全員十分な距離が取れた所で、『グリフォン』のテイクオフが始まった。
車輪が機体に収納され始めるのと同時に『浮遊魔石』によるホバリングが始まり、ゆっくりと地面を滑るかの様に速度を上げて行く。
十分な加速が得られると同時に上昇が始まり、途中から魔導動力からエンジン駆動へと切り替わりエンジン音が響き渡る。
その音も少しずつ遠くなって行き・・・機体は空の中へと消えて行った。
蛇足として、「M・J・A」⇒魔法妨害装置 「M・S・C・A」⇒魔力索敵混乱装置
と、言った感じデス




