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イシス、新たなる力を使ってみる訳で

ベースから出立し、途中でヴォルフ隊の隊員達と別れる。

彼等はこれからヴォルフ本人と合流しベースの後方へ回りこむ。

「お嬢の懸念けねん当たるッスかねぇ?」

「当たらないならそれで良いのよ」

「ま、当たるんじゃね?ガムーラって奴の話を聞く限りはな」

俺達は気軽な感じで話しながら進んで行っている。のだが、

「な・・・何なん・・で・・すか奴等!?ゼェゼェ・・・軽い・感じの・・・癖に・・ハァハァ。凄まじい・・・スピード・・で・ハァハァ・・森を・・駆け・抜けて・・行って・・ます・・!?」

「・・・規格外なのさ・・・色々と」

どうやら俺達の移動スピードは異常らしい。息を切らしながらミルドとその部下がそんな事を話している。

・・・が、それを言ってしまうとミルド達だって何だかんだで着いて来ているのだ。十分異常だろう。それにこちらは魔族だし。

「「「いやいやいや!!!あんな足場が悪い上障害物だらけの中であのスピードとか魔族でもおかしいから!!!」」」(後日、ミルド&ミルド隊員談)

との事。俺達の間では普通なんだがなぁ・・・?

「「「その認識はおかしい!!!」」」(後日、ミルド&ミルド隊員談)




「では予定通りに」

「ああ、任せてくれ」

そんな感じで分岐点へ着く。ここからはミルド達に頑張ってもらう事になる。

そのままミルド達と別れ、俺、ニコ、トムは全体が見渡せる高台へと移動した。俺達の最初の仕事は観測手スポッター

集団暴走スタンピードの大まかな動きを観測し、その動きをミルド達に伝えるのだ。

それを元にミルド達が動きを調整する役割を担う。

「さ~て、喰い付くかね?」

トムが双眼鏡を覗く。

「う~ん・・・どうなんスかね~」

ニコがその隣で別方向を視る。その先には事前に捕らえていた動物を複数木にロープで括り付けた光景が有った。

「寄生者の命令実行精度の高さはけして高い物ではないわ。後天的に寄生されたとすればなお更ね」

「命令ねぇ・・・」

「そもそもその命令の仕方も問題なのよ。ガムーラの性格を考慮すると、「生きている物を全て殺せ」的な言い方をする筈」

「『生きてる物』ッスか。まぁその言い方で精度が低いとなれば・・・生き物全般が標的になるッスね」

「成る程ねぇ。だからこの少人数でも仕事が出来るって訳か」

「そう言う事。たった一人でも『生きてる物』のカテゴリーに入るわ。後は・・・囲われる様なヘマをしなければだけどね」

「そこら辺はあいつらの技量次第だろ?」

「そうッスね。ま、例え『ヘマ』しても問題無いッスけど」

『聞こえてるぞ?』

「おや、若い女性の声ッスね。そっちにも居たんスね」

『・・・フン!勝手な事を!貴様らにどうこう言われる筋合いは無い!』

「へぇへぇ。精々気張ってくれや」

『無駄話はそこまでだ。来たぞ!』

「こちらでも確認した。動物(餌)にも釣れてるぜ」

『オペレーションスタート』

『『『『了解』』』』

ミルドの掛け声と共に隊員が一斉に動き出す。

わらわらと動く集団暴走スタンピード。遠目からみるとそれはまるで黒い絨毯だ。

ドォーーーン!!!ドカァーン!!ドドドドドドガァーーーン!!!

「発破確認、侵攻妨害効果確認ッス」

「こっちでも確認したぜ。今の所分散した様子はね~な」

魔力索敵マジックサーチ・・・確認完了。『As scheduled(予定通り)』」

『了解。このままオペレーションを続行する』

隊員達が自らを晒し、捕らえて置いた動物を的確に使いながら誘導をする。

ドォーン!

爆薬を使用し、進行方向を確実に潰して行く。

集団暴走スタンピードはゆっくりと、だが確実に森の中に在る広めの泉へと誘導されて行った。

「後方C-3にて残存を確認ッス」

「F-6にもだ」

『前方の誘導を最少人数に変更。後方に残った集団暴走スタンピードの残りを誘導開始』

『『『『了解』』』』

魔力索敵マジックサーチ・・・集団暴走スタンピード誘導率80%確認。やはり優秀ね、スムーズに事が運んでいるわ」

「・・・お嬢、少し気になったんスけど?」

ニコが双眼鏡を覗きながら尋ねて来た。

「何かしら?」

「この広範囲をどうやって魔力索敵マジックサーチしてるんスか?魔力持つんスか?」

「・・・ウフフ、ひ・み・つ。敢えて言うなら魔力の消費は普通よ?」

「あ~・・・もう良いッス。私なんかが考えても『絶対!』至らないッス」

そこまで強調しなくても・・・まぁ実際そうなんだけど。

「ニコにそう言われるのなら・・・『成功』ね」

「え?」

「フフッ、種明かしは後程と言う事よ」

「楽しみにしてるッス!!!」

「オイ・・・だからって目ぇ切るんじゃねぇよ」

「あ、ワリッス!」

興奮のあまり目を輝かせ俺の方を見たニコがトムに注意された。

その後も発破と囮を使い、徐々に誘導が完了して行く。

そして1時間もしないうちに誘導は完了したのである。

魔力索敵マジックサーチ・・・98%確認。十分ね。ミルドさん、退避を開始して下さい」

『了解、総員セーフティゾーンへ移動開始』

『『『『了解!』』』』

「さてと・・・そろそろ行きましょうか」

ミルド達に引くように伝え、準備を始めようと立ち上がる俺。

「お嬢・・・あんまし無茶晒すなよ?」

「・・・トム、無駄ッス。お嬢の非常識は今更ッスよ」

そう言いながら2人が何か残念そうなモノを見る目をして来る。

「・・・何で私そんな目で見られてるのかしら?」

「「自覚してくれ(下さいッス)」」

「・・・むぅ~~~~」

しかめっ面をする。えぇ、不本意ですとも。



===================



8時間後、ワイワイと盛る祝勝会の一部に人だかりが出来ていた。



証言 当日の観測手スポッタートム・トト・トルァリア・トラトル

「あん時の話が聞きたいって?良いぜ。教えてやらぁ」

かたわらに置いたエールを飲む。実にウメェ。流石お嬢が造ったヤツだ。

あ?話?ああそうだったな。集団暴走スタンピードが泉のほとりへ密集した訳だ。

それを見たお嬢はまず、


浮遊フロート


魔法を使って上空へ行ったよ。結構な高さだった。そこまで行くと何時もの・・・って、おめ~らにゃ判らんか。


「『隠者ハーミット』解除」


本当の姿へと戻った訳だ。が、そこで俺とニコは目を見張った訳よ。

「そうッスね~まさか・・・あんなドレスを纏ってるとは思わなかったッス」

「おいニコ!今俺の語りだろが!」

・・まぁ何だ、何時も着てるドレスとは一線を駕すモンを着てたんだわ。

上半身のはっきり体のラインが判る露出度の高めなデザインにスリットの入ったスカート。

コルセット型の鎧に、手首の部分まで何かの金属で出来た短めの篭手になっているロンググローブ。

グリーヴが付いたロングブーツ。

そしてそれらの色が漆黒に統一されてたんだが、そいつがお嬢の青み掛かったプラチナの髪を一層栄えさせてなぁ

しかもなんつーか、黒いオーラみたいなモンまで纏ってるのさ。

そんで途端に魔力量が半端無いもんに跳ね上がった。こいつは何時も通り。隠れてた角や耳もな。

まるでどっかの魔王とは正反対の優雅で気品に満ちた姿だったぜ。

・・・正直ゾクっと来たわ。

『ウ・・・戦乙女ヴァルキリー・・・』

ミルド隊の誰かがそう囁いたのが通信機から聞こえた。成る程なぁ。確かに纏うオーラが翼にも見えるわ。『戦乙女ヴァルキリー』って言われても遜色がねぇと思えたぜ。


「魔法制御・・・複合詠唱・・魔力制御・・自動詠唱シーケンス・・・・」


お嬢が何か言葉を呟く。それと同時に『黒い魔法陣』が幾重にも展開した。そんで初めて見る奴等は大体同じリアクションをするのさ。

『黒・・・だと!?』『何だ・・アレは!?』『黒い魔法陣!?!?』

お嬢がやってる事なんだが、なんかこっちまで鼻が高くなった。


《・・・OK.All Green・・さて、新しい術式を試させてもらうわ》


その声がなんつーか、直接頭ん中に響いてくる感じだったぜ?

「多分、魔法を行使するのに『音』を最適化したんじゃないッスかね?」

「は~ん、そんなもんかね・・・ニコ?」

「トムにまかせっきりじゃ意味がわかんなくなるじゃないッスか!?」

「何だぁ?・・・おいウィーゴ!笑ってんじゃねぇ!!」

ったく、で、それからだろ?お嬢は左手を腰に当て、集団暴走スタンピードの方を望み言葉を発した。



詠唱チャント具現化エンボディング!さぁお食事の時間よ。【暴食】、食べファットマンぎた男!!》



空気が・・・空間が震えた気がした。お嬢の前の低空で、地面と水平に魔法陣が展開される。その大きさたるや・・・多分3~4kmは有ったぜ!

そいつが展開し終わると・・・『ズヌヌヌッ』ってな感じで腕が、顔が、上半身が魔法陣の中から這い上がって来たんだが・・・こいつが・・・なぁ。

下手な山よかでかくて・・・酷く醜い外見してたわ・・・

まず上半身。滅茶苦茶太ってた。ダブダブに肥えてる上に着てるもんがキッツキツなボンテージファッション・・・

勿論腕もビスだのベルトだのが付きまくった皮のロンググローブ、顔は・・・イノブタ。しかも半分レザーのマスク被ってたぜ?

ピアスなんか体や顔中にガッツらさ。だから・・・まぁ・・・インパクトって点では満点だなぁ。

後からお嬢に聞いたが「コンセプトは『美女と野獣』かしら」だとさ。何の事だかサッパリ判らん。



《卑しくさらう左手》



んな事関係無しにお嬢は《言葉》を発しながら、おもむろに左手を集団暴走スタンピードの方へ差し伸べた。

それと連動するように『ファットマン』は左手を大きく振り被ると・・・


『BOOOOOOooooooo!!!!!!』


地面に叩き付けた!

ズズズズウウゥゥゥゥゥーーーーーン!!!

エライ音がした・・・んだが、地震みてーな実際の揺れは無かった。多分ベースでも感じなかったんじゃねぇか?

だが呆気に取られたのはソコじゃねぇ!次の瞬間には集団暴走スタンピードの居た所よか1周りデカイ円周内に在った『あらゆるモノ』が天高く吹き飛んでたんだわ。

「・・・あの空に出来た黒い雲はその時のか!?」

「あ~、やっぱ見えてたッスか」

「信じられん・・・やはり俺もお嬢に着いて行くべきだった・・・!!」

「ケケケ!ザマァみやがれウィーゴ!ありゃ俺達だけの特等席だぜ」

「グッ・・・」

まぁ?ウィーゴは?置いといて?クックック。

地表を見たんだが、あぁ、草木一片すら無かったぜ。

後で近場まで行ったが、残ってたのは土が掘り起こされた後の大地と先程まで『水が張っていた筈の窪み』のみだった。



《粗暴にき集める右手》



右手を上空高く舞う集団暴走スタンピードへ差し伸べ次の《言葉》を発した。と、これまた同時に『ファットマン』は右手を同じ様にかざし、


『GUUUUUUOooooooooo!!!!!!』


何かを握り潰す様に虚空を握った。すっとな?上空に在った『全てのモノ』がその中心1点へと凝縮していったんだよ。

その過程で人間型の寄生者なんかが潰れたり磨りつぶ・・あ、ワリィ。今言う事じゃね~な。



《では始めましょう、大胆且つ繊細な調理を・・・バイオ・メルト・メイルストロム!》



この時、初めてお嬢が自身で魔法を使った訳だ。あぁ、皆まで言うなよ。不穏な単語ばっかなのは判ってんだ。

途端に凝縮した集団暴走スタンピードの周りで液体が無数に発生した・・・かと思った瞬間、そいつが高速で集団暴走スタンピードの周りを周回し始めた。

んで、瞬く間にそれは大きな波みてぇになって集団暴走スタンピードを飲み込んだ。そしてグルグルと中で攪拌かくはんし始めた。

・・・普通に言うと何て事は無ぇ様に感じるだろ?実際目の当りにしてみろ?正に『大渦潮』が恐ろしい速度で回転してんだからな・・・

そんでその様子をニコがな、双眼鏡で見てたんだわ。

「・・・・アレは・・・・エグかったッス・・・・」

「だよな・・・」

ニコが覗きながら「うわぁ・・・エッグ・・・」なんて言ったもんだから釣られて俺も見てみた・・・

・・・寄生者や寄生された魔物なんかが超を越す回転速度で攪拌されながら、まるで小麦粉の塊を水で溶かすかの如く『ボロボロ』と崩れながら溶けて行くんだよ・・・渦の中で・・・

「あんなモン喰らったら・・・駄目だな」

「ダメッス・・・絶っ対駄目ッス・・・」

改めてお嬢の規格外を目の当りにしたわ・・・

ものの数分で集団暴走スタンピードだった『モノ』は消えたよ。あの『レギオン・シード』も然りだ。

最初こそしぶとく残ってたりしたが、徐々に細切れになって液体の中に消えて行ったぜ。

一応「ありゃ何だったんだ!?」ってお嬢に聞いて見たが、「仕組みさえ解れば簡単よ?」だとさ。

ニコ解るか?無理か。だよな。



《さぁ喰らうが良い》



お嬢が止めの《言葉》を発すると同時に『ファットマン』が大きく口を開けた。

その口へと吸い込まれる様に液体が叩き込まれる様に流れ込んで行ったんだわ。1滴残らずにな。

すると、満足したかの様に『ファットマン』は魔法陣の中へと沈んで行ったぜ。

後に残った静寂の中、風の音が嫌にうるさく聞こえた気がした・・・



===================



(・・・ふむ、初めて使ってみたけど上手く行ったな)

結果は上々だった。詠唱を具現化させ、精度と速さを両立させてみたのだ。

複合すればする程、時間も精度も落ちるのを何とかする為に色々弄った結果である。

・・・まぁあの外見はさて置いてクダサイ。ノリです。えぇ悪ノリでしたよ。

でも反省はしない!後悔は・・・少しする。

『バイオ・メルト・メイルストロム』も巧く行った。

一見難しそうなのだが、俺が行ったのは合成ダイヤを大量にぶち込んだ高濃度のアルカリ溶液を高温にし、超高速で攪拌しただけなのである。

そして最後に喰わせたのは、体内で中和をする為だ。流石に色々溶かした物をそのまま垂れ流し・・・とは行けないでしょ?

・・・まぁ色々突っ込み所が有るが・・・魔法や錬金術って便利だと改めて思い知らされました・・・ハイ。

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