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メインベース防衛戦な訳で  side ウィーゴ

自分にしては長文です。

誤字、脱字が結構有るかも・・・

お嬢を見送った後は事前に決めていた通り【コロニー】からの避難民を宿舎へ入れた。

宿舎を最終防衛ラインとしまずはその周りをバリケードで囲っている。

それを更に囲う形でバリケードを展開させた。急造とは言え上出来な部類だろう。

現状より酷い現場なんざ幾らでも体験してきているのだからな。

避難民の人数は547人。全員クリーンアップを済ませ寄生されてない事を確認済みだ。

宿舎内でのバイオハザードなんて洒落にならんからな。

今回の状況で一番問題なのは『レギオン・シード』の対処なのだが、ベース隊員全員に魔力を付属した武器を用意する為の素材は無い。

因みにヴォルフ隊が持つ武器は、お嬢が魔族領から持ってきた素材を使って製造しているので何とかなるだろうが。

施設に残った隊員で魔法を使える者は全体の3割。

諸々を考え、現状一番最適な寄生者への対処方は、体を出来れば4分割し燃やす方法だろう。

手間は掛かるが確実さを取るべきだ。

「ウィーゴ、何難しい顔をしている?」

「・・・後数時間猶予が在れば、もう少し何か出来たかもしれん・・・とな」

「それは仕方が無い。お互いの都合なぞ初めから無いだろう」

「違いない」

俺に話し掛けて来たのはレムルと言う人族。お互い何か引かれるモノが有り、何時の間にか話す様になった。

レムルに限らず隊長を担っていた人物は総じて能力が高い。例外はアスティー位だろう。





そしてお嬢が先発隊と出発をしてから1時間半程度。予想通り事態は動き始めた。

集団暴走スタンピードが向かって来る方向とは逆方向に敵影を確認したのである。

だがこの状況は予想出来ていた為、斥候せっこうを立てていた訳なのだが・・・。何とも工夫が無い。

ただ規模はソコソコの様で、報告では3~400体は居るとの事だった。

対する此方は100人前後。中々に絶望的な差だろう。・・・普通ならな。

問題が有るとするなら、相手の指揮官が有能で細工をして来た場合だが・・・

まぁ斥候の警戒網に引っ掛かっている時点でお察しだろう。

「・・・・・・・・・来たか・・・」

「あぁ、お出ましだ」

「・・・やべぇ、腹ぁ痛くなって来た」

各隊長であるクラウス、マルコ、ルークも準備を始める。ルークもああ見えて一応隊長なのだ、実力は有る・・・らしい。

それから30分後、森の中からある人物がゆっくりと姿を現した。立派な軍服は着ているが、何分でっぷりと肥えた体格がその威厳さを帳消しにしていた。

その姿を見たレムルが苦々しく口を開く

「・・・・やはり貴方ですか。「ガムーラ司令」」

その「ガムーラ」と言われた人物はニヤリと笑みを浮かべる。まるで既に勝利を確実にしたかの様に。

「クックック、どうやら急場凌ぎの悪足掻きをしていたようだな・・・ご苦労ご苦労」

嫌に癪に障る喋り方をする。嫌われる要素が多そうな奴だ。

「余り語る気は無さそうだな・・・だがコレだけは聞いて置きたい、何故『俺達』は無事にベースへ戻れた?」

「ああ、俺も聞きてぇなぁ」

「・・・・・・・・・予想は出来ているがな・・・」

「え?俺に心当たりは無いぞ?」

最後の1人はさて置き、俺も気に成る所だが、多分答えは予想通りだろうな。

「知れた事よ。貴様等はこの私を屈辱し、辱めたからだ!!この私を!!!エリートであるこの!!私をぉぉ!!」

・・・何とも小物臭の漂うセリフである。

「ハッ!くだらねぇな!テメェが無能だっただけだろが!!!」

「・・・・・・・・・貴様の命令など聞いていたら命が幾つ有っても足りん」

クラウスとマルコは命令無視の常習犯だった様だな。ウチだったらえらい事になる・・・まぁそもそもそんな命令など出ないが。

「俺には覚えが無いがな?」

レムルが眼鏡を中指でクイッっと直しつつ静かに語る。

「ふん、そのいけすかん態度が気に入らん!」

「・・・・・・知っては居たが・・・此処まで無能だったとはな。まぁそのお蔭で命拾いをしたのだ、礼は言って置こう」

「貴様ぁぁ!!!」

・・・・頭が痛く成って来る。何なのだこのガムーラと言う男は?私怨でここまでの事を出来るのか?

「ハァハァ・・・まぁいい、貴様らをなぶり殺しに出来るのだからな。それで満足してやろう」

「・・・ならば俺達は何だ!?」

ロギスが声を挙げる。

「・・・ククク・・・ロギス、お前は悪く無いよ。悪いのはその小娘だ」

そう言いながらアスティーの方を指差す。

「直々に命が来たのだよ。その小娘を徹底的にいたぶり、ボロボロにし!殺せとなぁ!!」

「・・・・あのデュアレスの豚騎士・・・」

ボソリとアスティーが呟くのが聞こえた。その体からは殺気が滲んでいる。

「フッ、成る程。少なくとも【デュアレスクロウ家】が今回の件に関わっていると言う事か。良い情報を提供してくれたな。礼を言おう」

レムルが最早ゴミでも見るかの如き目を向けつつ言い放つ。

「!?貴様ぁ!私を嵌めたな!!!」

「・・・何言ってんだ?あいつは?」

「・・・・・・・・・・今更だろ?奴が無能なのは・・・」

クラウスとマルコが呆れた様子で会話をする。全く、あんなのの下に就いていたのだから・・・同情してしまう。

「ハァ・・・もう良い。俺はな、ガムーラ、お前の事を何とも思っちゃ居ない、いや居なかった。だが今は違うぞ?さっさとクタバレ」

そう言いながら静かに怒りを燃やすロギス。

「貴様ら・・・揃いも揃って私を馬鹿にしおってぇぇぇぇ!」

「馬鹿だから仕方がなかろう」

「あぁ馬鹿だ」

「・・・・・・・・・喋る気すらせん・・・」

「あれ?俺がここに居る理由って?」

空気過ぎるルークはさて置こう。

「・・・・クッ、ま、まぁ良い、何を言おうと負け犬の遠吠えよ!これから貴様らは私達に蹂躙され、無様に死んで行くのだからなぁ」

そう言って下品に笑うガムーラ。そして左手を上げると森の中からゾロゾロと寄生者が出て来た。

そこには隊員の服を着たモノや、ボロボロな服を着たモノ、最早元の生物が何だか判らないモノと様々である。

「ククク、命乞いするなら今の内だぞ?そうすれば『仲間』として迎えてやろう」

「何が『仲間』だ!ボケ!!テメェの傀儡に成り下がるだけだろが!!!」

「ハッハッハァ!良いぞぉその絶望に必至に抗おうとする感じが!!そしてそれを蹂躙するのが!!!」

最早救いようの無いボンクラに溜め息しか出ない。

集団暴走スタンピードの方へ主力を向かわせたのが仇となったなぁ!もっと魔族が居ればどうなったか判らんぞ?ククク」

俺の方を向きそんな事を言うガムーラ。確かに今の所この場所には俺しか居ない。『今の所』は・・・な。

「それが貴様の作戦か?」

堪らず俺は口を開いた。

「分断するのは常套手段だろぅ?」

「そうだな。・・・お前、まだ気が付かんか?」

「何!?」

「何故魔族である俺が1人で居る事の理由を・・・だ」

「ハァァ!?何が有ると言うのだ!!!」

・・・まだ気が付かないらしい。まぁ良い。直に思い知る。既に『動いている』のだから。

「まぁ良い!そろそろ下らん話にも飽きた!貴様らを皆殺しにしてぇぇ!俺は中央へ返り咲くんだぁぁ!!!」

ピリッとした空気を感じ取る全員。仕掛けて来る。

「行けぇぇぇ!!!奴等を殺せぇぇぇぇ!!!」

ガムーラの怒鳴り声と共に寄生者が一斉に動き出した。





「・・・ここまでスムーズに行くとはな・・・本当に無能なのか?」

「ああ。無能だ」

俺とレムルはそんな事を言いながら寄生者を処理して行く。

レムルは長剣を使いまず足を切り落とす。足に『レギオン・シード』が寄生している事は無いし、人型の場合動きを封じられる。

その後半身を真っ二つにし、後方に控える魔術士の魔法で処理をして行く。

これは単体で相手を出来る者達の基本戦術だ。

俺の場合は魔力が篭ったタクティカルアックスを叩き込むだけなので楽をさせて貰っている。全くお嬢様々だ。

他の隊員も奮闘している。隊長格とまでは行かないが4~5人で1体を確実に始末して行く。

勿論全員無事・・・とは言い難い。怪我をした者は順次後方に控えたミメイ率いる治療班により治療を受けている。

それでも死亡者が片手で数えられる程なのは奇跡的だろうな。

一方最初こそ余裕ぶっていたガムーラだが、暫くすると寄生者の勢いがあからさまに落ちて行っている事に困惑し始めた様だ。

「な・・・何が起きているのだ?」

「こう言う事だ」

不意に森から声がガムーラへ向けられる。我等が隊長であるヴォルフの声だ。そしてその後に続くヴォルフ隊の面々が見えた。

「!?貴様・・・」

「姿が見えなかっただろう?まさか気が付かなかったのか?」

「な、な・・・なんで?」

「隊員達は確かにお嬢に付いて行ったさ。・・・途中まではな」

「あ・・・ああ・・・」

ガムーラの顔色がドンドン悪くなって行く。

「後は期を見てお嬢から別れ、お前達の後方に回り込んだ。そして『静かに、確実に』仕留めて来ただけだ。情報を共有させない様に・・・な」

俺達の装備を持ってこそ可能な戦法では有ったが、見事に嵌ったな。

ドォーーーン!!!ドカァーン!!ドドドドドドガァーーーン!!!

遠くで連続した爆発音が響き始めた。どうやら『向こう』でも始まった様だ。

「馬鹿な・・・ばか・・・・・な」

既にベースの中へ誘い込まれて居たガムーラ。そして隊長の出現により退路を立たれ逆に包囲される形となる。何とも皮肉な絵図となったモノだ。

既に寄生者の数は100体を切っていた。最早勝ち目は無いだろう。

「悪い事は言わん、降伏しろ。貴様の様に命までは取らないからな」

ロギスが又1体寄生者を処理しながら言い放つ。

「・・・も・・・・こ・・・・・に・・・・がって・・・・」

するとガムーラは寄生者の中心でブツブツと何かを呟き始め、

「ククククク・・ハハッハハハハハハ!!!!」

狂った様に笑い始めた。

「終わりだ!終わりだよ私はぁぁぁ!!!だがタダでは死なん!!!貴様らを全て道連れにぃぃぃ!!!」

そう叫びながら懐から何かを取り出す。それは何かの入った瓶だった。ガムーラはおもむろに蓋を開けると・・・中身を一気に飲み込んだ。

「何を!?」

レムルが叫ぶ。だがガムーラは自身の喉を両手で押さえうつむくのみ。

「・・・・グ・・・ぐぐグ・・・グァァァAAAA!!!!」

と、行き成り叫びを上げ体中を掻き毟り始めた。その力は凄まじい様で皮膚が剥がれ落ちて行く。

「な・・・」

誰と無く声を詰まらせる。その異様な状況に隊員達は為すすべなく見守るのみ。

グジュグジュグジュッ!!!

そのうち異様な音を体から鳴らし、触手の様な物が全身から伸び始めた!その触手は周囲の寄生者を飲み込んでいく。嫌な予感がした。

寄生者が呑み込まれる度にその体が膨れ上がり・・・段々とその身が巨大化をして行く。

「ご、ロ、じでぇェェやぁァァぁるルぁァぁあぁ!!!!」

立ち上がったソレは6mは越える、馬鹿に筋肉の張った赤黒い肌を持つ単眼の巨体の姿をしていた。その傍らにはその縮小版と言える3~4mの怪物が5体、モソモソと立ち上がり始める。

「・・・ヘッ・・・とうとう人間辞めやがった・・・馬鹿な奴だ」

「・・・・・・・・・くだらん奴だ・・・・・・・愚か者めが・・・・」

元上司の姿を複雑な感情を伴った目で見るクラウスとマルコ。

「一体何が起きた!?」

「判らん。だが・・・『レギオン・シード』絡みだと言う事は判る」

「・・・成る程、合理的な考えだ。だとするなら我々のする事は・・・」

「ああ。何も変わらんさ」

レムルと俺が横目を合わせながら状況を整理し合う。

そう、する事なぞ何も変わらん。

「ム゛ダだぁァァ!!!ギざばらニばぁァぁ!ごレをぉォ!ウずゴドばぁでぎンんん!!」

空気を振るわせる様な大きい声と共に単眼の怪物キュクロープスが自身の胸元を開く。

見えたのは『レギオン・シード』・・・に近い何かだ。形は似ていたが、色は不気味な土気色をしていた。

『ざわざわ』と産毛のような触手が動き続け禍々しさが段違いだ。

「うっ・・・わっ」

それを見たアスティーが顔をしかめ思わす声を挙げた。確かにそうなるに値する不気味さだ。

それと共に違和感も感じる。「何故今なのだろうか?」と。

「・・・取り合えず『レギオン・シード・コア』とでも言うべきか?」

それはさて置き、一応呼び名を仮でつけて置く。・・・こればかりは癖なのだろう。我ながら難儀な物を持ったモノだ。

「判り易くて良いな。つまり『コア』を潰せば良いんだろ?」

「軽く言うよなロギス・・・どう見ても分が悪過ぎるだろ!?」

「今更だぞルーク?」

「あぁ今更だよ畜生!!さっさと除隊して故郷に帰りゃ良かったぜ!!」

「コレが済んだらさっさと除隊して、ママのオッパイ好きなだけ吸いに帰りゃ良いだろ?」

「その前につるッパゲに合う様に、お前の眉毛綺麗に剃りつくしてやるぜ。きっと似合うぞ?」

「言うじゃないか?ルーク?」

「言いたくもなるわ!もう泣きそう・・・」

途中までは良かったんだがな・・・急にヘタレスイッチが入てしまう所がルークらしい。

「ロギス!アスティー!ウィーゴ!手を貸してくれ!あの キュクロープスを叩く!他の隊員は援護してくれ!」

隊長の叫びに俺達は頷く・・・が、未だに思考の片隅で違和感が燻っていた。

そうこうしている内に隊長が仕掛ける!ハルバートを振り被りキュクロープスへ飛び込んだ。

グシャッッ!!!

肉を引き裂き、叩き潰れる音が胸元から響いた・・・が、

「クッ!やはり『コア』までは届かんか!」

「グゥがぁァァはァーーーはぁーーームだダぁーー!!」

斬り潰れた肉がモリモリと修復して行く、何と言う再生力だ!

「どうするヴォルフ殿!?」

「・・・届くまで攻撃・・・いや、何だ?この違和感は・・・?」

「やはり隊長もですか!?」

「むダバなジずるヒばないぃィィ!!!」

キュクロープスが左手を振りかざし、そのまま振り下ろす!

ズズズゥーーーーン!!

「グゥっ!!!」「くぅぅっ!!!」

各自が飛び退き直撃は免れたモノの、地面を叩いたその凄まじい衝撃波が俺達に襲い掛かった。

(クソッ!何だ?答えも出せぬままではジリ貧だぞ!)

「ちぃ!」

ザシュッ!!

ロギスがキュクロープスの足を大きく切り裂く!が、又も再生をしてしまう。

「クソッ!駄目か!!」

苦虫を噛み潰した顔をし、ロギスが吐き捨てる。と、

ガギィーーーン!!!

金属同士がぶつかり合った様な金属音が聞こえた。

「っってぇ~~~~~!!何だコイツ!!クソ硬ぇ!!!」

音のした方を見ると、丁度ルークがミニキュクロープスに攻撃を入れていた所だった。

「!!??」

その瞬間、俺の中で違和感が弾け、パズルが一気に組みあがる。そう言う事か!!

そして同時に溜め息が漏れた・・・全く、やはり『無能は無能たる所以が在る』のだな・・と。

気付いてしまえば何と言う事は無い。全く・・・3文芝居(3流芝居)とはこの事か。

「ルーク!後ろに下がって全体を注視しろ!!レムル!ルークの抜けた穴を埋めてくれ!各員、それぞれのフォローを頼む!」

「な、何だか知らんけど判った!」

「了解だ!」

俺の叫びにルークとレムル、そして他の隊員達が賛同し、行動を始める。

「それとルーク!?」

「な、何だ!?」

「後で1杯奢ってやる」

「???あ、あぁ。ありがてぇ」

不可思議な顔をするルークに少し笑いが漏れた。さて、これから暫くは忍耐の時間だ。

全てはルークに掛かっているのだが・・・今更心配になって来たな。

だがそんな心配は杞憂きゆうだった様だ。数分もしないうちにルークが、

「・・・ん?何だアイツ?」

何かに気が付いた。

「ルーーーク!!!どいつに一番違和感を感じる!!!」

俺がそう叫ぶと直に返しが来た。

「アイツだ!左から2番目の奴!!腰が引けてる気がする!!」

「上等だ!」

それを聞き終わる前に俺はソイツに向かい駆け出す。すると、

「ぎザばぁぁァァぁ!!!」

明らかに狼狽をするキュクロープス・・・どうやら当りを引いたな。と言うか自分からバラしてるぞお前?。

「各員!!左から2番目のアイツを逃がすな!他の隊長はアレ以外のミニキュクロープス(ミニデカブツ)の足止めを頼む!!」

「判った!」

「チッ!仕切ってんじゃねーーよ!!!だが今は聞いてやる!!終わらせやがれ!!!」

「・・・・・・・・・正にクライマックスだな・・・」

「俺も行くぜ!!」

それぞれに足止めを行う隊長達。俺は脇目も振らず一直線に標的へ向かう。

「ざゼルがァぁぁぁァ!!!」

だがその巨体を生かし、凄まじい速度でキュクロープスが俺の背後に迫り、その拳を振り被る。

(チィ!どうする!?受ける為に止まるか!?)

一瞬の思考・・・ふと視界のすみにアスティーと隊長の姿が入り、

(考えるまでも無い!!!)

俺は構わず走り続ける事を選ぶ。

ゴゥッ!!

後方で音がした。キュクロープスがパンチを放ったのだろう。

次の瞬間!

ガギィィィン!!!!

派手な金属音が響く。その音がした方を少しだけ振り向く・・・アスティーがその拳をしっかりと受け止めて居た姿が映った。

その姿を確認しつつ俺は急ぐ。フィナーレは直そこだ!



====================



先程まで戦っていたキュクロープスが、走るウィーゴさんを追いかけて行く!

一瞬呆気に取られたが直ぐ様に状況が理解出来た。ヤツはウィーゴさんへ攻撃を仕掛けるだろう。

私の隣にはロギス隊長とヴォルフさんが居る。多分ヴォルフさんならウィーゴさんへのフォローは間に合うと思う。

けど・・・あの攻撃を受けたら流石のヴォルフさんでも吹き飛ばされる。

そしてその体がウィーゴさんに当たれば、確実に動きは止まる。動きが止まれば標的は逃げてしまうかもしれない。

それが判って居るからこそ、ヴォルフさんは二の足を踏んでるんだ。

逃げられたら・・・私達が生き残れる確立は確実に減る。そんな事は絶対させない!させたく無い!

・・・けれど私には問題が有った。速度が圧倒的に足りない。ウィーゴさんとヤツの間に割って入る為の速度が。

(私には何が有る!?考えろ!!私には、私には・・・防御力しかない・・・防御力しかないならそれを生かす術を考えるんだ!!)

ふと、私はキメラに吹き飛ばされた事を思い出す。あの時は痛かった・・・じゃなくて!

吹き・・・飛ばされた・・・?・・・吹き飛ばされた!!

「ヴォルフさん!!!」

私はヴォルフさんの名前を叫びながら直に駆け出し、ヴォルフさんの方へひるがえす。と、同時にイシスさんから貰った新しいタワーシールドをしっかりと構えた。

私の後方ではキュクロープスが今にもそのパンチをウィーゴさんへ放とうとしている。

「ゥオオオオォォォォォォオ!!!!!」

次の瞬間、凄まじい掛け声と共にヴォルフさんがステップインをし、私のタワーシールドの真ん中へミドルキックを放った。

・・・やっぱりヴォルフさんは凄いと思う。私のたったコレだけの行動で、私の考えを理解し行動を起こしたんだから。

私はキックが当たる前に軽くジャンプをする。その勢いを殺さない為に。で、次の瞬間、凄まじい衝撃が私の体を襲う!!

「ッッッ!!!!!!」

正直、「やっぱりしなきゃ良かった」って考えが一瞬過ぎったよ。それだけの衝撃が私の体に響いたんだ。

ブンッ!!

と、風斬り音。周囲の景色が素早く流れた。一瞬ヴォルフさんの顔が見える、その表情が『良い判断だ』と言わんばかりの笑みに見えて、少し嬉しくなる。

ウィーゴさんと拳の間へ、文字通り『飛んで来た』私は瞬時に【スキル】を発動させる!

『グラビディー+(プラス)!!!』

一気に自重が数倍に増えるのが判った。と、同時にタワーシールドを構え直す。

ガギィィィン!!!!

そこへ叩き込まれるキュクロープスの拳。

(・・・あれ?こんなモンなの?)

思い切り気を張っていたんだけど、意外に軽い?・・・と、思ったけど、良く考えたらコレの直前にヴォルフさんの蹴りを喰らって居た事を思い出した。

アレと比べちゃ・・・駄目だよね?ってかヴォルフさん凄過ぎでしょ!?

「アスティーーーー!!!フォローしてくれ!!!」

私を呼ぶ叫び、その声がした方を向く。ヴォルフさんが自身のハルバートを握り、私が止めたキュクロープスの腕へ向け高くジャンプしている姿が見える。

それと同時に、私の体へゾクゾクっとした物が湧く。

多分コレ、歓喜の鳥肌。あれだけ強いヴォルフさんからフォローを頼まれたんだもん。

「はいっ!!!!」

返事をすると同時にタワーシールドを離し、その上部を蹴って私も上空へジャンプする。

「オオォォォォォ!!!!!」

ヴォルフさんが力を込め、ハルバートを腕に叩き込む!

ズゾッグジュグジュグジュグジュ!!!!!

ハルバートは垂直に腕へ喰い込み、肉を引き裂いて行く。そして腕を貫通し地面へと突き刺さる。が、

「チッ!浅い!!アスティーーーー!!!」

「任せてっ!!くだっ!さいぃぃぃ!!!!!『グラビティーー!!!++(ダブルプラス)!!!!!』」

一気に降下速度が上がる!

私は両手でしっかり握ったメイスを振り上げ、10倍位に増えた自重が乗る一撃をハルバートの石突きへと叩き込む!

ゴッシャァァァァーーーーーー!!!!

凄まじい音と共にハルバートが更に深く地面へめり込み、私の打撃を受けた石突き付近が歪に折れ曲がる。

それによってキュクロープスの腕を地面へはりつけにする事に成功した。

「ぎザまらァァぁぁぁぁ!!!!!!!」

キュクロープスが叫びを上げる・・・が、もう自分が動く事も、腕を動かす事も出来ない様子だ。

「アスティー」

「はい?」

「良い仕事だ。良くやった」

ヴォルフさんが拳を突き出し微笑む。

「はいっ!」

私は堪らずグータッチをした。『ゾクっ』とまた鳥肌が立った。



====================



どうやら後方ではキュクロープスの足止めに成功した様だ。流石だ。

それを見ていた標的が逃走を図ろうと後ろを向く。

その様子を受け、俺は確信する。コイツが『本命』だと。

何故わざわざ自分の弱点を晒したのか?数体の分身の意味は?そして本体の『ザル』とも言える防御力と、分身との防御力の差。

・・・正直、「もっと上手く出来るだろ!?」と、突っ込みたくなるが・・・まぁそれも含めて『無能』だったのだろう。

標的のミニキュクロープスは、隊員達を薙ぎ倒しつつ森の中へ向かっている。

俺はお嬢から貰ったベストから先ずは『ボーラ』(複数のロープの先端に球状の重りを取り付けた物)を取り出すと、瞬時に振り、足へ投擲した。

『ボーラ』は見事に絡み付き、標的は思い切り前方へ転ぶ。

ズズゥン!

派手な音を立てて。・・・さて、チェックメイトだ。

俺の後ろでは「ヤべろー!!」だの「ぐゾォォォぉぉ!」だの聞こえて来る。聞き苦しい事この上ない。

モゾモゾと動く標的の背中へ『ブリーチングチャージ』の塊に『雷管』を刺した物をほうり、距離を取る。

ドガァァァァン!!!!!

派手に上がった爆発と爆煙が徐々に晴れ始めた。

再び近付くと、背中には大きなクレーターと・・・その中でうごめく『レギオン・シード・コア』。ただこちらの方は最初に見た物より2周り程小さい。

と、どうやら本体の方が最後の悪足掻きをし始めた様だ。

「むダだぁァぁ!!!ゾればぁァァ!ま゛ァじゅツぅをぉぉォごべダぁァ!ブぎでボぉぉ!ごバぁぜんンん!!」

俺はお嬢が造ったタクティカルアクスで斬り付ける。

ガギッ!

アクスは見事に弾かれた。

「成る程、確かに」

「ガァあぁァばばばババ!!!い゛っだダろぉぉォォ!!!」

「で?だから何だと言うのだ?」

未だにモゾモゾと動く標的を俺は足で踏み、動きを封じる。

「な゛ニ゛ぼぉぉォォ・・・」

「ふむ、では『コレ』ではどうだ?」

俺は再びベストから、お嬢が今回の為に造り出した『焼夷サーマイト爆弾』と言う物を取り出す。

「コレが何だか判るか?コイツが炸裂すると高熱が発生・・・」

「がァバばばバ!!なミ゛のォォ『火』な゛ドぉぉォォ!ぎガんん!!!」

「ふむ、『並み』の火では駄目・・・か。では、約5000℃の熱を発する液状化した金属はどうなのだろうな?試すとするか」

使い方は簡単だ。封を破り、導火線を取り付け、火を付けるのみ。

「な゛!?ナ゛に゛ボぉ!?!?」

「5000℃・・・と、言ったのだが?」

封を破る。

「ゾんナ゛バがなぁァァ!?も゛ノ゛がァぁぁ!?!?」

ちなみにそうそう消えないらしいぞ」

導火線を取り付ける。

「や゛ァ・・・ヤ゛ぁべぇェェ!!!ろ゛ォォぉぉぉ!!!」

「・・・フッ・・・今際いまわのセリフが「ソレ」とはな。やはり貴様は3流だ!馬鹿め!!」

火を付ける。そして『コア』へと投げつけ、距離を取った。

シュバッッッ!!!ゴォオオォォォアアアァァァァァァァ!!!!!!

同時に凄まじい燃焼音が辺りに響き渡る。

「ギャァぁぁァァアあアァァァぁぁぁァァぁ!!!!!!!!」

直接燃やした訳ではないのだが、キュクロープスの方から悲鳴が漏れ始め、同時に分身共の動きが止まった。

暫くすると、本体と分身の体全体が溶解し始め、ゆっくりと形を成さなくなって行く。

『コア』が焼け切ったのだろう。

「・・・・やった・・・のか?」

「ああ。取り合えずベース回りは綺麗になっただろう」

誰とも無い問い掛けに答える。

「・・・う・・・・うぉ・・・・・・・うぉおおおおおお!!!!!」

それが波紋の様に広がり、やがて勝鬨かちどきの大きな声に変わって行った。

「やったな」

レムルが、

「ふん・・・」

クラウスが、

「・・・・・興味が有るな。サーマイト(ソレ)・・・」

マルコが、

「ちっくしょう!!!!生き残ってやったぞ!!!馬鹿やろぉぉぉぉぉお!!!!!」

そしてルークが、勝利を噛み締める。

「助かった」

「なに、俺達の野望の次いでさ」

ロギスと隊長が握手を交わす。

「う・・・うわぁぁ~~~~~ん」

「ちょ、ちょっとミメイさん・・・」

ミメイがアスティーに抱き付き号泣し始めた。

「・・・・さてお嬢、次は何を俺に見せてくれるんだ?」

俺はお嬢が展開しているであろう方を望み期待を膨らませた。


1万字行ったの初めて・・・ ウボァァ

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