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33/48

それぞれの33時間な訳で

9時間経過。集団暴走スタンピード到達まで残り24時間。


深夜と朝の境界とも言える時間帯なのだが、焚き火の明かりの中、ベースでは人々が活発に動き回っていた。

隊員達は木を切り倒し丸太を組んでバリケードを製作中である。

完成したバリケードには随時魔術師達が硬度強化の魔方陣を刻んで行く。

「どんなモンだ?」

「4割と言った所だな。このペースなら間に合うだろう」

クラウスの問いにレムルが答えた。2人はベースの防衛力強化を担当している。

ベース自体は山を背にして建っている為、後方を気にしなくても良いのは良い点であった。

「逃げ場が無い・・・とも言えるがな」

「ハッ、そもそも逃げ場なんざねぇよ」

「・・・・だな。やるしかない」

「あぁ。あの魔族に賛同すんのはしゃくだがな、やるしかねぇ。シンプルで良い」

明け方の澄んだ空気が一段と冷たく感じるのは、気が張っている証拠なのだろう。

そうこうしていると、外周から人の集団を連れた隊員がやって来る。先頭には魔族の隊員がおり、一団を誘導していた。

マルコとルーク、そしてミメイ率いる治療班の混合部隊を分割し、そこに夜でも活動が可能な魔族を各班に3人付け【コロニー】の住人をベースへと避難させていたのである。

「ふぃ~。着いたぜ」

「・・・・・・・・・お前が真っ先に休むな」

住人達への誘導もソコソコに腰を下ろすルーク。それをマルコが冷静にとがめる。

「しゃーねーだろ。夜の森ん中を気ぃ張って移動して来たんだぜ?」

「・・・・・・・・・気を張って居たのはお前じゃなく魔族の方だ」

「それは関係ねぇだろ!?俺だって・・・」

「大あくびしながら「眠い眠い」文句言って歩いてたもんね」

「いや、それは・・・」

ルークの言い訳にミメイの突っ込みが入ると、しどろもどろとなるルーク。そしてそこに追い討ちが入った。

「ほ~~~ぅ、ルーク君、良い気骨をしてるみてぇだなぁ」

「・・・・いや、誤解です。私ネムクアリマセン」

一瞬でスクッっと立ち上がるルーク。その後ろにはクラウスが立っていた。

クラウスは有無を言わさずルークの襟首を鷲掴みにし引き摺り始める。

「来い!オメェにはバリケード造りを手伝わせてやる。有り難く思え!」

「いやぁ~~~~助け「ゴガッ!!」痛ぇ!!!」

「女々しい声出すんじゃねぇ!!!」

クラウスの拳がルークの頭上に炸裂した。そしてそのまま引き摺られて行くルークを回りは苦笑いしつつ見守る。

「・・・【コロニー】の方はどうだ?」

「・・・・・・・・・大方の避難は完了した・・・・・・・・後は時間的に無理だ」

「そうか」

「それに、住人が動けそうも無い【コロニー】も有ったわ・・・かなりの量の・・・・ね」

ミメイの言葉にマルコとレムルが無言になる。そう言った【コロニー】には事実を話さず、薬を処方するだけに止めた。

「・・・悔しいわ。ここまで状況が酷かった事に気が付かなかったなんて」

「慰めにもならんが、全てを救える訳では無いだろ?」

「・・・判ってる。けど、早く知っていれば遣り様なんて幾らでも有った筈なのよ」

そう言いながら白衣の裾を力一杯握り締めるミメイ。

「・・・・・・・・・・・後悔も反省も生き延びてからにしろ」

「・・・そうね。っし、しっかりしなきゃ!」

マルコの言葉にミメイはコクリと頷くと、両頬を手でピシャリと叩き気合を入れ直した。






11時間経過。集団暴走スタンピード到達まで残り22時間。ベース内会議室。


バリケードの目処が立った所で、今度は『レギオン・シード』への対策である。

戦闘に参加する隊員達にガルムが順次レクチャーをしていた。

「つまり通常の攻撃じゃ分裂するだけって事か?」

「その通り。なので魔法か魔力を帯びた攻撃、もしくは火が有効なのです」

「火か・・・だったら寄生主共々直接燃やせば良いんじゃ?」

「それでは『レギオン・シード』まで火が届かない可能性が有るのですよ」

「成る程」

ガルムと隊員達の話が続く中、隣の部屋ではトップ同士での話し合いが行われていた。

「・・凄いな。此処までの情報を手に入れるのに我々ではどれ位掛かるか・・・」

一方はミルド。『エミル・グラルラーゴ』直属の部隊を率いる隊長である。

「もう少し情報をサルベージ出来れば良かったのでしょうけれどね」

もう一方はイシスこと俺だ。机に置いたトムが修復した魔導機を眺めながら話す。

「いや、十分ですよ・・・。これなら調査も進みます。・・・・しかし、相当好き勝手を許してしまいました」

「・・・そうね。おおよそ「人道的」とは言えないわね。不老不死研究に新薬の投与・・・挙げればきりが無いわね」

「しかも性質たちが悪い事に、数国を複雑に絡ませる事で末端を切り易くしている」

「良く練られた計画だったようね。感心するわ」

「だが、これで少なくとも道筋は見えましたよ。後は・・・」

「この状況を乗り越える事ね」

「勝算は有り・・・と思って良いのですかね?」

俺は机の上に有るティーカップを手に取ると静かに紅茶を飲んだ。そして事実を伝える。

集団暴走スタンピード『のみ』だったら、有るわ」

「『のみ』、ですか」

ミルドが『やはり』と言う顔をしつつ腕を組む。

「ええ。相手が集団暴走スタンピードに頼り切るとは思わないわ。ガムーラと言う司令の消息も判らない以上2の手、3の手までも警戒はすべき・・・でしょう?」

そう言い終ると、ある程度紅茶を飲んだカップを机に戻す。

「兎も角、私は集団暴走スタンピードを押さえる事と、『レギオン・シード』の拡散を防止する事に専念させてもらうわ。ミルドさんの隊員の皆様には期待してますね」

「・・・期待に答えられるとは思うよ」

そう言いながら苦笑いをするミルドに俺は笑みを返した。





21時間経過。集団暴走スタンピード到達まで残り12時間。メインベース中庭訓練スペース。


「は~~~い。落ち着いて下さいッス~。イシス特製炊き出しはまだまだ量が有るッスから慌てなくて良いッスよ~」

中庭にニコの声が響き、机に上に置かれた簡易の器に俺の作ったスープが注がれる。その器をトレイに乗せ、パンを添えてから並んだ人々に渡して行く。

「ありがとうおね~ちゃん!」

それを受け取り、ニコニコと笑みを浮かべた子供が両親の元へ向かって行く。

一通りの準備が終わった俺は、炊き出しを率先して行っていた。

「・・・何やってんだ?お前」

「炊き出しよ?」

「いや、そりゃ見て判る。・・・何でメイド服なんだよ!?」

「・・・家事をするならこの服でしょう?」

俺の姿を見たクラウスがメイド服(その姿)に突っ込んで来た。

「イヤイヤ!何「何言ってんだコイツ」みたいな面してんだよ!?もう直ぐ集団暴走スタンピードが来るんだぞ!?緊張感ねーのか!!」

「張り詰め過ぎても良くないでしょ?それに昨日からろくに食事も取ってない筈よ。戦闘中に動けなくなった・・・では済まないのではなくて?」

俺はニコリと微笑みながら、クラウスにパンとスープが乗ったトレイを差し出す。

「・・・ぐっ・・・むぅ・・・」

そのスープから香る良い匂いにぐうの音も出せず、クラウスは乱暴にトレイを受け取りすごすごとテーブルに向かって行った。

「・・・・・・・・・ククク、無様・・・」

「るせえ!!!」

既にテーブルで食事をしていたマルコに茶化されつつもトレイを大事に置くクラウス。強面こわもてでも胃袋を掴まれるとこんなもんだ。

「・・・しかし美味いな。これが全てベースに有った物だけで作ったとは・・・」

「凄いですよね。このパン、薬草と香草が練り込まれてるみたいなんですけど、嫌な苦味とか全然無いんですもん」

「全くだ。このスープにも薬草がふんだんに使われている筈なのに、嫌なエグ味が無い・・・素晴らしい腕だな」

食事をぱく付きながらレムルとアスティーが料理談義に花を咲かせる。

「・・・あれ?ミメイさん?」

と、その横でふるふると体を震わせうつむくミメイが居た。

「どうしました?」

「・・・・かない」

「え?」

「納得いかない!!」

「・・・え?」

「何でこんなに美味しいの?ねぇ!?何で!?」

「え?え?」

恐ろしく素早くアスティーの方を向き、その両肩を鷲掴みにしてミメイがアスティーをブンブンと前後に揺らす。

「おかしいでしょ!?おかしいよね!!??あれだけ知識が有って美人でスタイルが良くて・・・更に料理まで完璧とか何なの!?女の敵なの?完璧超人なの!?」

「か、考え過ぎですってミメイさん!落ち着いて」

「うぐぐぐ・・・でも、お菓子作りなら・・・」

何とか妥協点を見つけ、落ち着こうとするミメイへアスティーが空気を読まず追撃を加えに行く。

「昨日のお菓子もイシスさんの手作りですよ?」

「・・・・・・・・ぐぅ・・・・」

「・・・お前容赦無いな?天然か?」

正にぐうの音も出ない状況におちいり机に突っ伏すミメイ。それを横目で見て居たレムルが同情の念を込めた目でミメイの方を見下ろす。

「まぁ元気出せよ。イシスさんは特別だ。お前だって需要有るって」

突っ伏すミメイの肩をポンと気安く叩きながら軽口を叩くルーク。KY2号である。その結果、

「アンタに同情されるのが一番ムカツクのよ!!」

スパァーーーン!!

「理不尽!!!」

張り手を喰らいもんどりうって倒れた。




27時間経過。集団暴走スタンピード到達まで残り6時間。メインベース。


食事と仮眠は隊員全員に行き渡り皆の体調は万全と言える。

すべき事は全て済み人知は尽くした、後は天命を待つと言っても過言ではない。

今から先発隊として俺とヴォルフ隊、ミルド隊が集団暴走スタンピードへと向かうのである。

「では。ヴォルフ、ウィーゴ後は任せたわ」

「ああ。お嬢、任せておけ」

「トム、ニコ、ちゃんとサポートしろよ?」

「うっせ!お前こそヘマすんじゃねーぞ?ウィーゴ」

「と、まぁ何時もの感じなんで大丈夫ッスよ」

そのやり取りを見て居た周りからクスリと笑みがこぼれた。良い感じにリラックス出来てる様だ。これならば問題は無いだろう。

「ちょっと待ってくれ、イシスさん」

「はい、何でしょう?」

不意にロギスが声を掛けてきた。

「・・・正直、貴方が居なければ手遅れになって全滅していただろう。礼を言わせてくれ」

「それは全て終わってからにしましょう。ね」

「ああ、そうだな。で、だ。改めてイシスさん、貴方に頼みたい」

「はい」

「俺達に激励を送ってくれないか?」

「そりゃ良い。是非ともお願いいたしたい。「司令官殿」?」

それにヴォルフが悪戯っ子の様な顔をしながら賛同して来た。

「・・・全く。私、そんな気の利いた事は言えないわよ?」

そう言いつつ苦笑いが漏れる。

「構わないさ。イシスさんが適任だ。皆だってそう思ってるよな?異論が有るなら言ってくれ」

その言葉に沈黙を持って賛同する隊員達。あのクラウスすら沈黙をしている。

「・・・ハァ・・・判ったわ。では皆さん、この時間まで御疲れ様でした。出来る事はやり尽しました。後は出来るだけ犠牲を抑える事を念頭に動きましょう。命は大事に・・・」

と、ここで俺はスキル[感情刺激]を発動させた。

「・・・などと思っては駄目よ?」

一気にざわつく隊員達を尻目に俺は言葉を続ける。

「これから私達がするのは『戦争』などと言う理知的なモノですら無いわ。ただただお互いの生存権を賭けた、言わば『狩り』。そこには同情や哀れみなぞの入る余地なんて無いの」

出会うであろう仲間や人の姿をした寄生者に怯んでは駄目なのだ。向こうには何の感情も無いのだから。

「狩り尽くさねば狩られる。とてもシンプルな状況よ、そこで命を大事に?犠牲を抑える?無理ね。皆の為に死ね!・・とは言わない。けれど死ぬまで戦いなさい。でなければ呑み込まれて奴等の仲間入りを果す事に成るわ」

ピンッと空気が張り詰めた。そりゃそうだろう。誰だってあんな奴等と一緒には成りたくは無い筈だ。

「・・・さて、少し長くなってしまったわね。各自作戦は練ってあると思うので、私から皆にするオーダーは2つのみ」

皆の視線が俺に集中する中、声高らかに宣言する。


「Search and Destroy.kill them all」


言い回し等を微修正

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