第三勢力、その正体と最悪な展開な訳で
色々在って時間が掛かったッス ('A`)
「・・・・う・・・クッ」
霞掛かった様な意識の中、男はゆっくり目を覚ました。
腕は後ろ手、親指同士が何かで縛られており動かす事が出来ない。
どうにか動く体全てを使いモゾモゾと動くが・・・直にその動きを止めた。
(・・・ボディーチェックも完璧か・・・まぁあの実力だ。当り前だな)
そんな事を考えながら溜め息を一つ。そして段々とクリアになる思考を元に周囲と自身の置かれた状況の観察を始める。
場所は施設内の部屋であろう事はまず間違いは無いだろう。明かりは付いているが窓は無い。
広さはまずまずと言った所だろう。と、視界の先に自分の部下達が同じ様に床に転がされていた。
息は有る様だが、動きは無い。全員意識を刈られているのだろう。
ガチャッ
音のした方を観る。ドアを開け、自分を倒した狼男・・・ヴォルフが入室して来た。
「・・・どうやら目が覚めた様だな」
「・・・お蔭様でね」
「先に言って置くが、俺達は尋問も聴取もする気は無い」
その言葉に一瞬思考が止まる。
「・・・此処までして置いて・・・それは無いんじゃないか?」
「こうでもしなけりゃ話し合いにならんだろ?」
「・・・ククク、違いないね」
余りにもの悪びれないヴォルフの言い様に思わず笑いが漏れる。
「それで?何を話すんだい?」
「・・・この『施設』の事、如何思う?」
「如何とは?」
「・・・お前さん等が来るであろう事が判った上で、何故残っていたか?と言う事だ」
それを聞いた男は少し思考し、口を開く。
「・・・確かに・・・な。緊急時の対策はしっかり立ててある筈だ。最悪爆破しても良い位だろう」
「そいつが見事に残っている訳だ」
「・・・何か有る。勘が悪い奴でも気が付きそうでは有るね」
「うちの司令官は優秀でな、この施設に潜入する際の痴話から推測をして、直に偵察をエリアの奥地・・・此方でも未開の場所へ送っていたよ」
「何か判った、と言う事か」
「ああ。証拠を隠滅する方法は様々だろ?物証を消すしかり・・・」
「・・・目撃者を消す・・・か」
「そうだ。【ブラインドエリア】(此処)は陸の孤島。情報が漏れる要因さえ潰せば・・・幾らでも操作出来るんじゃないか?」
「確かにそうだが、そんな方法が有る・・・と言う事なのか?」
それを聞いたヴォルフは、ベストからクレジットカード程度の大きさの物を取り出し操作をする。
と、脇の壁に映像が投影された。
「こいつを見てくれ」
其処に映っていた映像を見た男は・・・その映し出された状況に衝撃を受ける。
「・・・何だ・・・これは・・・」
其処に映っていたのは鬱蒼とした森を掻き分けるかの様に大地を埋め尽くす・・・魔獣やモンスターの集団。
その数は数えるのすら億劫になる程だろう。優に1~2000は超えているのが傍目でも判った。
「集団暴走だ。それも作為的に起こされた・・・な」
腕組みをし冷静に語るヴォルフを他所に、男の方は唖然としていた。が、ヴォルフの言葉を聞くと意思を取り戻し、ヴォルフへ疑問を投げ掛ける。
「集団暴走を作為的だって?そんな事が可能なのか!?」
「可能だ。コイツを使えば・・・な」
そう言いながらヴォルフは傍らの机に置いて置いた瓶を、男の視界に入る様に置く。その中に入っているのは勿論件の『レギオン・シード』だ。
「コレは?」
「『レギオン・シード』と俺達は呼んでいる。こいつに寄生されると、意思を奪われ傀儡と化す」
「・・・正直、生唾モノなんだが?そもそも、そんな物が有ったなら我々が気が付かない訳は・・・」
「コイツは其処に転がってるお前さんの部下の1人から摘出した物だ。・・・・言いたい事、判るよな?」
それを聞いた男は一瞬驚愕をし、直に理解する。自分達がコントロールをされ『レギオン・シード(ソレ)』に遭遇出来なかった事を。
「・・・ソレを摘出した部下は・・・どうなったんだ?」
「・・・死んだよ。例え生きていたとしても、脳をやられて廃人だ」
ヴォルフが下を向きながら済まなそうに言葉を噤む。
「そうか・・・待て!そうなると他に残してきた部下は!?」
それを聞いたヴォルフは男に近寄り、男達から取り上げていた通信機を取り出す。
「チャンネルは?」
「・・・%36&9*0+#」
男が素直に吐く。今更隠した所で如何にも成らないし、何より部下の安否の方が優先だからだろう。
ヴォルフが操作をし、チャンネルを合わせると男の頭の脇に置いた。
「A班!応答しろ!此方Z班!」
しかしその呼びかけに答える者は無く、無常に「ザー」と言う音だけが響く。
「・・・クソ!!!」
その後も他班へ連絡を試みるが・・・応答が帰って来る事は無かった。
「現状、ウチの部隊の生き残りは7人だけだ・・・・」
心なしか男の声のトーンが低い。流石にショックったのだろう。
「・・・お前さんが生き残ったのが不幸中の幸いだ。隊長なら、まだする事が有るだろ?」
「・・・・勿論だ。部下の犠牲を無駄には出来ない!」
先程とは違い、男は力強く返す。それを聞いたヴォルフがニヤリと口元を上げた。
「なら提案だ、俺達と組め。此方が握った情報もやる」
「何!?」
その言葉を聞き、男がヴォルフを見据える。それを見返しつつ、ヴォルフが言葉を続けた。
「まぁ、信用ならないのは判る。だが、今は如何こう言ってる場合ではない事も理解してるだろ?」
「・・・裏が有るんじゃないのか?」
「裏、と言う程のモンじゃないさ。俺達が欲しいのは活動拠点でね、実質【ブラインドエリア】(此方)が一番良いのさ」
「亜人領にも森は有るが?」
「あそこは好かん。鬱陶しいにも程が有る」
「・・・確かに」
お互いにクックックと笑う。裏方同士、似たような経験が有るのだろう。
「だが、俺にソレを如何こうする事が出来ると?」
尤もな意見を男が言う。が、ヴォルフにしてみれば相手の所属はある程度当たりが付いていた。
「少なくとも上司に繋ぎを入れる事は出来るだろ?『エミル・グラルラーゴ』直属さん?」
「な!?」
ヴォルフの予想はドンピシャだった様だ。男は揺さぶりに動揺し思わず声を挙げ、直に「しまった!」とばかりにそっぽを向く。
それを見たヴォルフが苦笑いをする。
「武器や装備に痕跡を残さない様気を付けるのも良い。が、暗器はもう少し慎重に選ぶべきだ」
そう言いつつ懐から男達が持っていた手首に装着し、針を打ち出す暗器を取り出すヴォルフ。
「お前さん所の暗器は少々独特な機構をしているからな。出先で使うならもう少しシンプルにするべきだな」
その暗器を弄び、針を出し入れしつつ話すヴォルフに対し、男は畏怖を覚えた。少々と言うが、それは本当に些細な物だったからだ。
「其処まで判るのか・・・君等は一体」
「魔王軍から逃げ出した唯のはぐれさ」
「はぐれ・・・か。名前を聞いて良いかい?」
「ヴォルフ・ガルヴァード」
「!!??ヴォルフ・ガルヴァード!!!」
ヴォルフの名前を聞いた男が叫び、ヴォルフが目を丸くした。
「何だ?そのリアクションは?」
「・・・・ハハハ・・・そうか・・・まさか、『ブラッディ・ファング』が相手だったとはね・・・色々納得だよ」
ガタッ!!
それを聞いたヴォルフはコケた。
「ん?どうしたんだい?」
「『ブ・・・・ブラッディ・・・・ファング?』」
「有名だよ、各所で表に裏にと活躍する貴方はね。その戦い方を見た物達が付けた2つ名さ」
「・・・か、勘弁してくれ・・・」
あまりにもの自分への痛そうな2つ名を知ってしまい、目を手で被い項垂れるヴォルフ。
「・・・ハァ、まぁとりあえず名の件は置いて置こう。それで?共闘の件はどうする?」
(精神的に)痛む頭を2、3度振り、きを取り直すと、男へと向き直す。
「選択の余地など無いさ。このまま全滅するよりはマシだろう」
「決まりだな。お前さんの名前は?・・・あぁ、『今名乗ってる名前』で良い」
「ミルド・・・と名乗っているよ」




