アスティー、エリアの実情を知る訳で [another] その2
「・・・そんな!だって!」
「残念だけれど事実よ」
動揺が隠せないアスティーに対し俺は極めて冷静に語る。
「だって!その、遺体とか残って・・・」
「遺体や証拠などを回収する部隊が存在している様だが?」
「何!そんな部隊なぞ・・・いや・・・まさか!?」
「・・・隊長・・・え?いや、でも・・まさか。そんな」
ヴォルフの話を聞き、何か思い当たった様でロギスとアスティーが徐々に青ざめて行く。
「・・・・・・【攻撃隊】・・・ですね」
「あぁ。ヴォルフ殿、その連中の装備はどんな物でしたか?」
「・・・上等な物を使っていたな」
「やはりな」
次々と発覚する事実に、2人の根底は崩れ始める。
「全て・・・全て最初から仕組まれて居たんですか!?」
「それは此方では判断し兼ねるな。だが少なくとも上手く回っている集落も存在はしている」
「その集落の場所を教えて貰えるか?」
「此処と、此処と、此処・・・」
壁にもたれ掛かり答えていたウィーゴが黒板へ移動し場所を指し示す。
「・・・どれも初期の【コロニー】ばかりだ」
「と言う事は・・・何処かのタイミングで転換した・・って事ですか?」
「だろうな。・・・考えるに、此方の要望が通らなくなった5、6年前からだろう」
「今ならミルドさんが言っていた資金の理由が判りそうですね・・・」
『前から不思議に思ってたんですよ。あれだけの規模で資金を集めてるのにも関わらず、何で送り込まれるのが農民や冒険者ばかりなのかが』
ミルドのセリフを思い返し静かに頷くロギスとアスティー。
「しかし、まだ疑問が残っている。此処に来た人々の帰還は如何なる?この事実に気が付く者も居た筈だ」
「それを処理するのもその【攻撃隊】なんじゃないッスか?」
「だが、実際帰りの飛空挺に乗り込む人々は居る」
「・・・そもそもその飛空挺、『本当に帰ってる』んスかね?」
「おい・・・もう勘弁してくれ」
堪らずロギスが弱音を吐く。
ニコの疑問は尤もなのだ。実際【ブラインドエリア(此方)】から帰還した人々を知る事は出来ない。
そしてそれを聞いたアスティーは有る事を思い出す。
「・・・そう言えば、此処から帰る人達の目・・・・」
記憶に残るその目は、つい数時間前【キメラ】に喰われたあの女性の目とソックリで有った。
「あの時は気が付きませんでしたけど・・・帰還する人達は皆寄生された後なんじゃ・・・」
「成る程、その可能性は在るわね」
「それに・・・私、此方に来る時、帰還して来た人達の事を見てないんです」
「・・・・・だとすれば粗黒と見て間違いは無いわ。何処か別の場所で寄生者を降ろしている様ね」
此方側へ来る時の事も思い出たアスティーが語り、俺が返す。
「・・・全ては5、6年前からか・・・いや、待て。じゃぁアスティーは何故此処に来たんだ?」
「ぁん?如何言うこった?」
「アスティーは【6方星円卓】と言う強力な連合の4席目を担っている【ホワイトオウル家】の子女だ。
そんな有力な地位の者がこんな実験場に送り込まれるのか?」
「ふ~ん。俺等は、んな背景知らねぇからなぁ・・」
「まぁ、何だ。アスティーは別の領主の息子に少し粗相をしてな、その落とし前として此処に来たんだ」
「へぇ。見かけによらず意外とヤルな嬢ちゃん」
ロギスと話していたトムがアスティーの方を向く。
「あはは・・・でも譲歩と言う事で此処に来たんですよね・・・」
「譲歩・・・ねぇ。帰還困難区域に出張たぁ中々の譲歩じゃね~か」
「それは・・・」
「おい!トム!」
「あ、悪ぃ!つい何時もの調子で・・・本当に悪かった。スマン!」
「・・・スマンな。コイツは少し口が悪いが悪気が有った訳では無いんだ。それだけは解ってやってくれ」
トムがやらかし、それをフォローするウィーゴ。何だかんだでやはり仲が良いコンビである。
「だがその譲歩・・・本当に譲歩と言えるのか疑問だ」
「はい・・・真実を知った今、これが譲歩だとは・・・ミリア姉様はこの事を知って・・・?」
「・・・そのミリア姉様は知らなかったのだろうな。そもそも『レギオン・シード』の存在や実験等は極秘扱いの筈だ。
何処までの存在が関わっているかは判らんが、少なくともアスティー(君)の領には情報が来ては居ないと思われる」
「・・そうでしょうか・・・」
「誰が好き好んでこんな危険地帯に肉親を送り出す?少なくとも仲は悪く無かったのだろう?」
「そう・・・思います」
「ならば信じるべきだ。君の繋がりをな」
「・・・有難う御座います」
ウィーゴの言葉は少し弱ったアスティーの心に染み込み、癒して行く。
「と、なりゃ~一番怪しいのはその譲歩をした奴らだろうな」
「【デュアレスクロウ家】ですか」
「そのナンたらクロウ家の奴等の意趣返しなんじゃね~のか?」
「成る程な。譲歩を謳った復讐か、全く、何処の大陸にもこう言った不愉快な輩は居るな」
アスティーの置かれた状況は、十中八九【デュアレスクロウ家】の仕業であろう事をトムとウィーゴが推測し、
そのやり方に不快感を顕わにする。
「さて、大体の事は判明したな。で、だ。これから如何する心算だ?」
ヴォルフがロギスに問う。ロギスは間も置かず、
「決まっている。俺達の任務は住民を守る事以外に無いさ。例え相手が何で有ろうとだ!」
力強くそう言い放った。
「そうか・・・ならば此方とて手を貸すのは吝かではない。そうだろう?お嬢」
「そうね。私達も此処を拠点にする以上、降り懸かるであろう火の粉は払うべきね。それにアスティーさんの事もしっかり帰還させなきゃ・・・ね」
そう言ってアスティーの方を向きウィンクを送る。
「決まりですな」
「へっ!面白くなってきやがった!!」
「あまりはしゃぎ過ぎるなよ?トム」
「アスティーさん。大船に乗った心算で良いッスよ!私等こう見えて中々出来る連中ッス」
「皆さん・・・有難う。本当に有難う御座います」
アスティーの目から涙が零れる。
「しかし・・・俺の聞き及んでいる魔族と貴方達は全く違うな・・・」
「まぁ、そうだろうな。俺達は逃亡者だ、それにそもそもこの部隊がはぐれや爪弾き者の集まりだ。人種なんざ気にも留めん」
「・・・そう言う者も居るのだな。魔族の中にも」
「ウチの司令官がそうだからな」
「そう言えば・・・まだその司令官殿に挨拶をして居ないな。紹介をしてはくれないだろうか?」
「・・・フッ・・・クックック・・・」「プッ・・・ククク」「フッ・・・」
ロギスの一言にヴォルフやその周りから笑いがこみ上がる。
「な、如何したんだ?」
「いや、スマン。司令官か、もう会って居るよ」
「え?」「は?」
アスティーとロギスから同時に疑問詞が出た。
まぁ無理も無いだろう、何せその司令官はメイド服を着て傍でお茶を飲んで居るのだから。
「ウチの司令官。イシス・ヒメカミだ」
「「・・・・!?」」
ヴォルフの紹介を聞き2人が俺を凝視したので、
「あら、御免なさいね。メイド服を着た司令官で」
満面の笑みで少し皮肉を込めてみた。
「あ、いや!気を悪くしたなら謝る。スマン」
「ご、御免なさい!てっきり・・・その」
「あぁ、此方こそ御免なさい。別に気を悪くした訳じゃないのよ。ただ、少し意地悪をしたくなっただけ」
そう言って俺はもう一度ウィンクをする。
「・・・良い性格してるだろ?ウチの司令官は?」
苦笑いをしつつヴォルフがロギスに振り、
「フッ・・・全くだ」
ロギスは肩を竦め同意をした。
今正に、人族と魔族の混合部隊が発足したのである。




