アスティー、エリアの実情を知る訳で [another] その1
各々が食事を終え療養室へと集まる。集まったのは何時ものメンバー、ヴォルフ、ガルム、トム、ニコ、ウィーゴ。
移動式の黒板に各小隊が集めた情報を書き込み、掲示して行く。
椅子に座り、それを静かに見守るのはアスティーとロギス。
「皆揃ったみたいね。では始めましょうか」
そこへ俺がトレイにティーポットと人数分のカップを乗せ入室した。
テーブルへカップを置きそこへハーブティーを注ぐ。
「どうぞ。熱いから気を付けてね」
「あ、有難う御座います」
アスティーとロギスの前にカップを置く、ハーブティーは良い香りを漂わせ、皆の心を落ち着かせる。
「・・・これもイケるな」
一飲みしたロギスは少し驚いた顔をしたが、直に笑みを浮かべ再度口を付けた。
「鎮痛作用の有る物を選んだ置いたの。アスティーも飲んで置いて」
「あ、ハイ。頂きます」
一口飲むと、ふわりと香る優しい香りが鼻腔を抜け、痛みを忘れられそうな気分になる。
「・・・美味しいです」
「良かった。では報告お願い」
アスティーの近くに有った椅子へ腰掛け俺が開始の号令を掛けた。
その号令を受け、ガルムが立ち上がり黒板の前に移動する。
「では始めます。先ずは各隊の報告からです。このベースを中心とした探索進捗状況は現在35%程」
「35%だと!?」
ロギスが驚きの声を上げ、それにトムが答えて行く。
「あぁ。35%程度だが?」
「どれ程の年月を掛けたのだ?」
「1ヶ月と少し」
「・・・・は?」
「いや、だから1ヶ月とちょっとだよ」
唖然とするロギスと「そんなに驚く事か?」みたいな顔をするトム。
何十年と掛けても、未だに全容が把握出来ない【ブラインドエリア】をたった1ヶ月少しで3割探索し終えたのだ。無理も無い事である。
「ま~戦闘極力避けてるし、夜間活動も得意な人多いッスからね」
一応ニコがフォローを入れるが、あんまりフォローになっていない。
「そして、【キメラ】分布図ですが・・・確実に広がっていますね」
「あの!【キメラ】って何ですか?」
アスティーが聞き慣れない単語に対し質問をする。
「君等が遭遇した魔物の総称だ。【合成獣】とも言うらしい。お嬢が古い文献から見つけたんだ」
「へぇ・・・」「ほう」
ヴォルフの説明を聞き神妙な顔をするアスティーとロギス、そして俺。
・・・えぇ嘘です。地球文明のパクリです。方便だよね方便。
「【キメラ】・・・あれって・・・何なんですか?」
「それを説明するに当たって、先ずはコレを見て欲しいの」
俺はそう言いながら種状の物を取り出し、アスティーとロギスの前に在る机の上に置いた。
「・・・コレは?」
「【キメラ】の種・・・と言った所かしら」
「「!?」」
それを聞いた二人が目を見開き凝視する。すると種の中央が割れ、目がギョロリと姿を現した。
「ヒッ!?・・・びっくりした~何なんですかコレ・・・」
「簡単に言えば菌類型寄生生物・・・これが体内に入ると菌糸を体中に張り巡らせ宿主を乗っ取るのよ」
「何気に怖い事を言うな・・・しかし、【キメラ】とこれに何の因果関係が?」
「菌糸が強力なの。宿主を乗っ取った1時間以内は特に強力な菌糸を発生させて、『他の生物の死骸』まで取り込んだりするわ」
「・・・その結果が【キメラ】って訳か」
「えぇそうよ」
「・・・あの、じゃぁ私達が追っていた女性の方は?何だか私達を誘導してたみたいだったんですけど?」
「女性?」
「あぁ、【キメラ】と遭遇する前に行方不明の女性を追っていたんだ」
「・・・そう。其処まで来ていたの・・・」
「イシスさん?」
どうやら俺は難しい顔をしていた様で、アスティーに心配されてしまった。
「・・・その女性、間違い無く寄生されていた筈よ」
「何だと!?」
「この種、もう一つ特徴が在るのよ。それは『情報や思考の統一化』。寄生された生物は1つの意思を共有し、1つの意思で行動をする・・・」
「・・・何だそれは・・・」
「つまりその女性も【キメラ】も同じ事を考え、それを実行する為に行動をした・・・と言う事よ」
「私達を誘き寄せ、喰らう為?」
「そう。『情報や思考の統一化』個であり複数でも在る。なので私達は種を『レギオン・シード』と呼んでいるわ」
「『レギオン・シード』・・・こんな物が【ブラインドエリア】に有ったなんて・・・」
「だが、どうやって女性に寄生したんだ?流石にこの形状のままでは飲み込めんし・・・」
「ガルム」
「はい。御二方、コレを」
ガルムが白い粉の入ったビーカーを2つ取り出す。
「それは?」
「『レギオン・シード』を粉末状にした物でしてな、今の状態だと寄生はしない・・・だが」
ガルムが左のビーカーから粉を右のビーカーへ全部移す。と、直に変化が始まる。
ビーカー内で菌糸が凄まじい速度で伸び、『レギオン・シード』の形へと変わって行く。
「この様に、一定量以上になると『レギオン・シード』本来の姿に形成されるのです」
「・・・つまり、形を変え摂取させ続ければ・・・」
ロギスの顔がどんどん曇る。
「しかもこの粉末を摂取すると、一時的では有りますが、身体能力強化や体調改善の効果が得られるのです」
「益々性質が悪い!」
「ですね・・・この粉末が円満する土台が【ブラインドエリア】には既に出来上がってます」
アスティーは思い出す。トイレも無く、疫病や感染症が蔓延するのも時間の問題なコロニーが多数有る事を。
そしてふと疑問が湧き出た。本当に些細な疑問が・・・しかしそれはイシス達により重大な気付きへと変わる。
「・・・・・まるでそうなる様にしてるみたい」
何気ない一言の心算だった。しかし、
「そうね。その通りよ。この状況は意図的に作り出されているわ」
「「っ!?」」
俺の確信にも似た言い回しにロギスとアスティーは動揺の色を隠せない。
「如何言う・・・事だ・・?」
「この【ブラインドエリア】だったかしら、には各大陸に生息する生き物や魔物が集まっているのよ」
そう言いつつ俺は黒板を指す。ここ1ヶ月の探索と共に生態系の調査もさせていた訳だ。
「おかしいわよね?人族領の、しかもこんな閉鎖された場所に、全ての大陸の生物が集まる」
「・・・人為的に・・・って事ですか?」
「それしか無いわね」
「何の為だ!!何の為にそんな事をする!!?」
「勿論実験でしょうね。『レギオン・シード』やその他の」
「だったら・・・ここに来る人達は・・・村人や冒険者達は何なんですか!?」
ロギスに続き、アスティーも徐々に声が荒がって来る。
「戦闘データを取る為・・・そして」
余り言いたくは無いが・・・真実で有ろう事を俺は言い放つ。
「『【キメラ】の餌』よ」




