~邂逅~そして出会う訳で その2
アスティーはまどろみの中に居た。
(・・・フカフカのベットなんて久々だなぁ・・・)
「♪~~~♪~♪~~~」
(綺麗な歌声・・・あれ?そう言えば私、なにしてたんだっけ?・・・こんなベット・・・在ったかな?)
瞼が重い。体も重い。思考も未だに定まらない。
「♪~~~~♪~~♪~~」
ただ別の場所から聞えて来る歌声だけに耳を傾け続ける。
(あ、そうか。確か行方不明の女の子捜して・・・そして・・・)
其処まで思い出すと突然フラッシュバックが起き、一連の出来事が一気に頭の中を駆け巡った。
「隊ちょ!?っ~~~~~~~~~」
行き成り起き上がろうとして激痛が走り、ベットに倒れこむ。
目に映る天井は宿舎の物とは違い、寝かされていたベットからは干し草の香りがほのかに漂う。
「・・・っ、痛たたた」
今度は出来るだけゆっくりと体を起こして行く。折れた左手には添え木が固定され、胴回りにはコルセットが巻かれている。
体にはローブが掛けられており、動くのには邪魔にならない。ベットの下にはサンダルがあり、床にはしっかりと床板が敷き詰められていた。
(立派な部屋だなぁ。ベースより立派かも)
サンダルを履きつつ隣を見るとロギスが体中に包帯を巻かれ寝かされていた。
ロギスの存命を確認出来、胸を撫で下ろすとゆっくりと窓の方へ歩き外を望む。
窓の外には草原が広がり、簡易の物干しにシーツが大量に干されている。
「♪~♪~~~♪~」
先程から聴こえている歌声の方に目を向けると、メイド服を着たブロンズ色の長髪の女性がシーツを干していた。
「【ブラインドエリア】の中にこんな所が在ったんだ・・・」
「あら?起きて来たの?」
独り言を呟いたつもりだったが、以外に大きく声が出ていた様でメイド服を着た女性がアスティーの方を向く。
「あ、あの・・・え~っと」
その姿を見たアスティーが言葉を詰まらせた。
(うわ・・・滅茶苦茶綺麗な人。ミリア姉様も綺麗だけど、それに輪を掛けて綺麗だ・・・)
思わず見惚れているとその女性はクスリと微笑み掛け、其れを見たアスティーは顔が熱くなるのを感じ堪らず目を逸らす。
「あ、その・・・ここは何処なんですか?」
「私達のベースキャンプ・・・と言った所かしら」
シーツを干し終え、空の籠を持った女性がアスティーの方へ歩く。
「元は鬱蒼とした森林だったんだけれどね、開拓したの」
「開拓・・・」
アスティーは周りを見渡す。畑が在り、しっかりとしたテント群が在り、井戸まで在った。
「あれは?」
森との境目に目をやると杭と共に有る線のような物が目に付く。それはコイル状の束になっており周囲を囲んでいる。
「鉄条網ね。あれが有れば容易く進入が出来ないわ」
「てつじょうもう・・・」
初めて聞く言葉にキョトンとするアスティー。
(そりゃそうだろうなぁ。この世界ではソコまでの加工技術が無いもんなぁ)
その様子を見た女性がそんな事を考えていると、
グゥ~~~
不意に音が鳴った。所謂『お腹の鳴る音』だ。その音を鳴らしたアスティーが顔を真っ赤にし下を向く。
「ふふ。食事を用意するわね」
籠を持った女性はそう言いつつ建物の中へ向かうのだった。
食事が運ばれて来るとロギスも丁度目が覚た様で、不自由な体をゆっくりと起き上がらせた。
「ハイ、どうぞ」
俺は食事の乗ったトレイを2人のベットに備え付けられた机の上に置き、部屋に在る椅子に腰掛けた。
「粟とライ麦のパンに、シチュー。それと果物ね」
「ふぉぉぉぉ・・・」
それを見たアスティーが思わず目を輝かせ歓喜の声を上げる。果物に関すれば、ここに来てからドライフルーツしか口にしていないので尚更だ。
「・・・食えるのか?」
ロギスが躊躇する。確かに魔族と人族の食文化の違いは有る・・・が、そこまで脱線はしていない筈だ。元人間が言うんだから間違いは無い。
「ここで取れた物しか使って無いわ」
「うむ・・・正直に言えば、支給されたレーションしか食べてないのでな。ここでこんな豪勢な物が出来るとは思って居なかったよ」
「あ、スゴ!うま!これ凄い美味しいです!!」
その会話を尻目にアスティーはガッガッと頬張っていた。
「オイオイ」
ロギスが苦笑いをしつつシチューを口に運び
「旨い!」
アスティーと同じ様にガッガッと頬張り始める。
「お嬢~戻ったぞ~」
療養室の中に探索を終えた小隊が顔を覗かせた。その顔は熊や昆虫など様々で一目で魔族だと判る。
「お帰りなさい。食事は食堂に用意してあるわ」
「了解」「あ~腹減ったわ」「相変わらず良い香りしてんな~お嬢の料理は」
思い思いの話をしつつ声は遠ざかって行った。
「・・・本当に魔族なんだな」
それを見たロギスが呟く。
「・・・あの、貴方も・・・魔族なんですよね?」
アスティーがメイド服を着た女性、俺に尋ねて来た。
「えぇ。魔族よ」
「全然見えません。耳は・・・エルフに似てますし」
「ほら、これ」
俺は耳の上に生える小さい角を髪を掻き分け顕わにする。
「・・・本当に魔族なんだ・・・」
「変でしょ?魔族の癖にこんな姿なんて」
「いえいえいえいえ!!!その、何て言うか!あんまり綺麗だったんで、その」
「あら。有難う。お世辞でも嬉しいわ」
「あの!お世辞じゃなくて!!じゃなくて!その、あの、あぁもう!」
その様子が余りにも可愛いく、俺は思わずクスリと笑ってしまう。
「・・・全く、仕方の無い奴だな。それでお嬢さん、名前を聞いても良いかな」
その様子に呆れつつロギスが名前を聞いて来た。
「あら、そうね。御免なさい。私、『イシス・ヒメカミ』と申します。以後良しなに」
「イシスさんか。俺はロギス。『ロギス・マクベス』と言う。宜しく。そしてこっちが・・・」
「『アリアスティリア・ホワイトオウル』。アスティーです。宜しくお願いします、イシスさん」
「宜しくね。お2人とも」
『イシス・ヒメカミ』・・・俺はそう名乗る事にした。結構頭を捻り、たどり着いた名前だ。
ヴォルフ達にも意見を聞いたのだが・・・
「お嬢はお嬢だろ」
だの
「ピポポクリアスアイガル・・・」
だの
「☆#%=*・・・(発音不明)」
だのと、マトモな名前が出て来なかった。ハハハ・・・はぁ。
由来は俺の前世『六神 明人』の苗字から来ている。
日本の神道における、「家宅六神」の一柱である『石巣比売神』の名を使わせて貰ったって訳だ。
ただ、そのままだと少し語呂が悪かったから『石巣』を『石巣』に言い換えた。
無論『イシス』もエジプト神話の女神の名前なのは周知だろう。
最早神の過剰積載状態だが、我ながら良い感じに纏まったと思う。
「それで、イシスさん。この後の事なのだが・・・」
「取り合えず、それは食事の後にしませんか?此方もあなた方に話すべき事が有りますので」
「・・・そうですな。この旨い食事が冷めてしまうのは確かに勿体無い」
「気に入って貰えたなら何よりね」
家事関係は元々得意だったし、スキルを入手するのも楽だった。
・・・あぁそうさ、掃除も洗濯も料理も得意だよ!独身長かったからだよ。良いじゃん今役に立ってんだから!・・・心で泣いてね~し。
「お嬢、今戻った」
食事が終わる頃にヴォルフ達も帰って来たらしく、療養室に顔を見せた。
「お帰りなさい。食事をして来て。それが終わったら療養室でミーティングよ。トム達も呼んでおいて」
「了解した」
ヴォルフが食堂に向かうのを確認し、俺は椅子から立ち上がる。
「さてと。長くなりそうなのでお茶の用意をしておこうかしら」




