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7歳、魔王に三行半を叩き付ける訳で その9

飛空挺倉庫への移動は比較的楽に出来ていた。ガーディアンが未だに暴走していたからである。

例え『魔導防衛集中管理室』からの魔力供給を切ったとしても、内蔵魔石の魔力が切れるまでは動き続けるだろう。

そんな事を考えながら歩いていると、不意にヴォルフが語り掛けて来た。

「なぁお嬢?」

「ん?何かしら?」

「・・・さっきラグルードの事、『お父様』って言ってなかったか?」

・・・あれ?そう言や俺、言ってなかったな。

「あぁ。そうよ、ラグルードは私の『一応お父様』ね」

ソレを聞いたヴォルフが目に手を当て天を仰いだ。

「・・・ったく、良く考えりゃ気付くだろ!俺!施設内をあんな自由に動き回れる存在だったんだぞ」

「ふふふ、以外に気が付かないモノなのね」

「ハァ~・・・お嬢にゃ今日1日でどんだけ驚かされた事か・・・」

「あらヴォルフ、まだ1日は終わっていませんよ?」

「・・・止めてくれ。そろそろ頭ん中の許容量が限界だわ」

と、廊下の向こうから近付いてくる影が3つ。

「隊長~ヴォルフ隊長~」

「この声は・・・ニコか!」

「無事で何よりッス」

「おぅ、隊長!塀ん中の飯は不味かったか?」

「フッ、相変わらずだなトム。あぁ不味かった」

「デリカシーの無い奴だなお前は・・・隊長、無事で何より」

「そう言うなウィーゴ。トムはあれで気遣ってるのさ」

「・・・で、隊長。この子誰ッスか?めっちゃ魔力キツイんスけど・・・」

平静を保っているフリをしていたニコが声を震わせる。

まぁ先程から尻尾がえらい事になっていてバレバレだったのだが。

「おい!オメェ・・・その角、ラグルードの奴に似てんじゃね~のか?」

俺にガンを垂れるトム。

「・・・おい、お前ら・・・本当に気が付かんのか?」

そう言って溜め息を吐くウィーゴ。流石ウィーゴ、気が付いたか・・・

ってか外見変わってね~し!角立派になって髪の色変わっただけだろ!!

「あら酷い。あれだけお嬢お嬢と言ってくれていたのに」

「あ・・・え?・・・マジッスか?」

「イヤイヤイヤお嬢はもっと・・・こう、なんてか・・・」

「・・・・さっさと謝れお前ら」

「すま~ん!!」「ゴメンナサイッス」

「良いのよ。・・・でもそんなに変わったかしら?」

「あ~・・・ウン、なんて言うか・・・魔力の質が凄いッス」

「ふむ、俺には良く判らんが?」

「俺も良く判らないのだが?」

とヴォルフ&ウィーゴ。

「物凄く凝縮されていて・・・なんて言うか・・・そう、深海!深海みたいに重圧で深い感じッス」

「あ~そうだなぁ。確かに最初見たときゃなんか、こう、重苦しく暗い感じだったわ」

「トム、お前に分かるのか?」

「あぁん!?お前なんざ分かりもしなかっただろ?ウィーゴ!?」

そのやり取りを見て居たヴォルフの目に光るモノが滲む。

「少ししか離れてなかったのに・・・何だか懐かしい感じだな・・・ありがとな皆」

「・・・止めて下さい隊長!俺達は隊長のお蔭でこうして居られるんですから」

「そうッス!行き場の無い私達を迎え入れてくれてメッチャ感謝してるんスよ」

「あぁ、その点じゃ癪だがウィーゴと同意見だわな」

「慕われて居るのねヴォルフ。少し妬けてしまうわ」

「・・・勘弁してくれ。最近ちと涙脆いんだ」




そこからは5人で飛空挺倉庫へ向かって行く

「そう言えばお嬢?」

「何かしら?」

「アレは一体何をしたんだ?」

「アレ・・・と言うと?」

「ガーディアンや魔導防衛装置を無効化したアレだよ」

「あーー!!ソレ!私も魔法を使う者として聞きたいッス!!!」

ウィーゴが知識欲を満たそうとし、其処にニコが喰い付いた。

「『スペルハック』の事かしら?」

「『スペルハック』って言うんスか」

「で、その『スペルハック』とは一体なんなのだ?」

「あれは・・・ん~、まぁ簡単に言えば『スペルの中身を書き換える』魔法かしら」

「・・・意味分かんないッス」

あれ?以外にもニコの方が難色を示してる?

「解らないの?」

「解らないッス!スペルはスペルッス。そのスペルの中身を書き換えるって何スか?」

「文字通りの意味よ?スペルのルーン部分に干渉した後、組み換えて強制的に別魔法にしたり先程の様に指揮を奪ったりするの」

「・・・・その発想は無かったッス!!!ルーンに干渉なんて出来るんスか!?」

驚くニコ。

「出来るわね。でなければ皆、今此処には居ないわ」

クスリと笑う俺。

「信じられないッス・・・」

その様子を見て呆然とするニコ。

「どう言う事だ?ニコ?」

「スペルって言うのはルーンの塊ッス。スペル1文字に数万単位から数百万単位のルーンが在るって言われてるッス」

「ふむ」

「私達は十数字のスペルを通して魔法を使ってるんスけど、実際は天文学的なルーンの組み合わせで魔法は発動してるんス」

「・・・まさか」

ウィーゴが気付き青ざめる。

「気付いたッスか。お嬢はそのルーンに干渉した上で、天文学的なルーンを組み替えスペルを弄る事無く別の魔法にしてるんス」

「無理だ!」

「そうッス!普通は干渉する事すら無理ッス。何か特別なスキルでもなければ絶対無理ッス」

そう。俺には『ハッキング』のスキルが在る。

魔法の基礎理論を記録した時に「スペルとルーンってプログラミング言語みたいじゃね?」と、思い付き「だったらハッキングとか出来るんじゃね?」と言う所に到った訳だ。

勿論俺自身にそんな能力も技術も無い。ただ在るのはそう言う情報の記憶のみ。

問題はそれでスキルとして『ハッキング』を覚えられるか如何かだったが、以前『軍隊格闘』を覚えた時に、前世の記憶だけでも関連付けられれば覚えられる事が解っていた。

そしてスキル『ハッキング』は完成したのだ。サーチ万歳。スキルセレクト万歳だ。

「其処の所は、ひ・み・つ」

「・・・やっぱお嬢はおかしいッス」

「あぁ、全く持って同感だ」

目の前の存在が凄過ぎて呆れ果てる二人で有った。




飛空挺倉庫へ到着するとガルムを含めた全員が揃っていた。今此処にヴォルフ隊が全員揃ったのだ。

「隊長!ご無事で何よりです!」「隊長・・・俺・・・俺ぁ・・・」「泣くんじゃね~よ・・・んなことされたら・・・うぅっ」

「ヴォルフ隊長・・・」

何とも言えない目をして佇むガルム。

「ガルム・・・心配を掛けた」

「いえ、隊長が無事ならこの程度の心労、何と言う事は無いさ」

そのまま暫し無言で佇む2人・・・きっと言葉に出来ない程の思いが巡っているのであろう。

だが相手は待ってはくれない。そろそろラグルードの兵士達が統制を取り戻し此方へ来る頃だ。

「さぁ皆!そろそろ出発しなければいけないわ!」

拍手を打ち俺が発破をかける。

「あぁ!そうだな。こんなクソッたれな場所からさっさと出るか!!」

そうヴォルフが力強く声を響かせると、

「っしゃ~行くぜ!」「何処までだって付いて行きますよ!」「俺らの隊長はアンタだけさ!」

隊員達の士気が一気に上がった。

(やっぱ良いなぁこう言うの・・・見てるだけで力が湧いてくるってのが解るわ)

「な~にニヤニヤしてるんだよお嬢?」

「ふぇ!?」

「なんか良い事あったんか?」

「ん、そうね。こう言うのって良いな~って」

「だなぁ。俺も此処に入るまでは・・・なぁ」

トムにも色々在ったのだろう。少し思いを馳せている様だった。

「さぁ~て、サボるとウィーゴの奴にどやされっからやるかぁ」

「そうね。私も手伝うわ」

そこからの準備はとても早かった。

飛空挺の制御の大半は魔導制御だったので『スペルハック』で制御出来る様に書き換える。

飛空挺の操縦はトムが出来た。こう見えてトムは魔導器機操作のスペシャリストだったりするのだ。

「意外だろ?」

「「「「まったくだ!」」」」

全員に突っ込まれる。

その後ヴォルフが倉庫の天井を開く操作をし、飛空挺に乗り込む。

飛空挺はゆっくりと浮き上がり、倉庫から飛空挺全体が出る。

その後然したる抵抗も無く飛空挺はあっさりと上空へと飛び立つ。




一同が安堵し、それぞれの持ち場へ移動する。

だがその中で1人、複雑な顔をする者が居た。ガルムである。

(おかしい・・・こうもあっさりと・・・事が順調に運び過ぎて居る)

ガルムの多大な経験上、こう言った場合2通りの展開になる可能性が高かった。

1つはこのまますんなりと脱出出来るパターン。

(このパターンは稀だ。余程相手が無能でも無い限りはな)

そして後1つ・・・

(・・・誘い込まれて居る可能性が高い)

ガルムは悔やむ、出来るだけシミュレートはした心算つもりだった。

だが今思えば何処かに焦りと浮つきが在ったと思う。しかし、だとしても止められただろうか?この作戦を。

放って置けばヴォルフは間違い無く処刑されていたいだろう。

(・・・ならばいっそ戦場で散れれば)

「ガルム?」

「ハッ!?」

お嬢に声を掛けられ我に返る。

「随分と思い詰めた顔をしているのね」

思えば、お嬢の存在が決め手だった。何とも不思議な雰囲気を醸し出し、何でも上手く行きそうな気にさせてしまう。

「・・・お嬢、この状況・・・如何思う?」

率直に疑問を呈す。お嬢の目には既に見透かされていると思ったからだ。

「そうね。余程お父様が無能でも無い限り、罠だと思うわ」

「やはりそう思いますか」

「まるで死地へ向かう様な顔してますよ?ガルム」

「・・・其処まで」

お嬢はニコリと微笑み、

「ガルムのシミュレートには1つ大きな間違いが有ったと思うわ」

ギクリとした。其処まで見られていた事に。

「私が本当の姿を見せて居なかったから仕方が無いんですけどね」

そういって申し訳無さそうにする。

「・・・どうにか・・・出来そうなのですか?」

状況的には絶望的にマズイ。経験がそう言っている。今のお嬢の魔力なら、彼女1人だけならば問題はないだろう。

だが隊員達は・・・

「安心してガルム。私は1人も欠かす心算つもりは無いわよ?」

「・・・ハァ、・・・フフッ!・・・お嬢は心を読む事も出来るのですか?」

余りにも見透かされ過ぎて笑いがこみ上げて来てしまうガルム。

(きっと何とかしてしまうのだろうな。この人ならば)

先程の不安は何時の間にか消え去っていた。

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