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7歳、魔王に三行半を叩き付ける訳で その7

『飛空挺倉庫占拠されたぞ!憲兵はまだか!!』

『ガーディアン制御出来ません!!!誰かアレを止め・・・うわぁぁぁ!!!』

『防衛装置起動しません!ガーディアン制御系統復帰不能!!集中管理室全員で対処中ですが、手に負えません!』

『通信中央制御室爆破されました!外部への通信不能!緊急通信網展開まで3時間掛かります!』

ヴォルフが牢から脱獄してから20分も掛からない間に、ヴァルヴォリオル官邸内は大混乱に陥る。

玉座の間もその例外では無い。階級の高い者達が大慌てで指示を出し普段の厳格な雰囲気は鳴りを潜めていた。

その最中に在って、ラグルードは玉座にドッシリと腰を掛け中に浮かぶ画像を眺める。

そこに映るのはラグルードが忌み嫌う雌猿の姿。

此方を望み微笑みを浮かべていた。

(度し難い!!忌々しい!!)

と、不意に左肩に「ジクリ」とまるで傷が化膿したかのような痛みが走った。

(貴様も!!!貴様を産んだモノも!!今だ我を不愉快にさせおる!!!)



8年前


ラグルードは何時もの様に生殖実験場に居た。

「今回の遠征での成果で御座います」

「ふむ」

牢の中には無数の種族の雌、雌、雌。ラグルードの精で受精させ、より良い魔族を生み出す研究の為の実験動物モルモット

とは言え実験動物モルモットにラグルード自らの時間を使うなど事はしない。人工授精をさせるのである。

が、この日に限っては何かが違っていた。

牢の隅、力無く座る娘。目は虚空を仰ぎ、濁り切っている。

「アレは何だ?」

「ハーフエルフ・・・でしょうな。遠征の後期に捕らえまして御座います」

「ふむ」

ラグルードが興味を示すのも無理は無かった。戦争が始まると同時に、混血は数を急激に減らしていったからだ。

有る者は弾圧され命を落し、又有る者は幽閉され2度と外に出る事は無いで在ろう。

「混血を試した事は無かったな」

「今は貴重な存在になりました。如何為されますか?」

「面白い。我が直々に相手をしよう」

「畏まりました」

そう言って研究員は牢の鍵を開けハーフエルフの娘を連れ出す。

「又後で来る」

そういってラグルードはその場を後にした。

2時間後、ラグルードはハーフエルフの娘と実験室に居る。

娘はベットの上でぐったりとしていた。どうやら薬を使われ、動きを制限されている様だ。

ラグルードはまるで人形を扱う様に娘を引き寄せ・・・何の準備も無く挿入をする。

あくまで実験だった。そこには快楽も何も無い。

「ギッ!ガッ・・・あぎっ!!がっ!!!」

娘が声にならない悲鳴を上げる。しかしラグルードは意に介さない。

と、その時。

「がぁぁぁぁぁぁGYAAAAAGIIIII!!!!」

娘が奇声を発し、薬で動かない筈の体が凄まじい力を出す。

ドスッ!

ラグルードの左肩に短剣がめり込んでいた。

迂闊にも自身が身に付けていた短剣を、ベットの近くの机の上に放置しておりソレを使われたのだ。

暫くの静寂、そして・・・

「・・・・この猿がっ!!!!!」

ドゴォ!バキッ!!グシャ!!

ラグルードが殴る。何度も。

「が・・・・ぐ・・・」

何度も、何度も、何度も。

異変に気付いた研究員が止めに入った時、娘は既に虫の息になって居た。

「・・・ククククク・・・この我に傷を付けるとは面白い!」

そう言ったラグルードの目に怒りが満ちる。

「この猿を明日までに完璧に治療しておけ!面白い、面白いぞ!子を身ごもるのが先か!気が狂うのが先か!毎日楽しもうではないか!」

そう言いながら傷の手当の為に立ち去るラグルード。

・・・・娘は治療を施され、回復魔法を使われ完治する。その後他の奴隷とは隔離された個別の牢へと放り込まれた。

次の日からそのサイクルが、犯され、傷つけられ、治療され、戻されるが繰り返されて行く。

その日も犯され、治療を施され、牢へ放り込まれる。

完全に傷は治り痛みも無い筈なのだが、それでも娘は動かない。

(・・・ナンデイキテル?ナンデコロサナイ?)

答えは返って来ない。

(ナンデコンナメニ?ナンデワタシガ?ナンデナンデナンデナンデ)

その思いが憎しみや怒りに変わるのに時間は掛からなかった。

(ニクイ・・・ワタシヲステタリョウシンガ、アノアクマガ、コノセカイガニクイニクイニクイニクイ)

すると声が聞えて来る。

『憎いか娘よ』

(ダレ?)

『誰でも良い。其れよりも憎いか?この世の全てが?』

(ニクイ。スベテガニクイ。スベテヲケシテシマイタイ)

『だがお前にはそんな力は無い。このまま慰み者になり死んで行くしか道は無い』

(ナラバイッソコロシテ・・・)

『だが方法は在る。世界に、お前の両親に、あの悪魔に。復讐する方法が』

(ホシイ、シリタイ、ヤツラニ、ワタシヲハイジョスルセカイニフクシュウシタイ)

『なに、簡単だ。あの悪魔の子を宿すのだ』

(ナンデ?アンナツライコトモウイヤダ)

『あの悪魔の子を宿し、その子にお前の負の感情・・・怒りを!理不尽を!憎悪を!全て注ぐのだ』

(ソウスルトドウナルノ?)

『産まれるその子は全てを破壊出来る力を得る。世界を憎む。世界を壊す。お前の代わりに』

(ワタシノリョウシンモアクマモセカイモスベテコワス・・・コワレテシマエバイイ)

『子を宿せ娘よ。憎悪を注ぐのだ・・・そうなればお前の願いは叶う』

(ヤドス、コヲヤドス・・・)

声は聞えなくなる。

通常の精神状態ならば信じ難いソレだったが、この状況では最早娘が正常な判断を出来る道理が無かった。

その日から娘は犯される事を受け入れる。ラグルードに殴られようが、何をされようが薄ら笑いを浮かべ受け入れる。

それがラグルードの怒りに油を注ぎ、更に暴力も性交も激しくなる。

その悪循環が数ヶ月続き、娘は子を宿す。自身の復讐を代行してくれる子を宿す。

その子の成長は早かった。娘はそのスピードに負けない様に注ぐ。怒りを、怨念を、憎悪を。

自身が出産に耐えられない事は分かっている。無理な回復を多段に受けもはや体は限界を超えていた。

だが生きる。憎むから。怒るから。復讐をしたいから。だから生きる。生きてこの子を生み出す。

そして出産の時。娘の体は案の定出産には耐えられなかった。

遠退く意識の中、思う。

(私のすべき事は終わった・・・私の子はきっと全てを壊してくれるだろう・・・)

不意に昔の思い出が甦る。走馬灯と言われるソレだった。

両親との楽しかった思い出、日常の何気ない思い出。

そんな物をまだ覚えていた事に驚き、それと同時に思う。

(私には思い出が有った・・・でも産まれて来るあの子には何が有る?ただ産まれ、破壊し、死んで行くだけの存在・・・)

不憫に思えた。そしてふと自身の頬を伝う何か、それが何かを知る事は無く、そのまま命は途絶える。

最後の一瞬のソレは・・・彼女の破滅の願いに小さな、本当に小さな綻びを産んだ。それが何を齎すのかを知りえないまま娘の命は途絶える・・・



その子は産まれ、成長する。成長する毎に母親に似て行く。本来魔族の遺伝は強い。

その子もラグルードの性質を色濃く反映する筈だった。事実、今までの失敗作は魔族の特性を多く持ち、その所為で母体が発狂をする場合が多々有ったのだ。

ラグルードは不快だった。ステータスも分からず、顔もあの雌猿に似て行く、出来るだけ目に入らない様に動いた。

それが後の後悔に変わるとも知らずに。

ラグルードに似なかったのは、多分、きっとこの子の母親・・・娘の怨念であり、憎悪の所為だろうか。

その強烈過ぎる思いが魔族の遺伝を超えたのかもしれない。何れにせよその答えを知る物は居ない・・・




そして現在。あれから更に5分程経過した時、

ズドン!!

不意の大音量が玉座の間に響く。ラグルードが玉座の手摺りを叩き壊した。

そして一瞬の静寂が訪れた後、声を荒げた。

「何をやっておるか!!!直に『魔道防衛集中管理室』からの魔力供給を切断!ラグルードの名の下に破壊も許可する!!緊急通信網の構築は我の緊急通信回線を応用せよ、それならば1時間以内に復帰出来る筈だ!動ける兵は報告を密にし、飛空挺倉庫の鎮圧に回せ!!」

浮き足立った周囲に対し、的確な指示が飛ぶ。

腐っても魔王と言った所であろう。


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