7歳、魔王に三行半を叩き付ける訳で その6
「貴様・・・一体何をした!!!」
監視水晶からラグルードの怒鳴り声が聞えてくる。
「ふふ、直に分かりますわ」
そう俺が言うと直に、
ドン!ドカーン!グシャッ!
等の破壊音が其処彼処から聞えてきた。ガーディアンの制御も奪えたようだ。
程なく魔導防衛装置も使い物に成らなくなるだろう。そうなれば今度は彼等の出番だ。
ガルム達は飛空挺倉庫の門の脇にある扉の前で待機をしている。正門前の扉にガルムを含む2小隊。
その他倉庫裏と脇の窓の下、天窓回りに各小隊が待機をしていた。
(そろそろか)
お嬢の作戦概要では、
「一旦防衛装置が稼動した後、解除されるのでそのタイミングで制圧をして欲しい」
と言われていた。それは魔導通信施設の制圧班も同じである。
魔導防衛装置が起動すると、施設内では許可された者以外魔力が極端に低下し、魔力を使用した道具は使えなくなる。
その上各重要な拠点や部屋には、床に魔方陣が見えないように描かれており侵入者を捕縛してしまうのだ。
それを無効化出来ると言うので有れば大きいが、問題はそれ以外にも在った。
進入するためのドアには硬度強化の魔方陣が描かれており、もし破壊して突入するのであれば破壊に時間が掛かってしまう。
時間が掛かればその分危険度は増す上、中に居る者達に戦闘準備時間も与える事となる。
だが、お嬢は「あぁ、それなら大丈夫。任せて」と言って俺達に色々な戦術と道具を伝授した。
その戦術も道具も、今まで見た事も聞いた事も無いものばかりで目から鱗だった。
お嬢曰く、
「魔法に頼り過ぎており、それ以外の方法には脆い」
との事だ。
(確かにそうだ。殆ど魔法に対し重きを置いている。だがそれは当たり前の事・・・だと我々も思い込んでいた訳か)
そんな事を思っていると、魔導防衛装置が発動した様で、手持ちの魔導具が効力を失う。
「よし!各員配置に付け!」
同時刻、同じタイミングで魔導通信施設の中央制御室前に3小隊が待機をしていた。
中央制御室のドアは1つ、木で作られてはいるのだが、当たり前の様に硬度強化の魔方陣が描かれて居た。
窓は在るものの目の細かい鉄格子が填め込まれており実質そこからの進入は不可能だ。
「あ~やりたかね~室内突入は・・・」
「愚痴るな。作戦中だ」
「でも気持ち分かるッス」
小隊長達が話す。
「こう言う入り口1つって所、絶対待ち構えられてるッス」
語尾に『ッス』を付けて喋るのはヴォルフ隊紅一点の『ニコ』。
【マウンテン・フォックス】と言われる狐の頭をした種族の雌。【潜在能力】は4と高い。
「だよな~制圧って面倒で嫌だわ」
軽口を叩くのは『トム』。
【グラウンド・リザード】種族の、所謂【リザードマン】だ。【潜在能力】は3。
「無駄口を叩くなお前ら」
その二人を冷静に収めるのが『ウィーゴ』。
【ブル・ファイター】と言う戦闘種族。頭が牛なので良くミノタウロスに間違われるが、
本人曰く「あんなバカ(ミノタウロス)と一緒にしないでくれ・・・」との事。【潜在能力】は3つだ。
実際ウィーゴは力押しでは無く、技や戦略で戦うタイプだった。
「で?ど~すんだ?ニコも言ってた通り、待ち構えてるぞ?相手」
「そ~ッス、今魔法使えるのは私位しか居ないッスよ?」
「・・・・・・お前ら・・・・お嬢の話聞いてただろ・・・」
ウィーゴがタクティカルベストから太いテーピングの様な物と、側面に規則的に穴の開いた筒の様な物を取り出す。
「・・・・・・・・あ~アレか!」
「あれッスか!そう言えばアレが有ったッスね」
「・・・・・・・・・絶対忘れてただろ、お前ら」
そんな会話をしている3人だが、ヴォルフ隊の中ではTOP3に入る実力者である。
だからこそ3小隊で制圧に来ているのだが、TOP3とは思えない会話を繰り広げて居た。
そんな話をしていると、
「あ、防衛装置発動したみたいッスよ」
魔法を使えるニコが自身の魔力の低下を感じ発する。
「・・・突入準備展開」
大体こう言った場合指揮系統を取るのはウィーゴ、3人の間での暗黙の了解だった。
先程までの緩い空気が一瞬にして張り詰める。
ニコとトムも一瞬で集中力を最大に持って行く、その辺は流石TOP3の1員と言った所だ。
「breaching stand by (ブリーチングスタンバイ)」
「「「「「コピー」」」」」
突入班がドアの両脇の壁に張り付くと、先ずはニコが左壁際から逆手でドアをそっと触る。
そして少し集中、触れていた薬指の先が「ホワッ」と光ると目を開ける。
「マジックトラップ設置無し。硬度レベル3ッス」
「コピー」
(硬度レベル3、大体鉄位か。中では相手が待ち構えている・・・となれば)
ウィーゴは先程手にしていた太いテーピングを仕舞った場所を触る。
お嬢はコイツを『ブリーチングチャージ』と言っていた。
「こんな形でも爆薬なの。しかも火に入れても、衝撃を与えても爆発しない安定性を持っている高性能のね」
眉唾だったが、お嬢がこんな状況で適当な事を言う必然性は無い。
(・・・・・・使ってみるか)
「ブリーチングチャージ」
そう言ってドアを指差す
「コピー」
後方で待機していた隊員がドアに向かい、『ブリーチングチャージ』を取り出しドアの両側の上から下まで貼り付ける。
さらに斜めに貼り付け「N」字状にすると、これまたお嬢から渡された雷管って奴を起爆装置のコードに設置し『ブリーチングチャージ』に埋め込む。
「準備完了」
「コピー」
起爆装置を持った隊員を後方へ回す。準備は整った、後はその時を待つのみである。
その一方で扉の内側、制御室内には衛兵が11名と非戦闘員の職員20名が居た。
「良いか皆、もう少しすれば防衛装置が起動する筈だ。そうなれば奴等も迂闊には攻めて来られまい」
そう言っている衛兵は隊長だろう。彼は異変に逸早く気が付き、出来るだけ衛兵を集め制御室内へ来た。
その後この状況になり、篭城を始めたのだ。中々優秀な人物の様である。
「此処を落される訳には行かない!ここが落ちれば官邸内全ての通信を掌握されてしまう!
・・・職員の方々・・・危険な事をさせたくは無いのだが、お願いしたい。10分、いや5分で良い。増援が来るまで手伝って貰えないだろうか?」
その言葉に「分かった」「しかたね~な、やってやるよ」「私に出来る事が在るなら」と、職員は賛同していった。
机を倒し、簡易のバリケードにする。少しでも時間を稼げる様にとドアの前にも机やら椅子やらを置いた。
職員も多少の魔法が使える者は詠唱を始め、衛兵達はショートボウや攻撃魔法を何時でも使用出来るよう準備をする。
(コレなら何とか持たせる事が・・・)
と、此処を纏めた隊長が思い始めると、追い風の如く防衛装置が発動した様で、床の魔方陣に魔力が流れ込み始めた。
それを見たその場に居た皆は安堵し、少し場が和む。
(これなら増援が来るまで持たせる事も・・・)
が、十数秒後、「フッ」と魔方陣から魔力が行き成り抜ける。
「何が起きた!?」
声を荒げる。と、次の瞬間!
「breaching!breaching!breaching!!」
外からの声。と同時に、
ズバオォォォォォォン!!!
まるで雷が近くに落ちたかの様な轟音と共にドアとその回りの瓦礫に椅子、机までもが周囲へ吹き飛ぶ。
「ぐぁ!!!」「ギャッ!」「がふっ!!」
それらはドアの正面付近に陣取っていた衛兵と職員を飲み込み、後方へ吹き飛ばした。
「なぁっ!!」
堪らずソレを目で追う隊長。しかし直に、
(しまった!!)
慌ててドアの方へ視線を戻す・・・と、其処には見慣れない円柱状の、側面には規則的に穴の開いた何かが3つ程弧を描いて居た。
「な・・・に?」
パァァァァァァーーーーーーーン!!!!
凄まじい破裂音と共に強烈な光を感じた・・・・気がした。
その隊長が次に気が付くと、腕を縛られ床に転がされていた。
(何が・・・有った?)
見える範囲で状況を確認する。同じ様に拘束され床に転がっている者が多数見えた。
その内少しずつ音が聞える様になって来る。
「・・・っかし、スゲ~なこりゃ」
「あぁ、まさか此処までとはな」
「本当ッス!お嬢はどっから持って来たんスかね~」
「造ったらしいぞ」
「マジデ!?」「マジッスか!?」
何やら騒がしい。如何やら此処を制圧したヴォルフ隊の奴等だろう。
「そんでこれもスゲ~よな。ス・・・スタフ?」
「スタン・グレネードだ」
「そうそうソレ!光と音だけなんざ屁の役にも立たね~・・・って思ってたけどよぉ」
「此処まで制圧に効果的だとは思わなかったッス。・・・お嬢、恐ろしい娘ッス」
「あぁその点は俺も同感だ」
「隊長、全員の拘束終了しました。敵K・I・A職員合わせて9名です」
「そうか。引き続き周囲の警戒に当ってくれ」
「コピー」
9名・・・死んだ?
「お前ら・・・」
「ん?」
「あら?以外に早いお目覚めッスね」
「非戦闘員を・・・巻き込んで・・恥だとは・・・思わんのか・・・」
「心外だな、此方は中の状況など把握出来ん。其れを言うのであればお前等は何故、職員を後方で待機させなかった?」
「・・・グッ」
「巻き込んだのはオメ~らの所為だろが!職員だろ~が武器持ったり魔法詠唱してりゃ「交戦意思有り」ってなんだよ!」
「せめて、職員に対して防壁魔法位掛けて置くべきだったんスよ、アンタ等は。其れを怠った怠慢を私らの所為にしないで欲しいッス」
衛兵隊長はガクリと肩を落し、それ以上何も言わなくなった。
そうこうして居る間に「ピピピッ」と魔導通信機が鳴る。
「此方ウィーゴ。・・・そうか。ガルムの方も無事制圧完了だ」
「そりゃ良かったッス」
「道具が良かったからな。こりゃこの先楽出来そうだわ」
「確かに言えるッス。この『ブリーチングチャージ』と『スタン・グレネード』さえ有れば楽出来るッス」
「・・・何言ってるお前ら?」
ウィーゴの目に妖しい光りが点る。
「は?」「え?」
「こんな素晴らしい道具が二つも増えたのだぞ!どれだけ戦略の幅が広がったと思う!?
これ等を使いこなす為に修練を積むのだ!!」
「・・・出たよ・・・ミノと一緒にするなとか言っときながら考え方が脳筋ミノじゃね~か!!」
「あんなバカ共と一緒にするな!」
「少なくとも今は一緒だ戦略脳筋!!」
「・・・・・・・・やれやれッス」
2人のやり取りを見て苦笑いをする他の隊員達であった。




