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プロローグ 神って奴を殴りたくなった訳で

まどろみの中に居る・・・

何と無く第三者の目線で自分を見つめて居る感じ・・・


そう感じられる事って在るだろ?夢の中で「夢を見ている」って感覚。

今正にその真っ只中な訳で。

(あ~こりゃ又あの夢だな・・・何で見るかね・・・)

んな事を考えたが、見ちまったものは仕様がない。

夢の中で溜め息を一つ。

(まぁ暫く付き合ってやるか。あの「最悪」な「前世」のフィードバックに・・・)


某月某日地球の日本


    むつがみ あきと

「俺」事、六神  明人 の一日は、何時もの目覚ましアラームから始まったよ。「何時も通り」さ、何もかも。

何時もの如く顔を洗い、何時もの如くTVを見ながら着替える。

慣れたもんさ。なんせ十数年のルーティンワークだからな。

(そんな俺も既にアラサーだよ・・・独身アラサー・・・まぁ世間じゃ大量に居るだろ?・・・居るよね?)

誰に言うでもなくブツブツとぼやく。

その後、何時もの電車に揺られ、何時もの会社へ出勤する・・・って思ってた。

・・・その異変は何時もの駅へ向かってる最中に起きた。


(・・・何だ?何か変な感じが・・・)

別に何が如何って訳じゃない。ただ何と無く不意の違和感、と、その刹那。

[グラリ]と体がふらついた。

(ありゃ?風邪でもひいたかこりゃ)

などと思った瞬間、[ドンッ!ドドドド!]って擬音が合う位の衝撃。

それが地震だって気づいたのはそれから数秒してからだった。


(うわっ!こりゃ大きいぞ!)


既に立っていられない程の揺れに地面に突っ伏せる。

その瞬間


[ゴリッ!!!]


そんな音が頭の方からした気がする。

そのまま俺の意識は序々にフェードアウトして行った。


・・・・・・・・・・


(・・・何だ・・・・・・この匂い・・・焦げ臭ぇな・・・何か煮てたっけ?)

今一意識がハッキリしない。

(・・・昨日飲んだ酒、まだ残ってんのかな・・・あれ?ってか俺、何してたんだっけ?)

ガンガンと痛む頭に気を取られ、思考が定まらない。

そうこうしてる間にも焦げ臭さは増すばかりだ。

(ヤベッ!起きて火、消さね~とダメだ!)

気力を振り絞って体を起こし目を擦る、ぼやけてた視界も段々とハッキリして来た。

其処に広がっていた光景は・・・


瓦礫とかした民家、塀、倒れた電柱・・・そこかしこから無数に立ち昇る煙。

見慣れた遠方のビル群が不自然に傾き、或は消失している風景に物凄い違和感を感る。

「うそ・・・だろ?何だよ?こりゃ・・・」

自分が地震にあった事を段々と思い出しつつも、目の前に広がる光景が信じられなかった。

(何時もの通勤路の筈だろ?此処は・・・)

幸か不幸か、頭の痛みが和らぎ思考がクリアになっていく。が、何をすれば良いのかが判らない。

辺りを見渡す。

あまりの事態に思考を停止しただ突っ立てる人、座り込んで泣きじゃくる人、怪我して呻く人・・・

時間にすればほんの十数分の出来事の筈だ。

しかし、たったそれだけの時間の間に何時もの日常が遥か彼方にスッ飛んだ。二度と戻って来ない場所まで、だ。



「・・・ ・・・ ・・・・・・」

不意に声が聞えた。物凄く小さな、何時もだったら聞き逃している程小さな声。

何でそれが聞えたのかは今でも判らない。多分脳内物質が大量に出てたからじゃないか?

「クソッ!」

こんな状況じゃぁ自分の事だけでも一杯一杯だってのに、何で俺は駆け出せたのかね。

多分何にも考えて居なかったんだろうなぁ・・・あんときは・・・さ。

「助けて・・・」

声がしてたのは崩れた民家の中からだった。

玄関も窓も何もかも崩れ、入る隙間すら無い家は、こんな状況じゃ牢獄と同じだ。

「クソッ!クソッ!!誰か!誰でも良い!手伝ってくれ!!!人が閉じ込められてんだよ!!!!」

今まで出した事も無いような大きい声が出る。自分で自分に驚く位の声が。

必死に瓦礫を退かそうとするがびくともしない。そりゃそうさ。

道具も無い、レスキュー隊員みたいに鍛えても居ない、ただのオッサンに何が出来るよ?

自分の無力さを嫌って程味わったね。

(クソ!クソッ!!クッソがーーーーー!!!俺が!俺らが何したってんだよ!!!

毎日コツコツ働く人が!家でただ家族を普通に送り出した家族が!子供が!赤ちゃんが!じいちゃんばーちゃんが!

何で!こんな理不尽な目に遭わなきゃなんねーーーんだクソがーーーー!)

その時、地面がまた[グラリ]と揺れた。



余震が辺りを襲う、その揺れは俺を家から引き剥がし、そして・・・

[バキバキバキ!ドッシャーー!!!]

目の前で家が完全に潰れた・・・中から声がしていた家が。

「・・・は?・・・え?・・・・・・な・・・」

声は出なかった。あれだけデカイ声が出せてたハズなのに。

(目の前で・・・死んだ?人が?何で?俺、なんか悪い事したっけ?)

と、急に体から力が抜け始め、ゆっくりとその場に倒れ込む。

「あ?」

顔に何か液体のような物が付く。どうやら頭の上から流れて来てる様だった。

ソレに伴う様に視界と音が小さくなって行く・・・

(そういや頭に何か当ってたっけ・・・)

何とか動く手で液体に触り、視界に入れる。血だ。

(あ~こりゃもう駄目かもしれんね)

意識は遠のいて行くのだが、それでも以外に冷静な自分が居た。

(・・・何で俺、こんな仕打ちされなきゃなんね~んだ?)

たった十数分の間に徹底的に打ちのめされた。

何に?自分に?周りに?自然に?それとも・・・

(・・・あぁそうか・・・理不尽なんだな神って奴ぁ・・・死後に・・・会ったら・・・いっ・・・ぱつ・・・なぐ・・・・・・や・・・)

そのまま深い、深い闇に沈んで・・・




「・・・・ま!」

(・・・・・・・・・)

「・・・・・・様!」

(・・・・・・ん?誰かが)

「お嬢様!如何なされました!?」

・・・どうやら「最悪」な「前世」の夢は覚めたらしい。

「・・・大丈夫。少し夢見が悪かっただけだから」

目を開けると豪華な天井。そして、心配そうに此方を覗き込むメイドが視界に入る。

人に近いが肌の色は青紫、角や蝙蝠の様な羽の生えたメイドが・・・

「そうでしたか・・・今度、心を落ち着かせる事の出来るお茶を御持ちしましょう」

「そうね、有難う」

「では、そろそろお着替えの方を」

のそのそとベットから出る。そのままメイドと姿見の前へ移動。

ま~豪勢な姿見だ。バレエ教室に有りそうな大きさに豪華な外枠・・・

(こんなん必要か?)

なんて思っちまう。・・・あ~そうさ、日本育ちの平民育ちにゃ判らんよ。

ふと、其処に移る自分に目を向ける。背格好は6~7歳の子供位、4歳にはとても思えない整った身体だ。

顔立ちは幼さを残しつつも、清楚さと凛々しさを兼ね備えている。

髪はブロンズ、いかにもな短い角が両耳の上辺りに生え、目は真っ赤。

おおよそ人間のソレでは無い事は判るが・・・それでもぶっちゃけ美人だ。俺。

そう、俺は転生している。しかも女として、人外として。過去の記憶もそのままに。

椅子に座り、御髪を整えられつつ思いを馳せる。

(・・・まさか転生先が女の子とは思わんかったわ・・・)

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