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花の歌、剣の帰還  作者: 天谷あきの
第六章 エスメラルダ

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エスメラルダ(17)



     *




 ガルシアが来たのは、昼食後少ししてからだった。


 アルガスの部屋の長椅子でぐっすり眠っていた舞は、エルヴェントラにたたき起こされ、今度こそ有無を言わせず引っ立てられた。連行されて行く間、寝起きのぼんやりした頭をエルヴェントラの小言が素通りして行った。何だその髪は、身なりも少しどうにかしたらどうだ、冷たい水でも浴びて来い、本当にあなたがたふたり娘と来たら――


「聞いてるのか!?」

「すみません。聞いてませんでした」


 呟くと浴室に蹴り込まれた。どうやらエルヴェントラは気が立っているらしい。なぜだろう、と盛大にあくびをしながら考えた。ミネアとニーナと一緒においしい昼食を食べて癒されたはずなのに。


 水を浴びて、少し目を覚まして出ると、三人の女性たちが待っていた。ここでも有無を言わせず寄ってたかって正装を着せられ、髪も結われ、化粧までされた。その時にはだいぶ事態が飲み込めていた。ガルシアは、捕虜にしていたエスメラルダの見張りと温泉小屋の管理人の他には、ひとりの女性だけを伴って、訪ねて来たのだと言う。


「それがまた綺麗な人なんですよ」

「エルヴェントラは負けず嫌いですからね」

「やっぱりドレスの方がいいんじゃないかしらね。ああ姫、この靴を履くんですよ。少しは背が高く見えますからね」


 女性たちのさえずりを聞きながら、舞は考えた。昨夜言っていた、『会わせたい人』というのは、その女の人なのだろうか。


「――まだか」


 部屋の外でエルヴェントラのイライラする声が聞こえた。女達は舞から離れ、じろじろと遠慮のない目で眺め回した。


「まあいいでしょう。これなら見劣りしませんよ」

「あら、いいじゃないの。普段からこれくらいすればいいのに。自分でも少しは出来るようになりなさいね」

「マーシャがこぼしてましたよ。姫が嫌がりさえしなければもっと飾り立てられるのにって――」

「いいのか!?」


 エルヴェントラが悲鳴のような声をあげ、女達は慌てて舞を扉の外へ押し出した。エルヴェントラは舞を見て一瞬目を見開き、少しして、言った。


「……いいだろう。来い」


 どうやら合格したようだった。舞はつくづくとため息をついた。何と言うか、始まる前に疲労困憊の有り様だった。


 踵の高い靴を履いているので気をつけないと転びそうになり、数歩歩いただけで足が痛みだした。生まれつきの令嬢だったなら、足もこういう靴を履くようにできているに違いない、と、ひがみっぽい気分で考えた。


 執務室の前で、エルヴェントラが振り返った。エルヴェントラはもう一度、舞の頭のてっぺんから足の先までを確認して、珍しく、やや満足げにうなずいた。


「あなたがたの言っていたとおりだ。あれは賊なんてものじゃない。一族の長というよりも、一国の王と王妃だ。こちらとしても相応の礼をもって迎えねば。わかってるだろうな?」

「……はい」


 粗相をするなということだろう。舞はうなずき、呼吸を整えた。


 そしてエルヴェントラが扉を開いた。


 簡素な執務室にしつらえられた長椅子に座る、大柄なガルシアと、小柄な女性が見えた。捕虜にされていた者たちは全員、長椅子の後ろに立っている。こちら側の長椅子にはエルギンが既にいて、マスタードラがその後ろに立っていた。舞は、その女性を見て、エルヴェントラが自分を飾り立てた理由がよく分かった。彼女も正装だった。見事な黒髪を結い上げた形は風変わりだったが、ほっそりした彼女の美貌によく映えた。彼女は優しい顔立ちで、きちんとしていて、優雅でとても綺麗だった。どこかローラに似ている、と舞は思った。


 エルギンが舞を見て、少し驚いた顔をした。そして微笑んだ。似合う、と言ってくれたように思えて、それで少し勇気が湧いた。マスタードラの方は見られなかった。ガルシアと女性が立ち上がり、礼をした。


『エスティエルティナ。これは見違えた。月明かりで見るよりも、日の光の方が、美しく見えるとは』


 ガルシアが如才なく世辞を述べ、舞は、瞬きをした。ガルシアは既に、デクターの作った魔法道具を身につけているらしく、首元に若草色の、シルヴィアのものとそっくりの鎖がかかっていた。そのせいだろうか、言葉ははっきりと伝わった。女性の方の首には何もかかっていないが、


『ウルスラ、言ったとおりだろう。ミユキによく似ている』

「本当だわ」


 その言葉もはっきり聞き取れた。女性は舞を見て、なつかしげに微笑んだ。


「初めまして、エスティエルティナ。私はウルスラ。ごめんなさい、不躾に見たりして。驚いたでしょう。私達、あなたによく似ている人を知ってるの」

「……そうですか。遅れて申し訳ありません。初めまして、私はエスティエルティナ=ラ・マイ=ルファ・ルダ。おふたりだけで、私達の国の者を送ってきてくださったのですか?」

「今日は謝罪に参りました。昨夜――ガルシアの一族のせいで、ケガをなさった方がいるとうかがいまして」


 ウルスラが少し不思議な言い回しをし、ガルシアが言った。


『ウルスラは医師だ。俺の知る限り最高の腕の持ち主だ。どんな傷でも、生きてさえいれば、跡形もなく消すことができる』

「な――」


 エルギンが声を上げた。ウルスラは微笑んで、一歩、前に出た。


「肩をどうなさったの、エスティエルティナ」

「舞と、呼んでください、ウルスラ……?」

「ええ。見せてもらえます? ……これは」


 ウルスラは舞の隣に来、舞を長椅子の、エルギンの隣に座らせて、自分は舞の前にひざまずき、肩に左手をかざした。


「まあひどい。痛むでしょう。何か重い物を持ったのね」

「別に何も……あ、気持ちいい……」


 それは不思議な感触だった。そして壮絶に気持ちが良かった。凝り固まっていた肩の筋肉が自らほぐれて、炎症を治め、血液が巡りだし、あるべき物があるべき場所へ自然に戻って行くような。舞はうっとりした。こんな気持ちのいい経験は生まれて初めてだった。寝不足のせいもあり、このまま眠ってしまいそうだ。


「ミユキ、という人物は、一体どなたですか」


 舞の隣でエルギンが口を開いた。舞は目を開け、ウルスラはまだ治療を続けながら、口元に優しい笑みを浮かべた。答えたのは、ガルシアだった。


『あれは信じがたい経験だった。……我々が現在も流浪を続ける原因となった、大いなる危機が起こった際、三人の人物が現れた』

「……どこから?」

『さて。空から、なのだろうか。わからん。銀狼が連れて来たんだ』

「その銀狼は、私の友人でした」


 ウルスラが静かに口を挟んだ。エルヴェントラが、眉を上げた。


「銀狼と? 友人?」

「ええ。彼らはそれほど気難しい種族というわけではないんです。話してみれば……何というか、お茶目で可愛いところもあるんですよ」

『どこから来たのかはわからない。どうやって来たのかも。エスティエルティナは生身の人間だが、俺は実際、彼らの姿を目で見たわけではないんだ。なんというか……説明が難しい』

「ただ私にはミユキの姿が見えました。ガルシアも私を通して彼女を見た。だから顔を覚えていたんです。私達はずっと彼女を、彼女に少しでも似ている人を捜していた。五年の間にさまざまな場所へ行き、さまざまな一族の方々に会いましたが、彼女にわずかでも似ている種族はいなかった。――マイ、あなたが初めてなの。お会いできて嬉しいわ」


 ウルスラは微笑み、舞のもう片方の肩に治療を移した。舞は治療の終わった肩を動かしてみて、それがすっかり癒えているのに気づいた。


『彼らは我々の救い主だった。――本当に危ないところで救われた。エスティエルティナはどう見ても彼らの一族だ。それに彼らの使っていた言葉も知っていた。そんな彼女がここにいるのだから、あなた方が我らの敵でないことは明らかだ』


 舞は身じろぎをした。何がなんだか分からないけれど、そんなことで味方だと思われるのは、居心地の悪いことだった。


「それは買いかぶり過ぎです……私は……何て言うのか。ミユキ、という名前は、確かに、私の故郷でよく使われる名前でしたし、事実私の友達にもその名の人がいました。ゲームとかゴールとか、そういう言葉もありました。でもそれが指すのは、ただ同郷だと言うだけだ」

『それで充分だ』

「そんな」

『詳しい話は追々したい。ただ俺は彼らが俺達を救うためだけに、遠い場所からはるばる来てくれたということを知っている。そしてそれに報いることをなにひとつできぬまま、返してしまったことを悔いている。今でも。あなたには迷惑かもしれないが、俺達にとって、彼らの恩に報いる相手はあなたしかいないので』

「……そんなこと言われても……」


 舞は俯いた。胸の奥がざわざわした。なんというか、うまく言えないのだが、いい気分ではなかった。どちらかと言えば不快だった。だって、それでは、


『特に何かしようと言うのではないのだ』


 ガルシアが少しだけ困った顔をした。


『確かに、迷惑な話だろうな。あなたがここにいるのは、タクミたちとは違う理由だろうから。ただ俺達の、心情を話したいと思っただけだ。話を元に戻そう。

 昨夜の勇士のふるまいは美事だった。剣士の名に恥じぬふるまいだった。だから俺は、橋の先にあるという集落が、攻め滅ぼしてもかまわぬ蛮賊の巣窟であるという情報が嘘であると分かった。さらに、少ない供だけを連れた女性が彼を迎えに来た。――わかっているだろうか、異国の姫よ。俺達の風習では、野蛮な人間は、敵のただ中で倒れた勇士を、危険を顧みずに迎えに行ったりはせぬ。それが女性ならばなおさらだ。あなたのふるまいも美事だった、恩人の同郷だという点は二の次だ』


 ガルシアは微笑んで、座ったままだが、左腕を胸の前に引き寄せて見せた。


『だから謝罪にも来ただろう、医師を連れても来ただろう。だがふたりだけで来たのはやはり、あなたが恩人の同郷だからだな。ウルスラ、終わったか』

「ええ」

『それでは。――エスティエルティナ。昨日の勇士のところへ、ウルスラを案内してはいただけないだろうか』


 舞はガルシアを、それからウルスラを見た。

 動かしてみるまでもなく、肩はもうすっかり治っていた。終わってしまったのが残念なほど、気持ちのいい治療だった。


『彼女は俺の妻というわけではない。まだ。一族が彼女を受け入れるにはまだしばらく刻がかかるのでな。彼女は話をしに来たわけでもない。俺の要請を受けて、勇士の治療に来たのだ』

「……それは、ありがたい」


 舞は腰を浮かせた。エルヴェントラがかすかに顔をしかめたが、ガルシアは言葉を重ねた。


『エスティエルティナ。あなたのような方に、案内などを頼むのは無礼なことなのだろう。だがぜひ聞き届けていただきたい。勇士はウルスラをすぐには信用するまい、昨夜自分を殺すところだった一族からの謝罪といわれても、自分の体を診せるのには抵抗があるはずだ。だがあなたの案内なら信用するだろう。ウルスラはいつか我が妻になる女性だ。他の方には任せられない』

「承りました」

『それからこれを。――勇士の剣だ。なくされて、さぞご心配であろう』


 舞は微笑んで、立ち上がって、剣を受け取った。肩は本当に、すっかり良くなっていた。傷を跡形もなく消すことができるという言葉も今なら信じられる気がする。アルガスも今以上に良くなるだろうと思うと本当に嬉しかった。踵の高い靴も今は苦にならなかった。


「引き合わせたらすぐに戻ってきてくれ」


 エルヴェントラが珍しく、命令ではなく頼む口調で言った。舞は頷いて、ウルスラを促した。ウルスラは一同に優美な礼をすると、舞の後ろに続いた。





 エルヴェントラの執務室からデクターの家までは本当にわずかな距離だった。舞はアルガスを移しておいて本当に良かったと思いながら軽やかな足取りで道を歩いた。踵の高い靴が、煉瓦の道にこつこつと楽しげな音を立てる。道を歩く住民たちは、ウルスラの姿が珍しいのだろう、ふたりをしげしげと眺めている。


 剣はずしりと重かった。それほど長くはないが、太くて無骨だった。汚れはすっかり清められていて、もしかしたらガルシアの一族によって研ぎ直されたのかもしれない。柄の紋章もきらきらと日に光った。舞はしげしげとその複雑な模様を見つめた。どこかの家紋だろうか。


「……本当にごめんなさいね」


 ウルスラは舞を見下ろして、ゆっくりとした口調で謝罪した。舞は剣を抱え直してウルスラを見上げた。


「私たちすっかり浮かれてしまって。あなたには迷惑な話だわよね、本当に」


 それで先ほどの不快な気持ちを少し思い出した。


「……いえ」

「彼らはね、精神だけこちらに来たのよ」

「……精神、だけ?」

「そう。不思議だったわ。頭の中に、違う誰かの声が聞こえたの。私はだいぶ長いこと気づかなかったようなんだけど、気づいてみたらはっきりわかった。そして姿も見えた。風変わりな顔立ち――ごめんなさい、見たことのない顔立ちだったということよ?」


「ええ」


「なんて言うのかしらね。私は彼らにも自分の生活がちゃんとあり、私たちのためだけに存在してくれているわけではないと、わかっているつもりだったの。でも。五年もずっと捜したの。その間、彼らの痕跡さえ見つけることができなかったの。彼らの残した言葉を知っている者さえいなかった。だから次第にね、ああやっぱり私たちのためだけに存在してくれていたんじゃないかなって、そんな風に思ってしまって」


「……そう」


「でももうそうは思わない。だってあなたがいた。ねえ、今は忙しいでしょうから、落ち着いてから。あなたの故郷の話を聞かせてね。ミユキと、タクミと、ライトの住んでいる場所を少しでも知りたいから」

「ええ、いいですよ。でも私は、九歳までしかいなかったんです。だからあんまり覚えてない」

「いいのよ。……本当にごめんなさい。あなたは普通の人間だわ。誰かのために存在しているような不可思議な存在なんかじゃないわ。不快な思いをさせたいわけじゃなかったの……」


 舞はウルスラを見上げて、微笑んだ。確かに不快ではあったが、ウルスラの前で、それを引きずることなどできそうもなかった。ウルスラは舞より少し年上のようなのに、とても可憐で、かわいらしい人だった。


「いいんです。五年も捜されたんですから、あたしを見つけて嬉しくなっちゃったという気持ちはわかります。それに……誰かと同郷だから嫌われるってこともあり得るんですから、あたしの同郷があなた方の恩人というなら、それは幸運なことだったんだ」

「ありがとう」


 ウルスラはホッとしたように笑った。その時には、アルガスのいる家に着いていた。舞はウルスラと共に家に入って、まずマーシャを捜した。


 マーシャはアルガスの部屋で、給仕をしていた。ちょうど目を覚ましていて、舞が覗くと、アルガスは目を見開いた。持っていた粥の皿がぼとりと落ちて、中身がこぼれる前にマーシャが拾った。


「ウルスラ、どうぞ。ガス、この人は、お医者さん。ウルスラ、という人です。昨日の……ガルシアが謝罪のためにって連れてきてくれた。あたしの腕も綺麗に治してくれたんだよ。本当に気持ちが良かった。凄腕の医師で、傷を跡形もなく消すことができるとか……どうしたの」

「……」


 アルガスはよほどに驚いたのか、まだまじまじとこちらを見ていた。いったい何をそんなに驚いているのだろうと舞は思った。ウルスラを見ているわけではなく、視線は間違いなく舞を見ている。何かおかしいだろうか? 顔に何かついているだろうか? アルガスの手から匙が落ちそうになっているのを、マーシャが無言で取り上げた。アルガスの寝台の上でうずくまっていたシルヴィアは、やはり舞をまじまじと見ていたが、ようやく声を上げた。


『ああ、驚いた。どうしたの姫、とっても綺麗よ。いつもそうすればいいのに』


 それで舞は、自分が正装で化粧もしていつになく飾り立てられていたことを思い出した。


「……エルヴェントラが客人を迎えるのにふさわしい格好をしろって言うから。ウルスラ、こちらへ。マーシャ、ガルテは?」

「先ほど様子を見に来られましたが、もうお帰りですよ。でもほんのついさっきでした」


 マーシャだけはあまり驚いた様子もなかった。アルガスはようやく手を下ろしたが、まだ舞をまじまじと見ていた。いったい何だというのだろう。正装するのがそんなにおかしいというのだろうか。似合わないのは重々承知だが、そんなに見られるほどおかしいだろうか。舞は思わず顔をしかめた。そしてもっていた剣をつっけんどんにつきだした。


「ガルシアさんが返してくれた。手入れを頼んでおこうか?」

「……いや」


 アルガスはようやく瞬きをして、舞の顔から剣に視線を移して、受け取った。大事そうに鞘を撫で、ため息をついた。


「ありがとう」

「どういたしまして。ガルシアさんにも伝えとく。――ウルスラ、こちらが昨夜の、アルガス=グウェリンです。こちらは私の友人でシルヴィア、あちらがアルガスの看護を担当している、マーシャ」

「よろしくお願いします。……昨日は、私の一族の者が大変失礼をいたしまして」


 ウルスラは、鴉を友人だと紹介されても、怪訝そうな顔ひとつ見せなかった。三人に丁重に頭を下げて、寝台のそばに歩み寄った。マーシャがすぐに椅子をすすめ、ウルスラが座る頃、アルガスはようやく咳払いをして、剣を寝台に立て掛けて、ウルスラに目を向けた。


「失礼しました。わざわざ治療をしに来てくださったんですか」

「ええ。当然のことですから。よろしければすぐにでも?」

「お願いします」


 アルガスは別に警戒する様子もなく、すぐにそう頼んだ。舞はシルヴィアとマーシャを見た。


「あたしはすぐに戻れって言われてるんだ。でもガルテを捜して、ウルスラのことを伝えてから戻るね。マーシャ、ガルシアさんは、ウルスラをつれて、ふたりだけでここに来たんだ。どうかこの方をくれぐれも」

「お任せください、姫様」


 マーシャが重々しく頷き、舞はウルスラに一礼をした。ウルスラの返礼を受けてから、アルガスに視線を移して、


「じゃあまた。もうほんとに、お化粧なんかするんじゃなかった」


 言わずにはいられなかった。アルガスが驚いたような顔をするのに再び顔をしかめて見せて、舞は部屋の外に出た。足音が自然に乱暴になって、廊下の床がごつごつ鳴った。踵が高いので乱暴に歩くと転びそうになる。どうして腹が立つのだろうと考えながら外に出ると、部屋の窓から軽やかなウルスラの声がかすかに聞こえた。それはなぜか笑みを含んでいるようだったが、舞はそれに背を向けて、ガルテを捜しに行った。


 すぐに見つけたガルテにも、ついでに近くにいたデリクにも、驚かれ、笑われ、からかわれた。泣きたくなった。あんまりだ。

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