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花の歌、剣の帰還  作者: 天谷あきの
第九章 再会
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間話5-12 エルギン=スメルダ・アナカルシス(12)

 アイオリーナ姫が到着したという知らせは、おやつ時に届いた。


 それも今、この時に、まさにニーナの家に向かっているところだと聞いて、ビアンカは震え上がった。女性のお客様だから真っ先にニーナの家に通される。そこで少し休憩して、その後しかるべき場所へ移動する、というのが、ここでの習わしらしいのだ。


 そういえばビアンカも真っすぐここに通された。そしてそのまま居座ってしまったわけだが。


「ちょうどいいわ。一緒にお茶が飲めるもの」


 ニーナが事もなげに言い、ビアンカは内心だけで呻いた。あっさり言うなー!


「大丈夫よ、ビアンカ。あんた王妃とだって普通に話せるんでしょ?」


 オーレリアが言い、ビアンカは叫んだ。


「だってアンヌ様は特別だもの! アイオリーナ姫ってラインスターク家の嫡子なんでしょ!? 無理無理あたし絶対無理、」

「大丈夫よ、あんただって血筋としちゃそんなに引けを取らないわよ? クロウディアはラインスタークやイェーラと並ぶ由緒正しい、押しも押されもせぬ大貴族よ?」

「育ちが違うよ育ちがー!」


「あのね、ビアンカ」ニーナが言った。「貴族の体裁にこだわるような人は二流だってセシリアが言ってた。誰からも認められる令嬢は却ってあまりこだわらないものなんだって」

「セシリアってラク・ルダのセシリア姫!?」


 そんな人ともお友達なのかこの人は!


「そうそう。だからアンヌ王妃も、セシリアも、気さくな人でしょ? カーディス王子だって気さくだった、エルギンもね、だから、アイオリーナ姫だって大丈夫よ。上の方へ行けば行くほど気さくなんだと思うわ。ねえビアンカ、あなたはクロウディアの本物の嫡子なんだから、ただでさえ正当な姫君なんだから、これ以上姫君らしくある必要なんかないの」


 部屋の片隅でうたた寝していたデリクが、ビアンカの悲鳴に目を覚ましていて、眠たげな声で笑った。


「すげえ説得力だな。本物は言うことが違うぜ」


 オーレリアがニヤリとした。


「本当にね。ビアンカみたいな年頃だと、ルファルファに詳しくない子も出て来てて、嘆かわしい話だわねえ。ビアンカ、あんたルファルファのふたり娘にここまで馴れ馴れしく話してんだからさ、いまさらラインスタークのお嬢様ごときに気後れしてんじゃないわよ」

「ひー!」


 そうだった。ニーナは本来、この世で一番『正式なお嬢様』なのだった。ビアンカが今まで、知らなかっただけで。

 ……でもそう考えると。アナカルシス王によれば、ニーナは崇めてはならない存在で、ルファルファによれば、ニーナは崇めなければならない存在なわけで、つまり、ところ変われば身分なんてころころ変わるということなのではないだろうか。ということは、あまり気にしないでいいのだろうか。いやいや。


 ビアンカが気にしているのは、自分が、それらしいふるまい方を知らない、ということなのだ。


 ニーナはその気になれば本当の令嬢としての立ち居ふるまいを見せることができる。意外だが、姫もそうらしい。アイオリーナ姫だって同様だろう。でもビアンカは、お辞儀の仕方さえろくに知らないのだ。いろいろ習っておくべきだった――剣よりこっちだった――と思って右往左往するうちに、アイオリーナ姫が到着してしまった。鈴が鳴らされ、マーシャが応対に出る。それから知らせにくる。ニーナは立ち上がり、ビアンカは今さら気づいた。ニーナもビアンカも普段着だ。


「どどどどどドレスとか着るべきだったんじゃ!?」

「家でくつろいでるのに?」


 あっさり返されて、そりゃそうか、と思う。ニーナは先に立って客間を出、ビアンカを招いた。


「もう病気じゃないし、出迎えに行きましょ」

「は、はい」


 ついニーナにまで敬語を使ってしまうビアンカである。情けない。オーレリアとデクターとデリクも一緒に来た。五人は玄関に並んで立った。マーシャが外に行き、わずかな応対の後、


「どうぞ、お入りくださいまし」


 マーシャの声に続いて、玄関に、細身の、美しい若い女性が立った。

 ニーナや姫と同い年くらいに見えるその人は、とても綺麗な人だった。目がやや吊り上がっていて、凜とした顔立ちだが、表情はとても優しい。後ろに侍女、召使い、更に騎士を従えたアイオリーナ姫は、にっこりと微笑んだ。


「お邪魔いたします。わざわざのお出迎え、誠に恐れ入ります」

「長旅、さぞお疲れでしょう。初めまして、アイオリーナ=ラインスターク姫。私はエルカテルミナ=ラ・ニーナ=ルファ・ルダ。我が家へようこそ」


 ニーナはアイオリーナへ近づき、にっこりしてその手を取った。


「狭くて申し訳ないんですけど、どうぞこちらに。舞から昨日手紙が着いたんです。あなたのことを書いてました。舞を助けてくださってどうもありがとう。舞と仲良くなってくださったんですって? それならもう、私の友人というわけだわ。

 ――今ね、ちょうど、お茶を飲んでいたところ」


 ニーナの口調がさりげなく段階を踏んで砕け、アイオリーナは、それを上手に受け取った。


「まあ――嬉しいわ、喉が渇いてたの。ああ……初めに言っておかなければ。ルディアス、こちらへいらっしゃいな」


 アイオリーナは振り返り、背後に控えていた騎士が、左腕に乗せていた黒い鴉を差し出した。鴉は若草色の首飾りをつけていた。シルヴィアだ、とビアンカは思った。

 でもなんだろう。なんだか、雰囲気が違う。

 鴉は羽ばたいて一度床に降り、アイオリーナの左腕に飛び乗った。


「ご存じでしょう――? でも初めて会われるはずだわ。この子は、ルディアス、というの。この子も一緒にお邪魔して、構わないかしら?」

「ええ、もちろん。初めまして、ルディアス」


 ニーナは平然と受けた。ビアンカはまじまじとルディアスを見ていた。でも、これは、シルヴィア、では――ないのだろうか?

 一言も話さない。それどころか、ビアンカの方を見もしない。瞳の感じが全然違う。


 ――さよなら。よかったら、私のこと、覚えておいてね。


「行きましょう、ビアンカ」


 ニーナは囁き、ビアンカの肩を抱いた。アイオリーナはビアンカの前で立ち止まって、優美に膝を折った。ああ、令嬢はこうして礼をするのかと、ビアンカは思った。


「初めまして、ビアンカ=クロウディア姫。あなたのご決断に心より感謝申し上げます」

「あ――いえ、アイオリーナ姫、」

「どうかアイオリーナと呼んで頂戴、シルヴィアの手紙に、ビアンカとニーナという友人ができたと書いてあったの。先程の話じゃないけれど、シルヴィアのお友達なら、わたくしのお友達でもあるわけだわ。なんだか初めて会うというのが不思議な感じね」

「立ち話もなんだから、どうぞ奥へ」


 ニーナが言って、ビアンカの腕を引く。引っ張られるままに、ビアンカは歩いた。アイオリーナの左肩に乗るシルヴィアは、――ルディアスは、ビアンカを見ても知らんぷりだ。


 先程までくつろいでいた客間は、茶器などが出っぱなしになっていたはずだが、すっかり綺麗になっていた。いつの間に、と思う。こういうことがあると、マーシャの腕が一流なのだと思い知らされる。


 アイオリーナは勧められた椅子に腰掛けて、左腕に乗せた鴉の羽を撫でる。そうしながらお互いに紹介をしあった。侍女はレノアと言うそうで、若い召使いがエニスと言った。騎士は、ルーウェン=フレドリックと名乗った。この人が、と思う。


「シルヴィアは、」とアイオリーナが言った。「わたくしに会う寸前に、鴉の中から消えたようなの。でも覚悟をしていたらしくて、わたくしに手紙を遺してくれた。あの子と仲良くしてくださって、本当にどうもありがとう。あの子ね――わたくしを介さない友達というのがいなかったの。だから嬉しかったと思うわ」


 アイオリーナは咳払いをひとつしただけで、見事ににっこり微笑んだ。消えた、という言葉を、ビアンカが飲み込む前に、次の話に移った。


「ルディアス、というのは、姫がつけてくれたの。――【最初の娘】、あなたの【剣】のお陰で、わたくしはこうして無事に、戴冠式という晴れやかな場にも列席させていただく栄誉を得ることができました。改めて、お礼を申し上げますわ」


「こちらこそ」ニーナは完璧に微笑んだ。「我が【剣】が意にそまぬ境遇に陥る危機を、見事にお救いくださったとか。どうもありがとうございます、アイオリーナ=ラインスターク姫。【最初の娘】の感謝をお受けください」


 ふたりは微笑み合った。それは正に仮面を脱いだりつけたりする行為に似ていた。それもふたりとも、何の合図もなく見事に行い合っている。ビアンカはまた思った。やっぱりこんなの、あたしには無理。


 エニスがうらやましい。あたしも椅子に座らされたりせず、壁際に控えていたい。


 ところが、次に口を開いたアイオリーナは、がらりと表情を変え、急に砕けた口調だった。


「……でもそれがね、第一将軍の娘を救うという大仕事をしてくれたというのに、姫の手柄にできなかったの。だってあの人ったら、ウルクディアへの見返りにティファ・ルダをあげるなんて言うんだもの、冗談じゃないわ。ウルクディアは周囲を包囲しただけなのよ? 危険なことは全て姫と流れ者がしたの、それなのにティファ・ルダだなんて! だから何も支払わせないようにするしかなかったの。申し訳ないわ」


 ニーナは笑った。


「いいのよ、第一将軍が静観していてくださるだけで充分すぎるほどだもの」

「でもそれじゃあ、わたくしの気が済まないの。――レノアとエニスが道々作ってくれたものをね、ぜひ、姫に差し上げたいと思って。まだ出来上がってはいないんだけど、あともう少しだから、姫が戻るまでにはできると思うわ」

「お任せください」


 アイオリーナの背後で、レノアが頼もしく請け合った。アイオリーナはにっこりして、身を乗り出した。


「でも先にご意見をうかがおうと思って。ねえ、【最後の娘】の正装って、脚衣なんですって? シルヴィアが手紙に書いてたの、ドレスの一着も持ってないって」


 お茶とお菓子を配っていたマーシャが恥じ入るように俯き、ニーナが苦笑した。


「そうなの。マーシャを責めないでね。ごく必要なとき以外で、正装したがる子じゃないから」

「ええ、そんな感じだったわ。もちろん、マーシャの怠慢だなんて言うつもりはないのよ? ごめんなさいね、マーシャ。あの人、第一将軍に会うためにすら、お化粧を渋ったんだもの。なんだか嫌な思い出があるとかで」


 デリクが身を堅くした。オーレリアがデリクを睨んでいる。アイオリーナはふたりの様子には気づかなかったようだった。


「でもせっかくの戴冠式ですもの、着ていただけたら嬉しいな、と思っているの。ねえニーナ、【最後の娘】の正装と同じ色を使ったの。そうすれば戴冠式でも問題なく着られるんじゃないかしら?」

「それは問題ないわ、あなたからの贈り物なら、舞も着ると思うし、喜ぶと思う。まあ、どうもありがとう」

「シルヴィアが初めておねだりしたのよ」アイオリーナは微笑んだ。「初めてねだった衣装が自分のものじゃないってところがあの子らしいけれど。大きさもウルクディアでレノアがこっそり計っておいたし、ぴったりだと思うの。出来上がったらお見せするわ」

「楽しみだわ」


 ニーナの返答ににっこりしてから、アイオリーナはビアンカを見て微笑んだ。どうにかビアンカの気持ちをほぐそうとしてくれているらしい。ドレスは着ないでよかったようだ、とビアンカは思っていた。アイオリーナも簡素な服装だった。まあ、旅をして来たのだから当然だろう。


 それでも、アイオリーナは優雅にお茶を飲む。指先までが優美だ。ふんわりと渦を巻く髪は、ビアンカと同じ色なのに、波打ち方まで優美に思えた。ビアンカの髪のようにはね回って始末に負えないなんて悩みとはきっと無縁だろう。どうしても気後れを追い払うことができず、かたずを呑んでアイオリーナを見つめている状態のビアンカの目の前で、アイオリーナは、添えられているふんわりした丸い菓子を一口食べて、うっとりした顔をした。


「まあ……まあ、なんて美味しいのかしら! 中に苺が丸ごと入っているのね」


 その歓声を聞いて、ビアンカはなんだか急にほっとした。ああ、と思った。普通の女の子だ。

 今日のおやつは苺をふわふわのクリームで包み、それをさらに柔らかなもちもちした生地で包んだものだった。苺の甘酸っぱさがクリームと生地と絡み合う美味しさに、アイオリーナはしげしげとその断面を見つめた。


「これは一口で食べるべきものだわね。まあ、最近よく凄腕の料理人に会うものだこと」


 ビアンカはマーシャがどんな顔でその賛辞を聞いているかと、マーシャを捜したが、マーシャはいつの間にかいなくなっていた。どこへ行ったのだろう、と思う。

 アイオリーナもマーシャを捜したようだが、いないとわかるとニーナを見た。


「とっても美味しいわ――気をつけないとここでも太りそうだわ、わたくし」


 そして残りの菓子を口にいれ、もぐもぐしながらにっこりした。つられてビアンカもにっこりした。少し緊張がほぐれてきた。そうだ。バーサの手紙に元気づけられたばかりではないか。貴族だって令嬢だって、普通の女の子じゃないか。


 それから少しの間、情報交換が続いた。


 ニーナとビアンカが一番聞きたかった、姫のウルクディアでの様子をアイオリーナは事細かに話してくれた。ルーウェン=フレドリックが手紙で知らせてくれていた内容とほとんど同じだったが、アイオリーナが語るとまざまざと状況が目に浮かぶようで、ビアンカは気後れも少しずつ忘れて話に聞き入った。そしてフレドリックの手紙にはなかった話もあった。ご子息が夜中に忍んで来たことまでは、フレドリックは書いていなかったのだ。姫が彼を廊下に蹴り出したところで、ニーナは声を上げて笑った。


「ああ、だから命じたのね。命じるまでするなんて思い切ったな、と思ってたのよ。それなら納得だわ、しこたま踏みにじってやれば良かったのに」

「本当にね。わたくしもそう思ったわ」

「【最後の娘】が宝剣抜いて命じたのなんて、ここ数代で初めてじゃないかしら? ああ、その場を見たかったな」

「でもそんなことが出来るなら、初めから、その、薬なんか飲まされる前にやっとけば良かったのに」


 ビアンカが口を出すと、ニーナは首を傾げた。


「そこが難しいところよね……ルファルファの威光を笠に着て理不尽な命を乱発すれば、ルファ・ルダの恥になるのよ。だからどこからどう見てもこちらに非のない状態でないと命じちゃ駄目って口を酸っぱくして言われてるはずだから。【最後の娘】の命はルファルファの命なの、これ以上刃向かえばお前を人間とは認めないし、巡幸もお前を避けるだろうって警告することなの、だからよほどのことがないと命じちゃいけないし、なんて言うのかな、あんまりやると信憑性も失せるでしょ」


「ふうん……いろいろ大変なのね」

「ねえちょっと、あたしも聞きたいことがあるんですけど」


 ずっと沈黙していたオーレリアがひらひらと手を振った。アイオリーナが首を傾げた。


「なにかしら?」

「ラインディアのご自宅で、クレイン=アルベルトがあなたを拐かした、その【穴】をそのまま通って、エルティナとアルガス=グウェリンとフェリスタが追いかけたって聞いたんだけど……」

「エルティナ? 姫のこと?」


 アイオリーナの問いにオーレリアは頷き、ルーウェン=フレドリックを見た。


「その【穴】は自分で閉じたの? 誰も……その、魔力とかで閉じてないのに?」


 ルーウェン=フレドリックは直立不動の体勢のまま、重々しく頷いた。


「そうだ」

「やっぱり魔物が無理やり開いた【穴】には自然の浄化作用が働くものなのかしら。その【穴】の状況をね、少し詳しく聞かせていただけない? あたしそういうことについて調べてるんだけど、魔物が【穴】開いたところなんて見たことないし――」


 フレドリックはアイオリーナを見て、その許可を得てから、口を開いた。


「【最後の娘】の後、少し遅れて私が部屋に駆け込んだときには、【穴】というものはどこにもなかった。部屋の真ん中にテッドという幼い従僕が血まみれで倒れていて、グウェリンがテッドを見てい、フェリスタは窓を見に行っていた。【最後の娘】は部屋中を見まわしておられた……」


「待ってよ。それじゃあどうやって追いかけたの?」


「【最後の娘】がテッドに、男が消えたのはどの辺りかと訊ねられた。テッドは文机の辺りを指して、まだそんなに歪んでいるのに見えないのか、と言った。【最後の娘】がテッドの示した辺りに手を差し入れて、上下に開くと、そこに【穴】が現れた」


 オーレリアは目を見開いていた。信じられないことを聞いた、と言っているようだった。フレドリックはオーレリアの表情を見ながら、静かに続けた。


「人が通れるくらいの【穴】を開くと【最後の娘】が飛び込んで、グウェリンとフェリスタが続いた。私も続こうとしたが、私は間に合わなかった。フェリスタが通れたのもぎりぎりだった。私の目の前で【穴】は閉じた。【最後の娘】と同じように私も開こうとしたが、どうしていいのかさっぱりわからなかった。私の手は空間を素通りした。きゅん、というような音を立てて空間が閉じ、そのまま何事もなかったかのような静寂が戻った。

【穴】が閉じる寸前にフェリスタが『ウルクディアだ』と叫んでいたのが聞こえたから、そのまますぐ追いかけたのだ」

「……オーレリア?」


 ニーナが訊ね、オーレリアはフレドリックから視線を外してニーナを見た。ニーナが首を傾げた。


「驚いてるのね」

「……そうよ。素手で【穴】を開いた人間の話なんか、あたし聞いたことないわ。それってつまり、魔――」

「オーレリア」デクターが静かに口を挟んだ。「発言は慎重にね」

「いいのよ、デクター。初めから、七年前に初めて会ったときから、わかってたことだもの。あの子には普通の人とはちょっと違うところがあるって、あなたも言ってたじゃない。きっとそれなんだわ」


 ニーナは言って、お茶を飲んだ。それから、にっこりした。


「ちょっと違うところがあったって、舞は舞だもの。関係ないわ。それに魔物と同じことができたって、舞が魔物だってことにはならない。あの子は正の存在だってあたしは良く知ってるし、そうでなきゃエスティエルティナがあの子を選ぶはずがない。どうもありがとう、ルーウェン=フレドリック。第一将軍のところへ我が【剣】を案内して下さって、本当に助かりました」


「こちらこそ」


 ルーウェンが丁重に受け、アイオリーナがその場をほぐすような明るい声を上げた。

続きを23時に更新します。

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