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花の歌、剣の帰還  作者: 天谷あきの
第八章 ウルクディア
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ウルクディア(7)

 舞は異様な気配に顔を上げた。アイオリーナの視線は舞に向けられていたが、舞を見ているわけではなかった。見る見るその顔が蒼白になり、彼女は手を頬に当てた。


「――まさか。でも。そこまでやるかしら……ああ。やる。いいえ、やりかねないわ」


 舞はアイオリーナが必死で頭を働かせるのを黙って見守った。ふと、シルヴィアの言葉が耳に甦ってきた。


 ――あなたの思考は一足飛びなのね。アイオリーナと同じだわ。


「何をやりかねないの?」


 言ってみた。誘うように。アイオリーナは呟いた。


「実力行使よ……」

「実力……行使? 自分の身くらいは守れるけど」

「そう。そうよね。薬さえ飲まされなければ――ああ、流れ者はここから一人残らず出るのかしら」

「うん、明日の朝にはみんな出るはず」

「そう、それなら……でも駄目。やっぱり身分が違い過ぎる。そう、だから既成事実が出来てしまえば」

「既成事実?」

「そう……そうよ。ああ。それだけで済んでしまうんだわ」


 アイオリーナは舞を見据えた。小さな、しかし激しい声で、囁いた。


「わたくしとしたことが! 思い至らなかったわ――ああ、なんてこと。とんでもないわ。あなたをここにずっと縛り付けておくには、ご子息がここに到着してしばらく経てば充分なのよ!」

「到着するだけで?」

「そう。そうなの。あなたには外に連絡をとる手段がない、ご子息君がここに到着して、あなたに会って、結婚を申し込むとするわ。考え過ぎかしら。でもやりかねない。あなたはシルヴィアと同じ立場なんだもの! シルヴィアにどれほどの求婚者がいたか、あなたは知っていて? 寝室に忍び込んで既成事実を作ってしまおうとしたふとどき者もひとりじゃなかったのよ! あの子をひとりにしないためにどれほど力を尽くしたか! 家にいる時でさえ、レノアかわたくしがいつも一緒にいたの、宴で疲れて先に休みたいと言っても、誰かと一緒じゃなきゃ――だってシルヴィアは正式なラインスタークの養女、でも彼女自身の血筋はそれほど身分が高くない――あなたとそっくり同じよ、そうでしょう、ルファルファと誼みを通じることができ、あなた自身は――ティファ・ルダの世継ぎ姫ということはまだそれほど知られていないんだものね! どうしてエルヴェントラはあなたに神官兵もつけずにほうり出したりできるのかしら! そう、ご子息が求婚したら、今、あなたには対外的に拒む術がない。どんな返事をしようと、ご子息君を部屋の外に蹴り出して二度と会わなかったとしても、ここに留まる限り、結婚を承諾してご子息君と仲むつまじくお過ごしだと対外的には知らされてしまうのよ! そうよ、ご子息が、代表の息子とは言え貴族でもない、そんな人間がよりによってあなたを手に入れようとするなら既成事実を作るしかない。そしてご子息がここについて、それでもあなたがここに留まっていたら。一度そうなってしまったら、もう既成事実ができたも同然よ、一生ここに、ご子息に、縛り付けられる。エスメラルダが助け出そうとしても取る術がないわ――」


 舞は顔から血の気が引くのを感じた。そうだ。いくら事実と違っても、舞の筆跡や声を外に出す手段がない以上、ウルクディアの発表が対外的には『事実』になってしまう。思わず立ち上がった。


「どうしよう」

「嫌よね」

「絶対嫌だ!」

「では手を考えましょう。ご子息君の到着は明日、ああ、そんなことになったら彼に顔向けできないわ――わたくしを絶対許さないでしょうよ! 今夜来てくださって本当によかった! さあ、考えましょう。いくつか考えられる手があるわ。まずひとつめ、あなたに既に許婚がいること。それもウルクディア代表を黙らせる程の地位の許婚が。カーディスのように。ねえ、エルギン王子はどう」


 舞は椅子に腰を下ろした。そして呻いた。


「……どうって」

「まだ独身でしょう。年頃も合う。わたくしの知る限り許婚もいないわ。ウルクディア代表なんて逆立ちしてもかなわない。エルギン王子が許婚だって知らされれば諦めるわよ」

「……そんな嘘ついても……」

「そう、だから、嘘じゃなくする必要があるわ。エルギン王子はあなたが助けを求めれば応じると思う、それだけの恩義と負い目を感じているはず、それに【最後の娘】をウルクディア代表なんかにみすみす渡すくらいなら……あら」


 舞はうつむいて、呟いた。


「エルギンにはずっと心に決めた姫君がいるらしいよ」

「あら、あら。そうじゃないでしょう。あなたが嫌なのね。そう。好きじゃないのね?」

「嫌いってわけじゃないけど……」


 アイオリーナは舞を見て、頷いて見せた。


「いいのよ。好きじゃないならいいの。わたくしは取れる手を挙げているだけなのだから、大丈夫よ。じゃあ次の手を。アルガスはまだ残っているわね。彼に頼んでここから連れ出してもらう」

「えええ」

「しばらく身を潜めるくらい、ここに一生縛られるよりはマシでしょ、今夜ならまだ間に合うわ」

「でも――そんなことしたらガスがお尋ね者に」

「既に流れ者よ。似たようなものだわ」

「全然違、」

「同じよ。ああ、あなたは……ふふ、戸籍を板っきれと言い切る方なんだものね! 【最後の娘】ともあろうお方が! ねえ、アナカルシスの上流階級ではね、ウルクディアの代表殿も含まれるけれど……戸籍のない者は人間じゃないの」


 舞はぽかんとした。


「――そうなの?」

「そうなの。大貴族、貴族、下流の貴族、貴族に仕える人々、ここまでが人間。それ以外は無視するべき存在。存在してはならない者たち。戸籍は人間であることを証明するためのものなの。普通ならそれで充分なのよ、流れ者たちは好んでわたくしたちに近づいて来ようとはしないから。シルヴィアだって冷遇されるようなところよ、召使や、ましてや流れ者なんて、推して知るべし、じゃないかしら」

「……」


 舞は眉根を寄せた。自分は今まで根本的な部分を理解していなかったのだろうかと、思った。

 それでは、誰かに戸籍を焼かれるというのは、お前はもう人間じゃないと、言われるようなものなのだ。どんなに悔しかっただろう。


「だから彼のことは気にしなくても大丈夫。流れ者たちの境遇を見たでしょう? 十二人にあんな狭い部屋、寝台はひとつきり、毛布さえ渡さない。もちろんここから追い出したい思惑もあるのでしょうけどね、代表殿にとって、流れ者たちは、存在するだけでそもそも目障りなのよ。お尋ね者になったって彼も気にしないと思うわ。それにエスメラルダに戻ればみんな彼に感謝するわよ、ウルクディア代表だってもう手出しできない。大丈夫、あなたが頼めば無事に出してくれる」

「……」


 舞は少しだけ考えた。強い、強い、誘惑を感じた。もううんざりだ、何もかもが厭だった。ここに残ることも、ご子息とやらの顔を見ることも、鳥肌が立つほど心底厭だった。アルガスも言っていた。このまま出てもいいんだぞと。舞が望むなら、そう、連れ出してくれるだろう。


 でもそうするわけにはいかなかった。やらなければならないことがある。舞は首を振った。


「それは一番最後の手段にしておきたい。あの……あたしは、第一将軍がいらしたら、アンヌ王妃を迎えに行くつもりなの。カーディス王子が兵を挙げたらアンヌ王妃が孤立する、だから」

「まあ……」


 今度はアイオリーナが考えた。それから舞の手を取って、ぎゅっと握った。


「ありがとう……まあ、そう。そうなの。ああ、カーディスが喜ぶわ……そうね。それならば、ここから堂々と出た方がいいに決まってる……そう。じゃあ、これが最後の手段よ。他の手に比べて成功率は低いし、あなたの評判が下がりかねないし、あなたがとても頑張らなきゃいけなくなるけれど……魔物の前に飛び出すよりは簡単だと思うわ。ええと、レノアは明後日には乗り込んできてくれると思う。それまで、わたくしから離れないことよ」


 アイオリーナは舞を覗き込んで、安心させるように微笑んだ。


「わたくしにはカーディスという許嫁がいる、だから滅多なことは出来ないし、そして第一将軍の嫡子よ。ここを出ればウルクディア代表も他の方々もわたくしの発言には重きを置く。わたくしが証人になるわ、あなたがウルクディアのご子息君なんかに見向きもしなかった、ふたりの間には何もなかった、ということの。わたくしのそばにいさえすれば彼らも手出しはしにくい。レノアが来るまで食事も飲み物も採れなくなるし、身動きも取れなくなるけれど、これなら――」


「……本当に? そうしてくれる?」


「もちろんじゃないの」アイオリーナは微笑んだ。「こんな事態に陥ったのは何もかもわたくしのせいだわ。わたくしのせいでこんなことになって本当に申し訳ないと思っているの。あなたが今回のことでなんらかの不都合を被るなんて絶対許せない。大丈夫、上手くいくようにする。絶対守って差し上げるわ。でもわたくしのところにたどり着くまでは、あなたが頑張らないと。一度ここを出なければ駄目。お医師様の配慮がばれてしまうから。一度部屋に戻って、朝までぐっすり寝たという演技をしてね。そして、朝二番の鐘が聞こえるまで、何とか持ちこたえるの。いい、二番の鐘で、わたくしの部屋の前の見張りが交代する。今朝ちゃんと調べておいたのよ。あなたの顔を先ほど見た兵士がいなくなるまで待っていて。聞こえたらすぐにここに来るのよ。宝剣が戻ったと言ったわね? 聞いたことがあるの、ええと、命じることが出来るって、命に背けばルファルファの加護を失うことになるがどうかと、強制できるって――ああ、それはもうおひと方のほうだったかしら」


「ううん、あたしの方。今も出来る。滅多にやっちゃいけないけど」


「今はその滅多な時よ。必要なら使うのよ、いいわね? たぶん寄ってたかって止められると思うわ、でもあなたを傷つけることはできないのだから、あなたなら通れるわね。居丈高に振る舞ってでもここに押しかけてくるのよ。その階段まで来たらもう大丈夫。この部屋からだって聞こえるもの、わたくしが扉を開けても不自然じゃないわ。出来るわよね?」

「うん」


 舞は微笑んだ。不安が少し遠のいた。本当に、なんて心強いんだろう。


「本当にありがとう。助かります。ああ、モリーという名の料理人がさっき、味方についてくれた。ふっくらした人の良さそうな人。食事と飲み物を用意してくれているはずだから、それも持ってくる」

「そう、それは心強いわ。二番の鐘までにご子息君が到着しないことを祈りましょう。――大丈夫よ」


 アイオリーナは舞を見て、にっこり笑った。


「今までこういう経験がなかったのね。不思議な気もするけれど……さぞ不安でしょうね? わたくしが剣を持って魔物の前に出て行けと、言われるようなものだと思うわ。でも大丈夫よ。わたくしはこういうことには慣れているの、シルヴィアの求婚者を何度も撃退して来たのだから、あちらの出方もある程度は想像できるし、どうふるまえばいいかも解っている。だから安心して。大丈夫だから。――さあ、もう戻った方がいいわ。夜明けが近いもの。あなたが目を覚ます前に、扉の前に見張りが来ると思うから」


 舞は頷いた。アイオリーナがいてくれて本当に良かった。立ち上がると、アイオリーナが呼び止めた。


「あ、そうだわ。忘れていた。流れ者たちを雇うのって、いくらかかったの?」

「ひとり棒一本。代表殿が立て替えてくれたから、みんなもうもらった」

「そう、じゃあ、お父様は代表殿に渡せばいいわけね。ああ、反論はなし。お父様から払わせてもらう。そうさせて頂戴、そうじゃなきゃお父様も納得しないわよ」

「でも」

「でもじゃないでしょう、わたくしに逆らえる立場なの? 脅迫するわよ? そうさせてくれないなら明日も協力しないわよ」


 舞は苦笑した。確かにそう言われては、頷くしかない。


「じゃあ……ありがとう、お願いします。ああ、ガスの分だけはあたしから払わないといけないんだ。でもそれは将軍にお話ししよう。それじゃあ、朝二番の鐘が鳴ったら逃げて来る。よろしくお願いします」

「待ってるわ」


 アイオリーナはそう言って手を振り、寝台に横たわった。舞は燭台を吹き消して、そっと部屋を出た。


 先程の兵士は眠そうにしていた。話は漏れてはいなかったらしい。


「随分長かったなあ」

「ええ、怖くて眠れなかったみたいです。やっと眠られましたよ……あああ、あたしも眠い。じゃお休みなさい」

「待て」


 兵士が言い、舞はぎくりとした。


「何ですか?」

「これから寝るのか? お嬢様が眠ったってんなら俺も暇だしな、そこの部屋があいてんだ――」


 のばされた手を舞は払いのけた。ああ、びっくりした。なにかと思うじゃないか。


「やめてくださいよ、また朝からきりきり舞いして働かなきゃいけないってのに。コリーン様は夜中にお姫様をお慰めしたからって、斟酌してくださるような方じゃないですからね」

「まあそうか」兵士は苦笑した。「休みはいつなんだ?」

「さあいつでしょう。あなたと一緒じゃないことは確かですね」

「つれないなあ。部屋まで送ろうか」

「結構です」


 舞はずかずかと廊下を歩いた。呆れていた。兵士より流れ者の方が、よっぽど礼儀正しいではないか。


 階段を降り、広々とした廊下を足早に歩いた。呆れるほど広い建物だった。遥か向こうに、恐らくは舞の部屋に続く階段が見えており、三人の兵が眠たげにしているのが見える。ジェスタ=リンドの目が良くないことを祈っていると、少し先の右側の角から指先が覗いて、ひらひら動いて引っ込んだ。


 その角を右に入ると、流れ者がひとり、いた。ノーマンと名乗った若い男だ。彼は壁にもたれたまま、今は舞の正面に当たる方向を示した。


「うまくやったようだな。そこの戸口がさっきの裏口だ。出たら壁に沿って左に行けば、厨房にたどり着く」

「……ありがとう」


 迷わないように待っていてくれたのだろうか。情けないが助かった。裏口を出たら右に行く気だったし、そもそも指先が出ているのを見なければ、逆に曲がるところだったのだ。

 廊下を突っ切って裏口を出る。冷たい夜気にホッと息をつく。

 そこにフェリスタがいた。


「あっちだ」


 舞はむすっとした。人を何だと思っているのだろう。


「……君たちねえ」

「はは、悔しかったらひとりで帰ってみやがれってんだ」

「足のケガは大丈夫?」

「ああ、もう痛みもねえくらいだ。言われるまで忘れてた」


 それは嘘だろう。そう思ったが、言い方が本当にさばさばしていて、心強かった。舞は微笑んで、声を低めた。


「……事情が変わった。モリーにも伝えておくけど。明日の朝、二番の鐘が鳴ったらすぐ、アイオリーナ姫の部屋に移動する。そして第一将軍が来られるまで、そこにずっといる。見張りがつくから、モリーも近づけないかも……でも絶対出るから、ウルクディアの外で待ってて」

「わかった。厨房まで送ってやるぜ。……なんかまた面倒なことになりそうなんだな?」

「うん」


 フェリスタはため息をついた。


「本当に、ひとりで大丈夫か」

「……うん。それにひとりじゃない。アイオリーナ姫がついててくれるから、大丈夫」

「そうか」


 フェリスタは頷き、沈黙した。ふたりは黙ってしばらく歩いた。ややして、空気の匂いが変わる。食べ物や残り物や生ゴミの匂いが入り交じった厨房の匂いが近づいてきて、フェリスタが再びため息をついた。

 そして立ち止まった。


「何でなんだよ」


 舞は数歩行き過ぎて、振り返った。フェリスタの表情は闇に沈んで全く見えなかった。フェリスタからもよく見えないだろうと思いながらも、舞は首を傾げた。


「何が?」

「…………何で、なんだよ」


 それは何か呪うような、呻くような、低く、哀しげな、声だった。舞は驚いて、フェリスタに向き直った。


「どうしたの」

「……」


 沈黙が落ちた。

 もしもそこが真っ暗闇でさえなかったなら、フェリスタの表情が見えただろう。舞にも、フェリスタが何を考えているのか、もしかしたらわかったかもしれなかった。けれど表情は全く見えず、フェリスタはすぐに声を取り繕った。次に聞こえたのは、いつも通りの、さばさばした明るい声音だった。


「あんたも本当に大変だよなあ、【最後の娘】。でももう少しの辛抱だ。な?」

「……うん?」

「エルギン王子が王になりゃ、あんたは自由になれるんだ。そうだろう」

「……自由、に」


「温泉にだってどこにだって、好きなところに行けるんだろう。考えとくといいぜ、姫。モリーがどこに店出すのかわかんねえけど、そこに行ってみるとかよ。草原はほんとにいいとこなんだぜ。あんたにゃ風変わりな食べもんだろうが、慣れりゃうまいもんだしよ――」

「――好きなところに……」


 舞はフェリスタのいる辺りを見つめた。


 フェリスタはこの前も舞に聞いた。エルギン王子が王になったら、お前はどうするのか、と。

 あの時も思った。今まであんまり考えたことがなかった――


 この日々が終わることなんて、考えてはいけないことのような気がした。エルギンが王になれば――【最後の娘】の責が終われば――エルヴェントラも言った。エルギンが王になればお前はもう好きにしていいと。ニーナも言った。【最後の娘】を放棄して、好きなことをやるといい、と。


 でも何も浮かんでこない。

 やりたいことはいっぱいあるような気がするのに。


 明確な目標として掲げられない。舞は身じろぎをした。自分はおかしい、とそこで初めて自覚した。エルギンが王になる日なんてもうすぐそこだ。それなのに、その日はもうすぐそこに来ているのに、自分がその後何をするかなんて、ちっとも考えてこなかった。そして今も。考えられない。思い浮かばない。その先の日々が存在するなんて、信じられない――


「そう、だね」


 無理矢理声を絞り出した。そして舞は、声に微笑みを乗せた。


「うん……いろいろ考えておこう」

「それがいいぜ。地下街にもまた行けよ。あそこにも美味いもん出す店が何軒かあってな」

「ふふ。楽しみだな」


 舞は、踵を返した。厨房に向かって再び歩きだした。地下街。地下街にもう一度行ける日なんてくるのだろうか、それも美味しいものを食べるために行くなんて、できるのだろうか。本当に。


 フェリスタが追いついてきた。再び彼は無言だった。舞も黙ったまま歩いて行った。とりあえず今は、と、歩きながら考えた。今の事態を打開することだけ考えよう――

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