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葉月ちゃんと壱也さんシリーズ

葉月ちゃんと壱也さん1

作者: 藤城 瑞香

初投稿です。

この辺りの住宅街には似つかない黒い高級車が家の前に停まってる。



バサっ!!


「俺と付き合ってください。」


うわ、薔薇の花束って、初めてみた。


「・・・。」





ーーーーーー


ーー


大学生ってもっとキラキラした生活が送れるものだと思ってた。


例えば、サークルに好きな先輩が居て、先輩と会える日はオシャレしたり、ドキドキしたり。


例えば、同じ講義でたまたま隣の席になった男の子と仲良くなって、恋に発展したり。


例えば、バイト先で新しく入ってきた後輩に、仕事を教えてる内に告白されちゃったり。





ーー


ーーーーー




「・・・・。」


「あれ、おかしいな。」


バサっ!!!


「葉月ちゃん。俺と付き合ってください。」


「聞こえてます。」


「よかった!」



バサ!!!


「俺と付き合ってください。」


「嫌です。お帰り下さい。」


目の前で薔薇の花束をバサバサしてる人。


スラッとした体つきに、スーツが似合い。

流れる黒髪に、切れ長で色気のある瞳。

仕事ができそうな自信に満ち溢れたたたずまいに、涼しげな笑顔。


そう、どんなに優良物件であっても。


20歳の私にとって、30手前の男の人はおじさんである。


「そこをなんとか。」


「なんともなりません。」


全然キラキラしてない。




「壱也さん。今日何曜日ですか?」


「火曜日です。」


「今何時ですか?」


「朝の7時ですね。いい天気。」


「そうですね、馬鹿なことしてないで、仕事行ってください。あと、毎朝懲りずに待ち伏せするのもやめて下さい。」


この人がなにかと理由をつけては、毎朝私の家に迎えに来るようになってから、すでに3週間目。

はじめのうちは『おはよう。学校まで送っていくよ、ついでに俺と付き合ってくれる?』と爽やかに高級車から顔を出していただけだったのに、断り続けた結果。ついには花束まで出し始めた。


「朝からそんなもの入りませんから。さっさとしまって仕事行ってください。」


「昨日テレビ見てたらね」


「話聞いてます?」


はぁ、と明らさまなため息にも、爽やかな笑顔は崩れない。


「薔薇の花束って素敵だなって突然思っちゃてね。葉月ちゃん、どう?トキめいた?」


「月9に影響されないで下さい。邪魔です。」


7時に玄関でてからすでに5分が経過。そろそろ本気で電車に乗り遅れる。


「乗ってい「きません。結構です。」


ひどいなーなんて爽やかに笑いながらインターホンを鳴らし、顔を出した母へと花束を渡す。


「お母さん、良ければリビングにでも飾ってくださいね。」


あらまぁまぁと頬を染める母に、出来れば葉月ちゃんのお部屋にも少し飾ってくれるとありがたいです。なんて言うもんだから、より一層顔を赤くする母。

このままこの茶番を見続けると、本気でこの人の車に乗って大学行かなきゃ行けなくなる。



ーーーーーーーーーー


ーーーーー


ーー




「で、間に合ってるってことは、今日もまたあの高級車で通学したってことね。」


教科書をカバンから出しながらため息をつく私に、ケタケタと笑う友達の友希。


「カッコいいし、お金持ちそうだし、大人だし。なにがそんなに不満なの?いーじゃん、付き合えばさっ。」


「やだよ。私はもうちょっと普通に青春したいだけです。」


「もー、20になるんだから、青春より現実じゃない?」


う・・・。


「ま、葉月のことだからそのうち落とされちゃうんじゃないかなーと私は思ってますけどね。」


「え!?なんでよ!」


「だってあんた押しに弱いでしょ?青春とか言ってる恋愛脳の子はね、基本的にそんなもんなのよ」


う・・・。


「それが嫌なら早く好きな人つくりなさいねー」


観察力とアセスメント力に優れた友人の言葉に


「・・・はぃ。」


素直に頷いたのは、決して私が月9のドラマでキュンとしたからではない。


そう思いたい。

鈴寺 葉月〈すずでら はずき〉

8月生まれ 19歳

160センチ50キロ

一般庶民 看護学生


東海 壱也〈とうかい いちや〉

1月生まれ 29歳

185センチ 70キロ

実家金持ち 会社員


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