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6話 ダンジョンの異変


 緊張感からさすがに疲れが襲ってきたので、一度体制を整えようと俺たちはトロールを倒した場所に腰を下ろしていた。

フランはレンを抱え、俺の隣に座りながらトロールを食べているルトを眺めている。


「……ルトは、ちょっと異常かもしれないね」


 そういうフランの口調は、いつになく固いものだった。

まぁ、低レベルの召喚獣があんな働きをするなんて、俺も聞いたことがない。

普通じゃないと言いたくなるフランの気持ちもよくわかる。


「グルトニースライムって種族について、少し調べてみないといけないかもな」

「そうだね。ただ、先生たちにはまだ伏せておいた方がいいと思うよ」


 なんとなくだけどね、と呟くフランに俺はわかったと頷く。


「フランの言う事は大体間違いないからな。そう言うなら自力で調べてみるよ」


 幸い、学園には巨大な図書館がある。

あの場所ならば調べごとにはおあつらえむきなはずだ。


「私も手伝うよ。ルトが一体なんなのかは気になるし」


 成績優秀なフランが手伝ってくれるというのは幸いだ。

俺一人だと本の山を前にしたら眠りこける未来しか想像できない。


「ところで、さっきルトは何をしたの? 剣みたいになってたけど」


 フランの質問に、あぁと答えて俺はワンドを彼女に見せる。



ーーーーーーーーーーーーーーー

  種族名 グルトニースライム

  名前 ルト

  Lv:5

  HP : 30

MP : 22

  STR:21

  INT : 11

DEX : 17

VIT : 5

AGL : 12

MND : 16


  所持スキル : [性質変化] [形態変化][身体圧縮/膨張]

  特性 : 暴食         

ーーーーーーーーーーーーーーー



「ゴブリン倒してた時にどうやらレベルがあがってたみたいでな。いくつかスキルを習得したみたいなんだ」


 ちなみにいまはトロールを倒した事でさらにレベルが上がっている。


「性質変化で硬化して形態変化で剣みたいな形になったんだね」


 フランの言葉に多分な、と頷く。


「俺もまさかあんな芸当ができるなんて思ってなかったよ」

「使いようによっては相当強力そうだよねこのスキル。ちなみにこの身体圧縮っていうのは?」


 ワンドに表示されているもう一つのスキルを指さしてフランが尋ねる。

だがこのスキルは多分トロールを倒した時に手に入れたもので、俺もまだ見た事がない。


「ちょっと試してみるか。ルト、身体圧縮だ」


 食事を終えてさらに膨れ上がったルトに命令をすると、その体がみるみる縮まっていく。

そして最初に来た時のように、頭の上に乗るくらいのサイズまで小さくなった。


「……これだけ?」

「……これだけだな。いやでも便利といえば便利なんだけど」


 そろそろ俺の体と同じくらいの大きさになっていたルトをどうしようかと悩んでいたのだけど、これなら気にしなくても大丈夫そうだ。


「さて、ルトの食事も終わったし今度こそ地上に戻ろうか」

「そうだね、レンも休ませてあげたいし」


 本当さっきは無理させてごめんね? と胸元のレンを撫でながら、よいしょとフランは立ち上がる。


「ルト、俺たちも帰るぞ」


 小さくなってさらに活動的になったルトは、ぴょんと地面を跳ねると俺の頭の上にのっかってきた。

やはりルトにとってはここが定位置らしい。


 ときたま遭遇するゴブリンに気をつけながら、俺たちは魔導エレベーターを目指した。





「フロアボス撃破、ですか」


 地上に戻ってきた俺たちは、今日あった出来事を早速受付に伝える。

フロアボス撃破などダンジョンの情勢に関する情報は共有する必要があるため、戻ってきたらかならず受付に報告することが義務付けられている。


「あの、どうかしたんですか?」


 普段と違って浮かない顔をする受付のお姉さんに、怪訝な顔でフランが尋ねた。

フロアボスを倒すというのはなかなかの偉業だが、俺たちはそもそも五階層まで降りれるくらいの実力はある。

無傷で切り抜けられたのは奇跡だが、べつにトロールくらいなら倒せない相手じゃない。

だからそんなに驚かれる事ではないとおもうのだけど……。


「実は、三階層のフロアボスはつい二日前に倒されたばかりなんですよ」

「「二日前!?」」

 

 お姉さんの言葉に俺とフランは思わず驚きの声を上げてしまった。

というのも、ダンジョンは基本フロアボスが出現する頻度は一週間に一度程度だ。

深層にいくにつれて復活速度はもっと遅くなる。

とはいえ、三層のフロアボス出現頻度は7〜10日程度のはずだ。

二日なんて聞いたことがない。


「最近、どうやらモンスターの動きが活発になっているらしいんですよ。このフロアボスもその一環だと思われます。どうかお二人も気をつけて下さい」


 俺たちは身を案じてくれた受付のお姉さんに挨拶をして、その場を後にした。




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