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3話 ダンジョン


「今日これから暇かい? 召喚獣も手に入れたことだし、課題をこなしにダンジョンに潜ろうと思うんだけど」

「あぁ、討伐課題か。俺もまだだしいこうか」


 ファンターデは、冒険者を育てる王国最大の学園だが、その最たる理由は学園内にダンジョンを抱えていることにある。

ファンターデの学生は皆学園内にあるダンジョンで実際にモンスターと戦いながら、冒険者としての実力を養っていくのだ。

そのため、課題として実際にダンジョンに潜りモンスターを討伐してこいと言ったものも出る。


また、ダンジョン内で得た資材は自分が所有することができ、換金することでお金を稼ぐこともできる。

俺含めあまり親から援助を受けられない生徒たちは、大体このダンジョンから得られる収入で生計をたてていた。


「……ルトの定位置はそこになったのかい?」


 ダンジョンへと向かいながら、俺の頭の上に居座ったままのルトをみてフランが怪訝な顔で尋ねる。


「あぁ、なんかほっとくと頭の方によじ登ってくるんだよ。まぁあんまり重くもないしそのままにしてこようかなと」

「ユウがいいならいいけど……」


 だいぶバランスを学習したのか、普通に歩いていても落っこちてこないし問題はないだろう。

ダンジョンで戦闘するときは流石にどうかとおもうけど。


「んで、今日は何層に行くんだ?」

「第三層かな、召喚獣との連携もまだままならないしあんまり深層に潜るのも危険だから」


 学園中央のダンジョン管理塔まできた俺たちは、受付に自分のワンドを渡しダンジョンの攻略実績を確認してもらう。

到達した階層、モンスターの討伐数、学園での成績まで記録されているので、それを元にここ管理塔では生徒にダンジョンへ入る許可を出す。

攻略実績によって行ける階層は決まっていて、生徒はその階までしか進むことはできない。


 俺たちは5階層までは許可が出るが、危険も伴うため学園の授業以外で5階層まで進むことは滅多にない。

とはいえ階層が深くなるほど手に入るお金も増えるので、生活が本当にまずいときは5階層までもぐってお金を稼いだりするのだが。


「実績の確認とダンジョンの入場許可を発行しました。気をつけていってらっしゃいませ」


 受付からワンドを返してもらい、ダンジョンへの入場許可が降りる。

俺とフランは管理塔の中にある魔導エレベーターへと足を進めた。


 学園内のダンジョンは最深部まで管理されていて、全ての階へ通じる魔導エレベーターと呼ばれる移動手段が通っている。

これをつかって生徒は一度攻略した層を飛ばして希望する層まで一気に行くことが可能だ。


 ワンドを魔導エレベーターの操作パネルにかざし、許可が下りた3階までエレベーターが移動を始める。

もう何度もダンジョンにはもぐっているが、いまだにこの瞬間は少し緊張するものだ。


「さてついたよ。3層とはいえ気を引き締めて」

「もちろんだ」


 フランの言葉に頷いて、魔導エレベーターから降りてダンジョン内へと足を踏み入れる。

ダンジョンの壁には魔導具の明りがほのかに灯され、薄暗くあたりを照らしていた。


「っと、早速きたよ」


 魔導エレベーター内は安全だが、そこから一歩でも出れば命のやり取りを行う危険地帯だ。

現に歩き始めてすぐに棍棒で武装したゴブリンと呼ばれる緑色をした人型のモンスターに遭遇する。


 魔法使いにとっては接近されると厄介な相手だが、逆に言えば接近されなければ足も速くないので大した脅威ではない。

フランも落ち着いた様子でワンドを操作し、ゴブリンの方へと向けた。


 ワンドの画面には魔法が実行されるまでの時間が円形のゲージとして表示され、発動までのタイミングを教えてくれる。

ワンドに表示されたゲージが溜まると同時に、準備が完了した証である魔法陣が画面の上に浮かび上がった。

フランがその魔法陣に触れると、まばゆい光がほとばしり炎の矢がこちらに近づいて生きていたゴブリンを貫く。


「まずは一匹、課題は後4匹だね」

「お見事、相変わらずフランの炎魔法はすごいな」


 俺も負けてられないと、あたりを見回してモンスターを探す。

おあつらえ向きにこちらにまだ気がついていないゴブリンが、背を向けて立っているのを見つけたので、魔法を用意して気がつかれないように近づいた。


「悪く思うなよ」


 俺の声に反応してゴブリンがこちらに振り向くがもう遅い。

ワンドに表示された魔法陣を親指で触り魔法を発動させ、放たれた電撃がゴブリンを瀕死の状態へ追いやった。


「よし、まだ生きてるな」


 あえて殺さないように手加減して魔法を放ったため、ゴブリンはまだ息がある。

しかし、電撃魔法を食らった余波で体がしびれているためか、ぴくぴくと痙攣しているだけで立つこともできない。


「さてルト、こいつ食えるか?」


 俺が頭上のルトに声をかけると、まるで応えるかのように頭から飛び降りゴブリンの頭に覆いかぶさった。

ぴくぴくと動いていたゴブリンも数秒すると一切動かなくなる。

どうやらルトに頭を消化されたようだ。

あっという間にルトはゴブリンを消化していき、骨すら残さず食べつくしてしまった。


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