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The ARK  作者: にゃらふぃ
第3章 可憐の英雄
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第10話「歌恋」

 星歴796年2月3日、シーナ、ポリカフポフ、マーベラス、リー、そしてアサカゼの五つの家系からひとりがアルビオニヒス皇国の天皇になる選挙が行われた。しかしダールクニヒス帝国との国交が悪化しアサカゼ家のツルが天皇となるよう政府が取り繕う。

 四大家は彼女が次期天皇となることを知っているが国民は何も知らない。

 そんな最中(さなか)、ダールクニヒス帝国が暗殺部隊を投入。指揮を務めるエルンストはダールクニヒス帝国の皇帝ハールンの弟だ。

 彼はスパイからの情報により天皇選挙が不正に仕組まれたものであると知る。そして暗殺を保留にし、ある作戦を思い付く。

 果たして鶴の運命や如何に……。


 星歴796年2月3日、AMT(アーク標準時)47時2分、全ての票が集計された。そしてAMT48時、つまり翌日の4日、午前0時にアルビオニヒス中へ公開される。


 だが、この公開となる票は政府が予め五大家と打ち合わせて決めたものだ。国民が投票した(まこと)の票ではない。


「午前0時だ」

「誰が天皇陛下になるのかしら」

 固唾を飲んで皆がラジオに聞き入る。無論彼らは政府が仕組んだ選挙とは知らない。


「新天皇は――」

 ラジオのパーソナリティーがわざとらしく間を伸ばす。待ち遠しく耳を傾ける国民。


「――673755票を獲得したアサカゼ家、ツル・アサカゼ様……に決定されました!」


  この瞬間、殆どの国民が歓喜する。圧勝の結果だ。だが喜びの束の間、パーソナリティーが神妙な面持ちで語り掛ける。


「皆さん、この結果に納得が行きましたでしょうか。ツルの素晴らしき圧勝は国民皆様の厚き信頼の証でしょう。しかし……」


 何が起きているか分からない。放送を聴いていたヴィクトリアらも把握できていなかった。


「なんだか嫌な予感がするけど……」

 カーサスの一言は的中する。


「もし政府がこの選挙を裏で不正に操作していたとしたら」


 この発言に国民のみならず彼女たちも動揺する。直ちに放送を取り止める様に求めたが遅かった。


「政府はツル・アサカゼへの当確を裏で糸を引いていたのです。これは明らかに不正行為! この行為は許せません、我々報道陣は真相を確かめるべく今、皇居に突撃取材を試みます!」


 次の瞬間だ。皇居中に爆音と震動が轟いた。


「敵襲です!」

 近衛兵の報告によると正門が爆弾によって爆破されたとのことだ。


「敵の数は?」

「それが……」

 急ぎ正門へ向かうが敵ではなく取材陣の姿しか見受けられなかった。


「まさか彼奴(きゃつ)らがやったのではあるまいな」

 近衛隊を仕切るタイラ隊長が爆破の目撃者に問い詰める。


「爆破されたあとは彼らしかいませんでした」

 ヴィクトリアは疑問に思ったことを投げ掛ける。


「正門の外に衛兵は立っていなかったのでしょうか」

 この問いに近衛兵は、

「正門前には立っていません。櫓からは見ていたのですが」

 杜撰な体制にヴィクトリアはタイラを見つめる。

 面目無く頭を下げ、近衛兵らに厳戒体制を発令する。しかし既に時は動いていた。


「伝令、裏門より侵入者2名。現在交戦中」

 突然空からやって来たという。それも翼があり、色は黒だったらしい。それ即ち、

「ダールクニヒス……鶴様が危ない」

 タイラは直ちに近衛兵らに部隊を召集、敵の討伐を伝令する。彼女もそれに加わる。


「現在裏門から柊殿(ひいらぎでん)へ戦線が移っている模様。当方の部隊、圧倒されています」

 伝令兵の息も絶え絶えの様子に敵から逃れるのも必死だと見える。


「夜だとダールクニヒスは強くなるって噂……本当かもな」

「そうだとすれば中々に手強いぜ」


 兵の中では噂話が絶えないが全くの誤解だろう。単に敵の夜襲が優れているだけだ。


 敵は裏門から柊殿へと移ったのち二手に別れた。内ひとりは一部の兵士と戦闘中、もうひとりは皇居内を逃げ回っていた。


「鶴さんを襲う気など無い気がする」

 彼女の言葉に彼が陽動だと口にする。その通りだった。裏門から侵入した敵とは別の敵が東門から侵入した。そこは鶴さんらがいる地点から最も近い位置だ。


「兵力が分散している。なんとか鶴さんを護る態勢に」

「分かっている。鶴様の護衛は直属のミナモーラが担当してる。彼女がいれば安心だ」


 だが敵は抜け道を使用して瞬く間に鶴のいる一室へ向かっていた。


「――なに!? あれは専用の通路……」

 タイラらが狼狽えている傍ら、ここに来てヴィクトリアが気付く。内密者(スパイ)の存在に。


「スパイ……だと。馬鹿な。誰がそんな愚かなことを」

 認めようとはしない。当たり前だ。皆一途に皇族への尊敬と敬意を持っているのだから。襲撃や暗殺など考えるわけがない。


「しかし実際に、奴らは知りもしない情報を掴んでいる。選挙の内部情報に皇居内の経路……」


 確かにその通りだ。誰かと内密な関係にあることは定かである。しかしそれがタイラや彼の部下だとは彼自身思いたくはない。


「味方にそのような奴はおらん。私は信じている」

「信じていても裏切られるのがオチだよ」

「えぇい、放浪者の分際でわが近衛兵を侮蔑するなど、貴様が一番怪しい」

 その理屈も分かる。が、彼女らは違うのだ。それは作者だけが知っている。


「ボクをどうする気?」

「一時拘束させてもらう。貴様のお仲間もだ」

 今まで共に行動していた近衛兵たちが彼女の周りを取り囲む。銃剣付き歩兵銃の矛先を彼女の首筋に向ける。

「はぁ……。これも奴らの狙いか。同士討ちで我々を攪乱するっていう」


 だが彼女はこれでも幾年を生きた神だ。簡単にやられはしない。彼女が(かかと)を小さく上げ、

「ボクに刃を向けた罪、気絶でお覚悟を」

 地面に向かって強めに下ろす。すると彼女の周囲に小さな旋風(つむじかぜ)が起こり一同はたじろぐ。


 その隙に体勢を低く、近衛兵らの脇腹に鉄拳を食らわせ気絶か一時的な戦意を喪失させる。退路が確保された段階で、この場から身を退く彼女にタイラが叫ぶ。

「ヴィクトリアが裏切者だ。追え、追え! 殺せ!」


 “殺せ”。彼女は酷く気分を損ねる。味方に殺されるとはなんたることか。

「ここまで用意周到ならば敵は傭兵でもない軍属かそれ以上……。いやもしかしたら内部関係者……」


 錯綜し混乱さえ生まれる。しかし今は自身のすべきことを最優先に実行する。

「とにかく鶴さんと凛を護らないと!」



「鶴様を護るのよ」

「円陣を組んで壁を作るの」

 侍女たちが鶴を囲むように護衛する。所謂肉の壁を築き上げるが仮に天井から来てしまえば意味のない護衛だ。


「上は俺が見てやる」

 カーサスは拳銃を構えて天井を見上げる。隣にいたワトソンは周囲を警戒する。


「誰か来る!」

 廊下を歩く足音が微かに聴こえた。ワトソンが懐から拳銃を抜くとセーフティロックを解除して両手で構える。


 銃口を先に廊下の方へ向けた瞬間だ。拳銃目掛けて飛び込んだ矢が当たり彼の手から銃が離れてしまった。


「おわっ」

 咄嗟に杖を取り出して防御魔法を唱えるが至近に男ふたりが詰め寄りアッパーを仕掛ける。


 カーサスが対抗して2発、男らに向かって発砲するも感付いたふたりは交わしていく。


 その時にはワトソンの防御魔法が縦5メートル、横5メートルほどに展開される。内外からはシールドが張ってあるかが分からないものの攻撃を受けた箇所が赤く点灯される。


「取り敢えずは平気だ」

「取り敢えずはな……」


 しかし今度は上から突き破ってきた男ひとりに苦戦する。


 カーサスが応戦するも格闘戦が不得手な彼は殴られ、蹴られ、首を絞められていた。


「うぎぐげげ……」

 必死に抵抗するも徐々に動きが鈍くなる。殺されてしまう前に助けなければならない。


 ワトソンは防御魔法を掛けながら腰に装備していたナイフをカーサスに投げ付ける。上手く彼の手に投げ込まれたナイフにより敵の首に致命傷を与えた。


 絞首状態から解放されたカーサスが床で息を整えているワトソンが近付いて防御魔法の内側まで引き摺った。


「敵さんはまだたくさんいるな」

 言わなくても分かる。天井裏にはまだまだ足跡がたくさん響いていた。


「へっ、こりゃあ護りきれないかもしれねぇな」


 その弱音に凛が食い付いた。

「腰抜け! 弱虫! お母さんを助けてみなさいよ!」

「凜……」


 やや泣きながら彼女は叫んでいた。それを見つめる母親もまた涙を滲ませる。


「やはり私たちのやり方が間違っていたのね」

 非は自分たちにあると認識し始める。しかしそれは敵にとっての思う壺だ。


「大丈夫。僕らがダメでもヴィクトリアが何とかしてくれる!」

 他力本願も良いところだが実際にもそうであるからしてカーサスは否定出来ない。


「あんまり人を頼んないでよ」


 その一声で周囲の人間は一斉に声のする方を向く。そこには先程まで愉悦に浸る敵の姿は無く、彼らは床で吐瀉物を撒き散らして静かに佇んでいた。


「ヴィクトリア!」

 カーサスの嬉しそうな声が響き渡る。ワトソンも同じ気持ちだが彼みたく表には出していない。


「敵は内部にいる可能性がある。油断しないように」

「待ってください!」

 女侍のひとりが声を荒らげる。他の人々も見つめている。


「私たちの中に裏切者がいると?」

「その可能性があると言っているまでです」

「それなら一番、あなたたちが怪しいわ。だって部外者じゃない!」


 また、である。タイラと同じように疑いの目を向けられる。だが目の付け所はよろしいか。

 彼女らが疑うのも無理はない。事実、赤の他人であり部外者であり、放浪者だからだ。

 しかし彼女らは紛うことなき潔白だ。それは作者が保証する。


「またか。タイラ隊長も同じことを言っていたっけ」

「仕方ないね。僕たちは同族じゃないから」

 ワトソンも分かってくれているようだが血の気の多いカーサスはそうではない。


「俺らが敵ならこんなに近付いてんだから()ろうと思えば直ぐにでもやれる」

 拳銃をツルの方へ向けた時だ。偶々部屋に入ってきた少女が悲鳴をあげた。


「お母様が殺される!」


 その声を聞いた周辺の近衛兵らが駆け付ける。その彼らに一部始終を説明する少女にワトソンが割って入る。


「彼は確かに銃口をツルさんに向けたけど、これは……ええと」


 言い訳のしようがない。カーサスもどうしたらよいか分からない。


「この方たちは味方です。私を護ってくれています」

 ツルの一声で解決出来れば苦労はしない。だが少女は否定する。


「言わされているのよ。早く助けて!」


 近衛兵らに泣き付く少女にツルが強く言う。


歌恋(カレン)! ヴィクトリアさんたちは仲間よ。助けてもらっていたじゃない」


 彼女はツルの大事な娘。リンの姉だ。正義感が強く母や妹を護る近衛兵になることを目指している。


「カレン!」

「お母様……」

 しかし思いは通じることなく、また動くことのない近衛兵らを押し退けて廊下を駆る。


「お母様バカーッ!」

「カレン!!!」


 追い掛けるツルとヴィクトリア。今無理な行動を取ると敵にとって有利に働いてしまう。


 が、遅かった。角を曲がったところでカレンは敵に捕まり人質としてツルを交換材料に要求する。


「カレン……」


 更新が遅くなってしまったことをお詫び申し上げます。また次の更新も遅くなることを伝えておきます。

 この一話を書き上げるだけで数ヶ月を要しております。矛盾点や呼び名などが存在している場合がございます。

 徐々に直して統一して行く次第であります。


 完全に復帰するまで暫くお待ちください。


 ここまでお読みいただき、誠にありがとうございました。


 良い御年をお迎えくださいませ。

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