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The ARK  作者: にゃらふぃ
第3章 可憐の英雄
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第1話「翼有りし者」

 惑星アーク。この星の歴史は古くビッグバンが起きた時代まで遡ることが出来る。だが、その話はまた今度にしよう。

 さて簡単にではあるが、この星の紹介をしておこう。

 この星の名前はアーク。アークレイト系のアーク星系に所属する10番目の惑星だ。なおアークレイト系から銀河系までは数百万光年ほど離れている。

 アークの自転周期は約48時間、公転周期は約403日。衛星はひとつのみ、大きさは地球の2倍以上である。

 多種多彩な生物、植物、人種などが存在している。危険もあるが様々な生物にとって楽園そのものだ。


 この星や宇宙はアークファミリアという神の一族によって創られた。アークは彼らにとって母なる星だ。

 その中で今、物語の主軸を担うひとりの神が旅をしている。長い旅だ。

 いつ終わるか……それは誰も知らない。



 時は星歴789年、ワインレッド色のポニーテール、右目に黒色の眼帯、左目が蒼色をした主人公ヴィクトリア・ギャラクシーが旅を初めてから間もなく800年になろうとしていた。

 彼女はアークファミリアと呼ばれる神族の10番目、風を司る神である。人類や植物、天候、星、宇宙を創造した神のひとりだ。

 そんな彼女は神が作りし汚点を消し去るべく旅を続けている。

 それは、神に反抗するゲスチオンヌという堕落民族だ。彼らは元々、アークファミリアが作った人間であり人類の祖先となるはずだった。

 しかし、セルヴィアという男が自らを神と名乗り、ゲスチオンヌを率いてアークファミリアと対立する。無論黙っていなかった彼らも真っ向から衝突し、双方に甚大な被害をもたらした。

 結果的にアークファミリア側が勝利を納め、ゲスチオンヌ側は神界から追放され下界即ち、のちの人間と同等の立場で来るべきを待ち望む形となる。

 そしてアークファミリアは新たなる人類を産み出し、教育、技術、文化など様々な知恵と知識を与え人間の歴史を作り出した。

 今、ヴィクトリアは人間が文明を築き上げる中、堕落した民族“ゲスチオンヌ”をこの世から抹殺すべくふたりの仲間とともに旅を続けるのであった……。


 星歴789年10月11日午前12時13分14秒15頃、ヴィクトリアとカーサス、ワトソンはギャランド独立共和国とアルビオニヒス皇国を繋ぐ広大な平原、ウモー平原を歩いていた。


 この平原の大きさは大体で16万平方キロメートルもある広野だ。彼らがこの地を通過するまで17日はかかるだろう。途中には“ラーックナーコソーノ”と呼ばれる大地の裂け目がある。深さ18キロにも及ぶ崖だ。それが1920キロも続いている。


 恐ろしくも神秘的な裂け目だ。とは言うものの、現地で暮らす人々にとってこの崖は奈落の底や地獄の谷と呼ばれ、古来から処刑場としてつかわれている。


 この話を聞いてしまえば神秘的な解釈も失せてしまおう。


 さて、この平原は谷以外にも危険が多いと云われている。


 第一に隠れる場所がないことだ。見渡す限り、草原が続いており稀に5メートル程度の岩がある。

 それでも隠れるには難しい。


 第二に巨大な翼龍がいるとの噂がある。大きさは全長約150メートル、翼を広げた状態で横幅50メートルあるという。噂に尾ひれが付いたかもやしれないが確実に何か巨大な生物がいる。


 そして第三に翼龍以外の翼を持つ人々が山賊として現れるという。

 多くの旅人がその犠牲となっている。現に彼女らが歩いている道の隅に剣や弓、人骨が彼方此方に散乱していた。


 山賊が出没する場所は決まっているようだ。襲いやすく逃げられにくい場所だ。このようなポイントに人骨が多く散乱していた。


 早くこの場から立ち去りと願う青年がいた。ヴィクトリアの後ろを歩く、白人のバーン・カーサスだ。

 彼は一番最初に彼女の下僕となった青年だ。


 今から約650年前に彼女と契約し、そして愛した男だ。しかし現在、片想いで終わっている様子。


 基本的に気が強く、好戦的なカーサスだが高所恐怖症であり幽霊などが苦手である。また不安感を避けたい一心でまともな行動を起こせないことも儘ある。だがヴィクトリアは彼を信頼し、長年右腕を任せている。例え彼が操られているとしても自らの命を犠牲にしてまで救うほどだ。


 とは言え、ふたりは(れっき)とした不老不死であり不死身だ。何度死んでも甦る、永遠に死ぬことが許されないのである。


 彼らの後ろにも同じ不死身の不老不死がいる。今から約315年前に仲間となったハンマー・ワトソンだ。彼は黒人であり差別を受け奴隷から反逆者に、そしてアークファミリアとも対立した男だ。しかしヴィクトリアたちによる尽力の末、過ちに気付きともに行動することで罪を償おうと努力する。


 彼の許されざる行為は決して消えることはない。だがそれでもふたりの支えがあって、今日(こんにち)まで生き抜くことが出来たのだ。


 さて、いよいよ冒険と事件が始まる。3人はウモー平原へ足を踏み入れたわけだが、引き返すことはもう出来ない。


「綺麗な大地だね」

「そうか? 俺には天国か地獄に見えるよ」

「センスのない男だね」

「うるさい」


 3人が他愛もない会話を交わす。しかしそれも暫くして沈黙となる。


 平原の気温は例年通りの摂氏20度と涼しいが行けども行けども青々とした草しか生えておらず代わり映えがない。精神的に可笑しくなりそうでもある。


「なぁ、あとどれくらいだ?」


 まだ10分と歩いていない。どのくらいと訊ねることは野暮でないか。そう思うワトソン。


「カーサスさ、いつも言ってることだけど我慢しなよ」

「そうだぞ。先は長いんだし、そうせかせかしなさんな」

「うるさいな。早く休みたいんだ」


 ギャランドを出発してから1日も経っていない。それこそ先ほど民宿を出て行ったばかりだ。


「耐えなよ。あと21日位は掛かるんだから」

「お前がもう少し黙って歩くのを早めればより短期間で到着するのだがな」


 ワトソンの追い討ちに唸るカーサス。それに対し微笑むヴィクトリアは、


「ボクたちには時間が有り余ってるんだから丁度良いじゃない」


 気さくに語る。ワトソンは賛同するが不満を示す彼は愚痴を言っている。


 彼のこうした文句は旅を始めると言い出す、最早オープニングイベントだ。これから先もずっと起こり得る行事のひとつだろう。



 数時間後、漸く愚痴を喋らなくなったかと思いきやお次は空腹感を撒き散らす。それに釣られてワトソンの腹の虫が鳴る。


 時刻は正午24時を過ぎたところだ。朝食は朝方の7時に取っただけなので腹が減るのも当然だろう。


 3人は出発時に買った缶詰めを開ける。中には小口大のパンとサラダ、塩が入っていた。


「これで41ガランドルは“ぼった”だわ」


 またカーサスが文句を垂れるがふたりも賛同した。


 41ガランドルはADs(アークドル)に換算すると約81ADsだ。一般的なサンドウィッチは5ADsであるからして、ぼったくりと言われてもしょうがない。


「さぞ美味いんだろうな」

「いや、そうでもないぞ」


 パンはパサパサしており喉が乾くほどだ。サラダは乾燥しておりドライフードのようだった。塩は塊で噛み砕く他ない。


「良く見るとミリメシって書いてる」


 缶のラベルには“ギャランド陸軍Dレーション”なる文字が書かれていた。つまり軍隊で食べられている携行食糧のようだ。


「ドライフードはいかんだろ」

「違うよ。多分水か何かを入れて食べるんだよ」


 ラベルの解説を読むヴィクトリア。カーサスは立腹しやけ食いした。


「まっ、こういうこともあるさ」


 3人は空腹を満たし先へ進む。



 太陽が傾き夕暮れを迎えては、やがて西へ沈む。夜を迎え1日が終わると思うとあっという間の出来事である。深夜の移動はどこにいても危険だ。例え町でもスリや暴行、強姦、殺人などが横行している。また明日に備えるべく体をやすめることも重要だ。


 夕食も缶詰だ。というより携行食糧は缶詰しかない。またパサパサとしたパンとパリパリしたサラダとボリボリ貪る塩の塊で腹を満たすと眠りについた。


 3時間置きの交代で見張りをする。これが彼らの身の守り方だ。


 原則、焚き火はいつでも消すことのできるよう砂を用意している。旅で水は貴重だ。荷物にもなることから真水しか持たない。使うには惜しい存在だ。


「さて……」


 3人が円陣を組み、拳に力を入れると勢い良く手前にだす。じゃんけんだ。


「――最初からっ!」


 ヴィクトリアの掛け声と共に勝敗は決する。“グー”を出したヴィクトリア。“チョキ”を出すワトソン、引き金を引く形を見せるカーサス。これはチョキのつもりだろうか。


 結局勝者はヴィクトリアで一抜けだ。次いでワトソン、カーサスという結果となった。後者から交代で見張りをするのだ。


 大体の毎日はこの手順で見張りを決めている。


「また俺か」

「これでお前は14047勝114510敗だな」


 ワトソンの記憶力には感服するが、

「なに言うとんのや! 14048勝114509敗だろ!」

 どちらが正しいか分からず仕舞いであった。いがみ合うふたりの間にヴィクトリアが入る。


「はいはい、じゃあよろしく。おやすみ」


 横に寝転び眠りに付く。ふたりも数秒間は睨み合っていたがワトソンから先に停戦を持ち掛け眠りに付いた。


「ちぇっ」


 ふたりを他所(よそ)に焚き火の前で体育座りをして薪を()べる。


 火が勢い良く燃えパチパチと音を立てる。静寂の中でその音だけが聞こえ、不気味にすら感じる。彼は静かなところが苦手だ。


 皆でわいわい馬鹿を言い合うことが性に合っている。だが今は寂しく燃え盛る炎を見ていることしか出来ない。



 それから数日が経ち大きく口を開く崖を目の当たりにした一同。その中でもカーサスは震えていた。


「た、(たけ)ぇ……」


 高所恐怖症でもある彼は底の見えない崖に怯えていた。吊り橋があろうものなら絶対に渡れないのであろう。


「越えないよ」

「ふぁへっ?」

「ボクらの目的地、アルビオニヒスは……」


 北西に指を差すヴィクトリア。


「――この渓谷に沿った先にあるんだ」


 眼前には緑一色に覆われた美しい大地が広がる。今まで歩いてきた道よりも一層青々としていた。


 草花の香りが鼻孔に入りくすぐったい。だがカーサスは不愉快だ。


 何故ならば、この大地を歩いていかねば目的地には辿り着けないからだ。


「タクシーないの?」

「今更何言ってるの」

「そんな気の聞いたもの、あるわけないじゃん。あまりにも平和すぎて日射病にでも掛かっちまったのかい」


 珍しくワトソンが辛辣な言葉を掛けるのでヴィクトリアはクスッと笑ってしまう。言われた方は頭に来てぶん殴りそうになったところだ。


 頭上を巨大な生物が通過する。いち早く気が付いたヴィクトリアはふたりの頭を鷲掴み地面へとひれ伏せる。また自身も低姿勢を取り、その生物が過ぎ去るのをじっと待つ。


「あれが噂の翼龍……“クロウドラゴン”」

「クロウドラゴン?」


 姿形は普通の翼が生えた(ドラゴン)だが体色は真っ黒だった。さらに高速で飛行することができ、旋回も素早い。鳴き声は『クァルクァル』とどちらかと言えばカラスに近いものだ。


「肉食……だよな?」

「そうだよ。仮に草食ならこの辺り一体は根刮ぎ食われてるよ」


 彼方へ飛び去っていくと安堵する一同。食われてしまえば、流石の不死身も復活が遅くなる。


「でも……なんだか、嫌な予感がするんだよね」


 クロウドラゴンが去った後を追うかのように3人は先を急ぐ。この先に待つのはアルビオニヒスで最大にして首都でもあるシラカンバだ。

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