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絶え損ないの人類共  作者: くまけん
第五章 世界大戦編
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第876話 「姉妹の愛」

「暗く……なっちゃったね」

「うん」

 山の夜を、ポポロとププロは洞窟の中で過ごした。小さな洞窟は風を凌ぐのにちょうどよかった。それでも寒く、二人は暖代わりにお互いの体を寄せた。

「ねぇ、ププロちゃん」

「どしたの? お姉ちゃん」

「お父ちゃんとお母ちゃんの事、嫌いになった?」

「……ううん」

 何か話していないとププロは不安になった。これからどうなるんだろうと。

 とは言え、いきなり山に捨てられた時よりかは気持ちが楽だった。隣に姉がいるだけで、大丈夫だと思える。

「帰れるのかな、ぼく達」

「……無理なんじゃないかな、多分」

 ププロの淡い期待に、ポポロは首を横に振った。

「なんで? 遠いから?」

「それもあるけど、二人で帰れたとしても居場所は無いんだ。お金が無いし……お父ちゃんもお母ちゃんも、きっと居心地が悪いよ。本当は、ププロちゃんを捨てたくなんてなかったんだもん」

 ポポロは両親の心情を理解していた。今頃も、両親は泣いているだろう。ププロと捨ててしまった罪悪感と、ポポロまでいなくなってしまった悲しみで。二人が家に帰れば、間違いなく両親は喜ぶだろう。だが同時に、途轍も無い罪の意識に潰されてしまう。娘を捨てておいて、どんな顔して接すればいいのだろうと。

 だから、もう無理なのだ。両親はププロと完全に決別した。後悔こそあれど、「やり直そう」なんて口が裂けても言えない。ププロに帰る場所は無い。

「……そっか」

 分かっていた事だった。これから一人で生きていかねばならない。……いや、一人ではなかった。

「でもポポロお姉ちゃんは、ぼくと一緒にいてくれるよね?」

「もちろん! ププロちゃんをもう一人になんてしないよ」

 二人は抱き合った。ポポロは覚悟を持ってここに来たのだ。たとえ二度と両親と会えなくなったとしても、愛する妹と離れ離れにはなりたくない。これからは二人で生きていくのだと。

「ありがとう。お姉ちゃん……大好き」

 ププロも、姉さえいれば寂しさが吹き飛んだ。これまでも一緒だったし、これからも一緒なのだ。

 ポポロとププロは仲が良かった。姉妹の絆というよりは、もっと濃密な関係ではあったが。


「ね。ププロちゃん。ちゅーしよっか」

 ポポロは妹の顔を見て囁いた。ププロは、ぽかんとした顔で聞き返す。

「ちゅー? お父ちゃんとお母ちゃんがたまにしてるやつ?」

「そーだよ。大好きな人とするんだよ」

「ほっぺた?」

「ううん」

 そう言って、ポポロはププロの唇を奪った。

 ずっと、ずっと、離さなかった。ププロは姉を受け入れ、この甘美な時間を堪能する。いきなりで少し驚きはしたけども、大好きなお姉ちゃんが目の前にいるのが嬉しくてたまらなかった。

 唇を離した時、互いの吐息が触れた。じわじわと照れてきたけど、同時に物足りなさも感じる。

「もっかい」

 今度はププロの方からキスをした。お互いを貪るように求める。舌と肢体を絡ませ、姉妹はより濃厚に繋がった。

 もうやめられない。不安に苛まれた反動から、二人はいつも以上に愛し合った。もっと安心したい。愛する人が側にいる感動を、さらに深く刻みたい。

 だから今夜は、ブレーキが効かなかった。

「ねぇ、ププロちゃん。服、脱いで」

 ポポロは妹の上着のボタンに手をかけた。

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