表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
絶え損ないの人類共  作者: くまけん
第一章 チェルド大陸編
73/1030

第67話 「不穏な殺意の感覚」

 研究所の内部は予想通り機械だらけだった。白っぽい廊下を歩いていると、研究員がデグルヌに挨拶をした。

「デグルヌ副所長、お疲れ様です。例の資料はデスクに置いておきました」

 副所長? デグルヌの役職は室長だったはずだが。出世したのか。

 前の副所長であるトーマス・ホワイトは、ニトラ教のスパイだった。トーマスは俺達によって捕縛されたが、その後何者かに殺害された。彼の後釜に座ったのが、デグルヌという訳か。

「うん、ありがとう」

 デグルヌが返事をした後、俺は些細な疑問をぶつけた。

「例の資料とは?」

「今やってる研究のデータですよ。詳しくは言えませんが、すっごい研究なのは確かです」

 もしかして、ブラッドドラゴンに関係しているのだろうか。

「そうそう。例の殺人事件のことですがね。結局犯人は見つかりませんでした。マジマジ所長からもストップがかかったので、捜査は取り止めになったんですよ」

 デグルヌが言う殺人事件というのは、ニトラ教団員が殺害された件のことだ。

 少し目を離した隙に9人もの人間が殺されるという、不可解な事件だった。

「そうだったんですか」

「はい。そして今、我々は中央都市の施設を借りて、研究に勤しんでます。マジマジ所長も熱心に取り組んでおられますよ」

 噂をすれば、マジマジ所長が前方から歩いてきた。眼鏡をかけた、白髪で小柄な老人。ルクトシン第一バイオ研究所所長の、マジマジ・オブズアブだ。

 マジマジは俺達を見ると、あからさまに不機嫌そうになった。

「むむっ。アイズではないか。何故貴様らがここに。儂は呼んどらんぞ」

「僕がお招きしたんですよ。なんたって、彼らは恩人ではありませんか」

 デグルヌが言うと、マジマジは「まあいい。邪魔はするでないぞ」と言って去っていった。相変わらず人当たりの悪い老人だ。


 デグルヌは、『展示室』と書かれた部屋に俺達を連れていった。

「大したもてなしは出来ませんが、せめてこの展示を見ていって下さい。中央都市自慢の最新技術が見れますよ」

 展示室には、見たことのない物体が多く設置してあった。

 自動で動く椅子、喋る人形、巨大な調理機などだ。

「スゲー! どんな仕組みなんだこれ!」

 エリックは目を輝かせて展示の数々を観察していた。中央都市に来てからのエリックは、いつもワクワクしているな。

「僕達は本来、生物の研究をしてますが、その副産物を利用した技術開発も行っているんですよ。例えばこの椅子は、虫の動きを再現して作られました」

 デグルヌの近くにある椅子は、六本の足が付いていた。

「それよりデグルヌさん。キューに会わせてくれませんか?」

 ユリーナは手を挙げて、デグルヌにお願いした。

 ユリーナはブラッドドラゴンのキューの名付け親だ。ユリーナはキューのことを気に入っていたし、会いたくなったのだろう。

「うーん、すみません。研究の途中なので、キューには会えないんですよ」

 やはり、ブラッドドラゴンの研究だったか。

「そうですか……残念です……」

 ユリーナは悲しそうに俯いた。


 暫く展示室に滞在した後、俺達は研究所を発った。

「今日はありがとうございました、デグルヌさん」

「いえいえ。またいらして下さい」

 デグルヌに礼を言い、俺達は街の雑踏に紛れていく。


 しかし……何だろう、この寒気は。

 研究所の奥から、おぞましい気配を感じた。

 あれは……悪意? 狂気?

 違う。殺意だ。

 野性的で本能的……それでいて既視感のある殺意が、俺の背中を撫でていた。

 とてつもなく嫌な予感がする。

 俺の考えすぎだといいんだが……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ