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絶え損ないの人類共  作者: くまけん
第一章 チェルド大陸編
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第49話 「愛を伝えてみせろよ!」

 俺達が公園に辿り着くと、カインズがベンチに座っていた。隣には、何故か誘拐容疑者のテリーも座っている。二人は何やら喋っていた。

「カインズ。これはどういう状況だ?」

「あ、クロム隊長。どうやら彼は誘拐犯じゃないようですよ。そもそも、これは誘拐事件ですらなかったんです」

 テリーがベンチから立ち上がり、俺達に会釈した。彼の腕に包まれたリオン君が、無邪気に微笑んでいる。

「詳しくは、テリーさん本人から話してもらいましょう」

 テリーは、事件の真相について語り始めた。


 テリー・クロシア。28歳。彼はソフィーと交際していて、いつしかソフィーはテリーの子を妊娠した。テリーはソフィーに婚約し、そしてソフィーが他の男と交わることを禁じた。だが、ソフィーはやめなかった。自分を蔑ろにして乱交を続けるソフィーに嫌気が差し、リオン君を連れて屋敷を出ていった。

 テリーの話を要約すると、こんなところか。彼の口調は怒りと悲しみに溢れていて、感情的だった。

「ソフィーは僕のことを種馬としか見てなかったんだ。僕はこんなにもソフィーを愛していたのに……!」

 ソフィーがそんな人だったとはな。性欲が高いタイプには見えなかったが、人は見かけに依らないものだ。

 テリーはリオン君の父親だと言った。これで写真の件も説明がつく。婚約者の写真なら、所持していても不自然じゃない。

 実の父親が連れ去ったのなら、誘拐とは言わないだろう。そんなことはソフィーも理解しているはず。何故、「息子が誘拐された」などと言って俺達を呼んだのか。ソフィーがテリーに会えば解決しそうな話に思えるが。

「ソフィーさんはあなたのことを一切話しませんでしたが」

「そりゃ、『父親が息子を連れていった』なんて言ってもアイズは動かないでしょう? ソフィーは嘘を吐いたんです。あなた達を使って、リオンを取り戻すために」

「あなたに会えばいいのに、何故ソフィーさんはあなたに会いたがらないのですか?」

「さあ。子供の世話で手一杯なんじゃないですか?」

 テリーはぞんざいに答えた。


 テリーの言い分が正しいと仮定すると、俺達はどうするべきか。

「テリーさん、あなたはソフィーさんを愛してるんですよね。だったら、会いに行けばいいじゃないですか」

 エリックがテリーの前に出て、言った。

「会いに行って、和解して、そんで一緒に暮らせばいいじゃないですか。婚約したんでしょ」

「そんな簡単な話じゃないんですよ」

「ソフィーさんだってテリーさんに会いたいはずですよ」

「いや……でも……」

「『でも』じゃねぇ! 愛があるなら貫きやがれ! 好きな女に思いをぶつけてみろよ! 愛が返ってくるかなんて、二の次だ!」

 体面的な敬語をかなぐり捨て、エリックは叫びをあげた。テリーが驚いたように背を反らす。

「好きな女抱いて、子供まで出来て、幸せヤローのくせにグダグダ言ってんじゃねーよ! 何が『こんなにも愛していたのに』だ! だったら愛を行動で証明してみせろよ! 分かったか!」

 エリックは捲し立てた。心を吐き出すように。

「あの……ええっと……」

 テリーは口籠った後、ハッキリと答えた。

「分かりました。僕、話をつけてきます」

 決意を秘めた目をしていた。

 リオン君を抱えて、テリーが歩みを進めた。


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