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絶え損ないの人類共  作者: くまけん
第一章 チェルド大陸編
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第16話 「新任務」

 アジトのリビングに、クロム隊のメンバーが集められた。

 俺、エリック、カインズ、ミミ、ユリーナの5人が席に着いていて、ロマノが俺たちを見渡せる位置に立っていた。

 エリックとカインズとミミは、呼び出したらすぐ来てくれたが、ファティオはちょっと遅れるとのことだ。彼が来れば全員集合となる。

「君がユリーナちゃん? かわいい女の子ですねー」

 ロマノはユリーナを見て、言った。ユリーナは嬉しそうに「えへへー」と言ってニヤけている。

「ロマノ団長って綺麗なお姉さんだったんですね。『ロマノ』って、男性名だから、てっきり男の人かと思いましたよ」

 ユリーナには、ロマノのことはあらかじめ伝えていたが、俺の説明が下手だったのだろう。ロマノを男だと勘違いしたらしい。

 俺とロマノは、よく性別を間違えられるからな。主に名前のせいで。(『クロム』という名前も男性名だ。一部の地域を除けば、だが。)まあ、俺もロマノも、男だと思われることを気にしていない。

 見た目が中性的な俺と違って、ロマノは紛うことなき女の顔だ。金色のショートヘアが特徴の、美人である。三十路とは思えない若々しさも持っている。口調も、まるで若者のようだ。だが、派手さは一切感じない。典型的な美人の顔立ち。言い換えれば、どこにでもいるような風貌だ。シンプルなデザインの服装と相まって、地味なイメージだと言える。


「ファティオ君はまだ来ないの?」

 ロマノは副隊長の不在を気にしているようだ。彼が到着してから話を始める気だろう。

「すぐ行く、と言ってた。もう少し待ってろ」

「クロムちゃんはいつになったら『ロマノ団長』って呼んでくれるのー?」

 ロマノはやや不機嫌そうに顔をしかめた。ロマノは一応俺の上司であり、護身術の師匠でもあるのだが、あいつに対して敬語を使う気は無い。ロマノのことは尊敬してるし、恩もある。でも、敬語を使うのは何故か違和感がある。親しい間柄だからなのか。昔からため口で話していたからなのか。


「ファティオ・ハージ、ただいま参りました!」

 アジトの玄関のドアが開き、ファティオが到着を告げた。

 ファティオは急いでリビングに赴き、席に着いた。

 ファティオ・ハージは、ノンフィクション小説を主に書く小説家である。世の中の犯罪や政治的不正などの実態を調査し、本にしている。世間に真実を伝えることで、世の中を良くしていこうとしているのだ。一種のジャーナリストと言える。

 ファティオは、19才にして、2児のパパだ。奥さんと一緒に、4人家族で暮らしている。最近は家庭のことで忙しいから、アイズの仕事を休む日も多い。

 子供思いの優しい男だ。我が隊の副隊長は立派である。


「全員集まったね。じゃあ、本題に入るよー」

 ロマノは一枚の紙をテーブルに置いた。

 『ルクトシン第一バイオ研究所』と、大きな文字で書かれている。

「新しい任務だよ。この研究所にいる、ある生き物を護衛する仕事だ。期間は一週間。すっごく重要な任務だから、クロム隊全員で出動して欲しい」

 アイズの最高責任者が、わざわざ口頭で伝えに来る程の『重要な任務』。

 俺は思わず息を飲んだ。

「君達の能力を信じてない訳じゃないけど、もし、君達じゃ力不足だとクライアントからお達しがあったら、他の実働部隊も参加することになる」

 並大抵の任務ではないことは、ロマノの声色から簡単に読み取れた。

「『ある生き物』とは何でしょうか?」

 カインズの口から質問が飛び出した。

 ロマノはしれっと返答した。今の時代には存在しないはずの生物の名を、平然と口にした。

「ドラゴンだよ」

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