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ニイタカヤマノボレ
昭和16年12月8日未明、日本海軍航空母艦飛龍飛行甲板上はエンジンの唸りを上げる多くの飛行機と、黙々と作業を進めながらも興奮を隠しきれない多くの乗組員で覆い尽くされていた。
その中に一人、まだ二十歳ほどの若い搭乗員が愛機の零戦21型のそばにいた。
「おい、大石!」
上官である須田一飛曹に声をかけられ、名を呼ばれた大石翔一飛兵は「はい!」と敬礼をかえす。
「はは、そう硬くならんでも・・・」
「いえ、上官ですので」
相変わらず硬いまま、翔は答える。
「しかし、いよいよおっぱじめるのか、山本長官も、思い切ったもんだな。」
須田が、少し表情を硬くする。
「そうですね」
翔もこたえる。
「しかし、行けと言われれば行くまでです」
「そうだな・・・」
飛行甲板に出撃用意の指令が下る。
「よし行くか!」
数時間後、薄暗い闇の中を、真珠湾、そして泥沼の大東亜戦争へと彼らは飛び立っていった…