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#3 ビンタされないと駄目ですか?

 朝明は状況を確認する。今、自分は倒れていると、目の前には下着姿、小麦色のブラジャーとパンツの金髪美少女がいると。

 ブロンド色の長い髪を左肩の方にひとまとめにしている少女は、蒼い瞳をこちらに向けている。頬は赤くなっていて、自分の姿すら忘れているのだろう。

「だ、だれ!?」

 やけに品格のある立ち振る舞いであった。慌てているときほど、本性が出やすいのだが、目の前にいる少女は堂々と立ちながら、慌てている。もちろん、下着を隠そうという仕草すらない。

「いったい何者!?!?」

 取り乱している。逆に、朝明は冷静すぎるほど冷静に、この状況を飲み込む。

「あのー、下着すがた……」

「はっ!? へ、へんたい!!!」

「言ってあげただけで、変態って!? 失礼な!」

 少女は近くにあるシーツで姿を隠して、ベッドの上に座り込んでしまう。

 朝明は周りの状況を見てみると、ベッドにソファー、机、その他もろもろ、生活感たっぷりの部屋にいることを確認した。


 目の前には、ベッドに倒れこんでいる少女が下着姿をシーツで隠しているため、余計になまめかしく見える。

「ど、どうやって入り込んだ! こここの盗人ぬすっと!」

 少女は気丈に振る舞う。若干震えているのはともかく大声をあげた。

「いや、あの、その」

 言葉が出てこない。突っ込みだけは綺麗に言えたのにもかかわらず、理由が思いつかない。どれも言い訳になってしまう。

「その前に! 羽衣! この状況を説明してくれ」

 羽衣に事情を説明してもらうしか他思いつかなかった。

「はい、だから、さっき言ったように、出てくる場所を間違えました」

「それにし……」


 初めて気づく羽衣の姿に。

「おまえ、なんでパンツしか穿いてないんだ!」


 純白のパンツが目に飛び込んだ。あえて、その上は見ない。ちらっと見てしまった時には、もういろいろと想像通りの慎ましい胸などの光景が目に入りかけたからだ。

 そのため、よくある光補正をかけて見なかったことにした。

「お約束?」

「そんなお約束はいりません!」

 突っ込みだけは鋭く言える朝明。その他のことになると、急にたじろいでしまう。

「お、おんなもつ、つれこんでででででで……」

 少女の頭から湯気が立ちそうなほど混乱している。

 それもそのはず、突如として男が現れ、自分の下着姿を見られ、しまいには小さな女の子までもが登場している。


「羽衣は、もっと恥ずかしいと感じろ」

 少女は放置することにして、矛先を羽衣へと向けた。

 ただのへたれである。

「ですが、トモアキの知識の中には、このような姿の女性や、裸の女性が多かったですよ?」

「だから、俺の知識を使うな! 間違ってるから、いろいろと道を踏み外しているから、なんだかごめんなさい!」

 膝が折れて立っていられなくなった。自分の恥ずかしい知識を、全て羽衣に公開しているせいだ。

「とりあえず、上着を着て」

 朝明が着ていた上着を貸す。服は、逃げていたときと同じ格好をしていた。

「ありがとうございます」

 羽衣は、朝明の知識から得た上着もといジャンバーの着方を実践して、チャックを閉めていく。背丈は小さいので、十分下まで隠せれる大きさとなっている。

 ただし、ふとももが見え、鎖骨があらわになっている。袖は長く、手が隠れていた。

 もうどこかのゲームに出てきそうな少女であった。

 ちなみに、ベッドの上で錯乱状態にある金髪美少女の胸は、そこそこあったと朝明は冷静に観察していたのだ。


「あの人は放置でいいのですか?」

 羽衣は錯乱している少女を指さす。

「いや、今のうちに逃げるか」

 朝明は、ようやく逃げるという選択肢を思いつく。

「逃げるぞ、羽衣」

 広い部屋の中、ベッドがある反対側に扉があったので、そこが出入り口と勝手に判断して、羽衣の手を引きながら走る。


 そして扉を開けると、

「ノエルちゃん。叫び声がしたけどだいじょうぶ?」

 暖かいのんびりした女性の声が聞こえた。

「うわ!」

「きゃ!」

 ぶつかってしまった。倒れないように、ぶつかった人を抱きかかえて、そのまま抱きしめてしまった。

「ん?」

 よくあるパターンである。抱きしめた体はやわらかい。胸元あたりには、さらに柔らかいものが当たっている。鼻の近くには亜麻色の髪が当たり、いい匂いがする。

「ご、ごめんなさい!」

「えっ? えっ?」

 女性から離れる。一歩離れてみると、これはまた顔を真っ赤にした女性がいた。年齢は、朝明ぐらいと変わらないだろう。亜麻色の髪が肩にかかっている人だった。

「トモアキ、逃げないのですか?」

 朝明が振り返ると羽衣がいた。また視線を亜麻色の少女に戻す。いまだ固まったままだ。

「あれ、ここはノエルちゃんの部屋で、でもでも、男の人が抱きついてきて、でも、やっぱりノエルちゃんの部屋で……」

 同じことを何度もつぶやく。朝明も動けないでいた。

「フローラに何をする!!」

 ここで颯爽さっそうと現れるのは、さきほど放心していた金髪少女のノエルだった。

「フローラに手を出すやからは許さない」

 とかっこよくフローラの前に立つノエル。

「いや、だから、下着姿はだな」

 凛々しくてフローラを守る騎士のごとく登場はしたが、恰好は下着姿である。

「この変態! みるな!!」

 素早く手が動く。このあとの結果が予想出来ていても、ツッコミをいれたくなった。

「いや、だから、そっちが見せてる!」

「関係ない!」

「ぼ、ぼうりょくはんたい!」


 ビンタが来るかと思ったのだが、

「て、ラリアットかよ!」

 ノエルの腕が朝明の胸元に当たり、飛ばされていくのであった。



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