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蘭の君子

作者: 桃華

少女は仰せになった。

「私は、この環境が悔しい。私はこうして何も不自由することなく暮らしているのに、貧しい子供や老人は日々弱って行く。父が治めるこの領地の民である限り、それはあってはならない。父や兄の手が届かない所にこそ、私のやるべきことがあるのだ」



〈『侍女の日記』アンナ・グラッティ著〉より一部抜粋


***



まずい。非常に、まずいことになった。

顔に笑みを張りつけたまま、私は冷や汗をかきながら父のいる執務室を出て自室への道を歩いた。何がまずいかって?そんなの決まってる。そう、結婚だ。

おっと、失礼。私の情報を皆様には言っていなかった気がする。私の名前はユティ。可もなく不可もない、その辺にいる貴族の娘である。ただし、正妻の娘ではあるが、父にとっては16番目の子供で、娘の数で言えば8番目。お妾が10人くらいいるらしい。

貴族といえば政略結婚が当たり前と思われるだろうが、あながち間違いじゃない。というか「恋愛婚?あぁ、小説でよく見るわ」が貴族の――主に女性の意見である。

さて、ここで話を元に戻そう。何がまずいのか。それは私の出自にある。あっ、いや、貴族の娘なのは変わらない。ただ、ねぇ…。非常に厄介なのだ、私は。

どうか暇なときにでも、聞いてもらえないだろうか。



あなたは転生を信じる?私は信じない。いや、信じたくない。転生モノは好きだ。私のお気に入りフォルダには転生モノか乙ゲーモノしかないくらい好きだ。でも私は子供はまだしも、ネコ(他の動物でも可)を助けて転生しちゃった☆を読みながら「ネコを助ける?無いわ~。器物破損から過失致死に罪が重くなった運転手かわいそうに…」とか「神様の手違い?無いわ~」と思うぐらいには現実と二次元の違いは理解していた…と、思う。

ここまできたら、私の言いたいことは分かってもらえると信じてる。いや、読み始めた時からわかっていたはず。

そう。私―――――とうとう、巷で流行りの転生トリップしました…っ。(泣)




私が転生した明確な理由はない。小説のように聖女や勇者、はたまた王妃のように何かしらの理由があって召喚されてないし、ここがとあるゲームの世界だった、なんてこともない。何か大きな力を秘めていたことではないのは最初の何年かで気づいている。

ではいったい、何なのか。ホントーにわからない。最初はね、色々と期待しましたとも。実はチートでも持っているのかとドキドキした。でも、何もない。小説であった「前世の知識を使って生活環境UP!!」もないし「王妃になんて、なりたくなかったのに~」なんていうウハウハ展開もなかった。前世の知識云々に至ってはよく考えてほしい。ネットで調べればすぐに何でも出てくるこの時代に、専門職でもないのに知識なんぞがあるわけないのだ。勉強をしてこなかった自分を悔やんでもしかたない。

色々と大変だったのよ。貴族のマナーとかマナーとかマナーとか。


それはさておき。


結婚自体はね、いいの。だって、前世で子供いたし。49歳だったし。孫も3人いたし。(……娘が19歳で双子産んで、年子でもう1人産んだのよ!)

でもね、相手によると思わない?想像してみてほしい。バーコード頭がツルリと光り、某名探偵に出てくる博士のようにボデーンと出たお腹。極めつけは近寄るとほのかにする鼻が曲がるような臭い(たぶん、夏だから、汗が半端なかったのね。それに香水のドきつい臭いも混ざって、最悪)。そんな人が私の結婚相手。やばい、死ねる。でも、爵位はいいの。うちは伯爵位は賜っていても、下の中の家格の娘だけど、向こうは公爵位にいるんですもの。5回の離婚歴があって、スッゴい変態だっていう噂があったって結婚できるわ。でも私は遠慮したい。

あのね。私は正妻の唯一の娘なの。母様は侯爵家の娘だったから、身分的には王太子妃にだってなれるのよ。侯爵家の姫達には敵わないけど。


だからね、私。結婚しなくても生きていけるように、働くことにしました。

「貴族の娘が働くなんて…」と親に泣かれても関係ない。あんな脂ギッシュなのと結婚するくらいなら、働く。幸いにも前世では教員免許持ってたし。この国の学力、低いし。よし、イケる。




そうして彼女はギッシュとの結婚を免れ(異母姉が嫁いだ。なんか、好みだったらしい)、私は七つ年上の侯爵と結婚し、三男二女に恵まれた。



そしていつからか、どこにでもある貴族の領地であったそこは国で一番の学都となる。

それに最も尽力したとされる者の名は、どの歴史書にもたった数行しか残されていない。妻を守るために領主であった夫が情報を規制したからだとも、学舎の情報が流出することを恐れた国王の命令で焼きつくされたとも言われている。



ユーランに蘭の君子あり。名をユティといい、この国の学力向上に著しく貢献した女性である――――。

この度は読んで下さりありがとうございました。

最後になって、ようやくユティの領地の名前が出てくるという、何とも…。な展開でしたが、いかがでしたでしょうか?

続きであったり、夫の名前であったり、色々と設定は考えつくんですが…。それが文にはなりません(・・;)書くのは難しいですね。


もし反応があれば連載で投稿しようかなぁ、とか考えてます。よければ感想、ご意見、いただけると泣いて喜びます(笑)

ただ、初投稿なので、優しーーーく、オブラートに包んでくださいな

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転生 一人称 名前ない ご都合主義
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