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それはいつかの君のために

ロイとレンティが距離をおくことになった理由の話。


それと、ロイがはじめましてと、告げるシーン。

本編中では、夢の中での回想シーンなので、実際は、こんな感じでしたというお話。


「デュエル。今年新しく軍に入る者の中に、ルミエハの長女もいるらしいが、お前はあまり関わるな」

「なんで? 父さんはいつでもルミエハとの確執を無くしたいって言ってたじゃないか」

 やっと、会えると思っていたのだ。

 黒い髪に深い緑色の瞳をもつ少女に。

 あの日の誓いを、果たせたかどうか、お互いに確かめるために、

「そうだ。俺はルミエハとオブスキィトの今日に至るまでの確執をなくしたい。だからこそ、お前がルミエハとの接点を増やせば増やすほど、ルミエハにオブスキィトへの攻撃のチャンスを与えることになる」

 アベルの言葉に、ロイは言葉を失う。

 確かに、今のルミエハ家当主、つまりレンティの母親は、ずいぶんと反オブスキィト精神が強いらしい。

 レンティがロイとかかわっているとなれば、それをいいがかりにして、何らかの手出しはしてくるだろう。

「そうなれば、こちらは応戦せざるを得ない。どちらかが勝てば、どちらかは倒れる。俺はオブスキィトを守るが、ルミエハをつぶしたくもない」

 これが現状なのだ。

 今代では、オブスキィトという身内の欲目がなくとも、ルミエハよりオブスキィトのほうが力がある。

「つまり、最初から関わらず、ルミエハに攻撃の機会を与えなければ、そして、確執を徐々に取り除ければ、っていうことか」

「そういうことだ。この代で、両家に問題が起これば、明らかにオブスキィト家の方が強い。信頼度が違う。それは、俺にとっては誇りでもあるけどな。ただ、だからといって力で強引にねじ伏せたいわけではない」

 アベルにはアベルの理想がある。

 ロイに、それをひっかきまわされたくないという父の思いもわかる。

 何より、ルミエハがつぶれるのは、ロイだって困るのだ。

 ルミエハの崩壊は、すなわちレンティの生家の崩壊なのだ。

「だから、俺がそれを実現するまで、待ってほしい」

「……わかった」

 そういいながらロイは考える。

 待つのではなく、自分が成し遂げようと。










 アベルと話していた時には、わかっていたはずだった。

 頭では、理解していたのだ。

 レンティと距離を置くことは、ほかならぬレンティのためだと。

 しかし、実際に目の前に彼女がいて、その瞳が、変わらない深い緑色をしている。

 その瞳には、強い意志があって、ロイはやはりまだおいていかれているような気分だった。距離が、まだまだあって、遠くに、ずっと前に、レンティがいるような気分だった。

 

「はじめまして。デュエル・オブスキィトです。デュエルって呼んでほしい」

 

 愛想よく、それでいて、さも初めて会ったかのように。


 その言葉が、重い。

 

 心臓が激しく脈打つ。

 視線は、どうしても、レンティの表情をうかがっていた。

 一瞬、彼女の瞳が揺れを見せた。

 

 しかし、次の瞬間には、彼女は強い意志を持った深緑の瞳で、こちらを見ていた。

 とても、きれいだった。 


「はじめまして。オブスキィトの人ね?ルフレ・ルミエハと言います。私もルフレでいいわ」


 彼女はロイの決断をただ、静かに受け入れた。

 まるで、本当に何もなかったかのようだ。




 しかし、それでも、あの日々を証明するものはある。



 互いに名乗らない、ミドルネーム。

 それは、あの日を大切にしまいこんでいる証。

 

 彼女の首には誓いの銀細工が光る。



 忘れられていない。

 

 それだけが、唯一の、救いだった。

 




ちょっと、しっとり?


本当は本編で入れたかったんですけど

話数が多いのでカットしたんです。

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