過去の傷
「「ただいま」」
二人が家に帰ったのは6時より少し前のことだった。
和人は汗を流すためシャワーを浴びに行った。
和人はシャワーを浴びながら自分の体を見ていた。
と同時に、ある特定の人物のことを思い出していた。
(龍平・・・)
その間真奈は母さんと話していた。
「母さん、和人は何をしていたの?」
「あら、見てこなっかたの?
剣の稽古だけど」
稽古、ね。
あれを稽古と呼ぶにはやさしいような気がした。
「あの老人は一体?」
「ああ、先生のこと?
あの人は私の叔父よ。
名前は東雲士郎」
「東雲士郎?」
東雲士郎について少し触れておこう。
彼は別名『剣神』と呼ばれるほどの剣の使い手だ。
かつてこの街に盗賊団が現れたとき、彼は一人で相手をし、見事捕まえることに成功した。
今は道場を開き、未来の剣士を育てている。
「和人も道場に通っているの?」
「いや、あの子だけ特別な稽古を受けていろのよ
あまりにも他の子より強いもんだから」
そんな話をしていると和人がシャワーを浴びて戻ってきた。
「何の話をしてたんだ?」
「和人のことよ」
母さんはそう言って台所から二つ、弁当を持ってきた。
それを和人と真奈に渡した。
「ほら、そろそろ時間よ」
「あ、本当だな」
「早く着替えないと」
二人は一旦部屋へ、制服に着替えるために戻った。
1分後、真奈は先に着替え終わり一階へ降りようとした時だった。
和人の部屋のドアが少し開いていてた。
まだ着替えてるのかな?と思った。
だから彼女は無視して下に降りようとした。
だが見えてしまった。
見てはいけないようなものを見てしまった。
それは普通の中学生にあるはずもないものだった。
だってそうだろう?
普通、全身に無数の切り傷のある中学生などいないだろう?
「・・・!!」
真奈は息を飲んだ。
その音に気づいたのか和人がこちらを向いた。
「真奈?」
最初は驚いていた和人もすぐに状況を理解し、苦い顔をした。
「・・・見ちゃったか」
「ごめん」
「謝ることはないよ」
和人は着替えながら真奈に聞いた。
「気になるか?」
真奈は答えるのをためらったがそれも数秒だった。
「・・・うん」
「そっか」
和人は時間を見た。
時刻は6時45分。
まだ時間はある。
和人は真奈を部屋の中へ招き入れた。
真奈は机の椅子に座り、和人はベッドに腰掛けた。
「じゃあ教えるよ、この傷のこと、
そして、狭山家のことを」
次回は回想編です
和人と狭山家との関係が次々と明らかに・・・?
では次回にまた会いましょう