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新たな始まり

衝撃のホームルームのあと、和人たちは当然授業を受けていた。

しかし、明らかにいつもと違うことがあった。

それは・・・


「ごめんね?まだ教科書もらってなくて」

「ああ、別にいいよ・・・」


隣に真奈がいることだ。

朝、高田先生が、


「じゃあ、真田妹の席は真田兄の横な」


と言ったせいで彼女はオレの席の隣にいる。

オレは何も悪くないはずだ。

なのに、授業中ずっとみんなから冷たい目で見られていた。

こんなのに耐えられる和人でなかった。


(早く席替えして~)


ココロからそう思う和人だった。



「やっと終わった~!」


6時間目が終了し、やっと目に見えぬストレスから和人は解放された。


「これで授業は終わり?」

「そうだよ・・・」


それにしても、今日ほど驚いた日はそうないかもしれない。

まず、真奈は賢い。

抜き打ちテストもクラス唯一の満点。

先生の出した超難題もスラスラ解いてしまった。

兄より妹の方が賢いというこの構図はどうなのだろう?

そんなことを考えていると、先生がやってきた。


「じゃあ、終礼をはじめる。

 と言っても、特に連絡事項は無い。」


じゃあ、これで家に帰れるなと和人は思った。

しかし、この世界はそこまで優しくなかった。


「ああ、真田兄は真田妹に学校の施設を案内してやれ」

「・・・は?」


先生、今なんと?


「だから、真田妹に学校案内をしろって言ってるんだ。」



そして、オレと真奈は今図書館にいる。

自慢ではないが、ここ南星中学の図書館は普通の市立図書館よりも蔵書数が多い。

本がそこそこ好きなオレには魅力的な場所である。


「この図書館には何冊置いてあるの?」

「詳細は知らないけど、書庫にあるのも含めて、1000万冊ぐらいかな」

「すごい!そんなにあるんだ」

「何か借りたいのがあるなら、借りてやるけど・・・」

「それはいいの。

 ねえ、この図書館には個室ってある?」

「あるよ。借りてこようか?」

「お願い」



「借りてくれてありがとう」

「別にいいよ。全室空いてたし」


今、オレたちは図書館の個室にいる。

使い道は主に自習用だが、今回は違う。


「さて、じゃあ少しだけ聞いてもらおうかしら」

「俺のこととかか?」

「ええ。まず、私の異能から説明しようかしら」


と言って、真奈は右手をかざした。

すると、右手に冷気がまとい始めた。


「私の異能は氷、固有名はなしよ」

「固有名?」

「ええ。あなたのハートゲイザーのような・・・」

「ちょっと待った、このチカラは視心術って名前じゃないのか?」

「ええ、その名は狭山家固有の名前。

 一般的には、こう呼ばれているわ」

「狭山って、あの?」

「そう、あなたの想像通りの狭山よ」

「・・・」


オレは狭山家を知っていた。

視心術という名前も、もともと狭山家に教えてもらったものだ。


「さて、次にあなたのチカラだけど・・・」

「ああ・・・」

「はっきり言わせてもらうと、最強最悪のチカラよ」

「なっ・・・、どうしてだよ!」

「理由はまず、相手のココロが視えるから

 これだけでも戦いでは有利にたてる」

「そうだけど・・・」

「もう一つあるのだけど、これは知らないほうがいい」

「なんでだよ?」

「これを知ると、あなたは自分を嫌ってしまうから」

「オレが、オレ自身を嫌う?」

「そう、だから・・・」


その時、外から悲鳴が聞こえた。


「!なんだ、今の悲鳴は?」

「わからない、とにかく急ぎましょう!」


オレたちは個室を出て、悲鳴の聞こえた校庭にいそいだ。



校庭にいたのは、全身が炎に包まれた怪物だった。

全長は5メートルぐらいだろうか。


「なんだ、あれは?」

「イフリートよ。まさかこんな所に現れるなんて・・・」


真奈はそう言って、臨戦態勢をとった。


「あなたはここにいて」

「だけど!」

「あなたには戦う術がない。

 今は邪魔になるだけよ」

「・・・!」


そう言い残した彼女は、イフリートと呼ばれる化け物に向かっていった。

彼女は氷の塊をつくってイフリートにぶつけたが、ぶつかる瞬間に蒸発した。


「くっ!やっぱり相性が悪いわね」


それでも彼女は諦めず、イフリートに攻撃していた。

そんな彼女を見て


「オレは何も出来ないのか?」


和人は自問自答した。

すると、校庭にヒカリがいた。

地面に倒れていて、気絶しているようだった。


「あの馬鹿!」


オレはヒカリの所に走っていった。

ヒカリを抱き上げ、校舎に運ぼうとした時だった。

真奈が止めそこねた、イフリートの炎弾がこっちに飛んできた。


「危ない!避けて!!」

「そんな無茶な・・・」


だが、このままでは自分もヒカリも危ない。

そう思った和人は、ヒカリにココロの中で謝罪し、彼女を思いっきり転がした。

そして、和人自身は、


「しょうがないよな、この場合は」


と言って三年前、小学校の時に狭山龍平に止められた、もうひとつの力を解放した。


「ごめん、龍平。これを使うことを許してくれ」


と、天国にいるであろう彼に謝ってこうつぶやいた。


「心器『ミストラル』、召喚」

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