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覚悟

・・・浩樹が誘拐された。

それは朝、先生にすれ違った時に視て知った。

最初は信じられなかった。

そのあと職員室の前を通ると先生たちが職員会議をしていた。

議題は、浩樹が誘拐されたことについてだった。

オレは走り出した。

信じたられない、信じたくなかった。

(心配するなって、誰も誘拐されねえよ)


「昨日そう言ったじゃねえか、浩樹・・・」



走りついた先は教室だった。

みんなはこのことを知っているのだろうか?

そう思って、普段はしない、意識的にココロを視た。

結果は、みんな知らなかった。

親たちが教えなかったのか、先生たちが情報工作したのか。

とにかくみんなは友達の危険を知らなかった。


「てことは、知っているのはオレだけか」


みんなに知らせるか・・・。

いや、それはただみんながパニックになるだけだ。


「オレはどうしたらいいんだ・・・」



その日の授業は午前で終了した。

午前の間の授業はまるで身に入らなかったし、先生もどこか焦っていた。

みんな午前で終わって嬉しそうだったが、何人かは異変に気づいたらしい。

オレは帰りの用意をして、さっさと家へと帰ることにした。

こんな気持ちで学校にいるのは苦痛以外のなにものでもなかった。

帰り道も、ここにあらずという感じだった。


「浩樹・・・」

「彼を助けたい?」


いきなり後ろから声をかけられた。

振り返ると和人と同じくらいの年の黒髪の少女がいた。


「誰?」

「質問に答えて、彼を助けたい?」


その言葉に、和人は迷うことなく答えた。


「助けたいに決まっている!!」

「じゃあ、なぜ能力(ちから)を使うことをためらうの?」


と、ありえない言葉がかえってきた。


「なに・・・?」

「『視心術』、それがあれば犯人の場所もわかるんじゃないの?」

「なんでそれを・・・」

「そんなことは今はどうでもいい、助けにいかないの?」

「くっ・・・」

「なぜためらうの?彼より自分の秘密の方が大事?」


正直言って和人は怖かった。

もし、この術がみんなにバレて化け物扱いされるのが。

だが・・・少女はココロを揺さぶる言葉をかけた。


「あなたしか、彼を助けられないんじゃないの?」

「・・・!」


そのとおりかもしれない。

あと何日かすれば警察あたりが犯人を見つけ逮捕しているだろう。

だが、その時浩樹は無事だろうか?

殺されていなくても、ココロが死んでしまうかもしれない。

だが、おれが能力を使えばまだ間に合うかもしれない。

なら、もうオレがやることは一つ・・・。

そのためにオレはもう一度学校へ戻った。



その姿を少女は見ていた。


「少し、強引だったわね」


少女はため息をついた。


「でも、早く彼の能力を解放させないと・・・」


そのためには、もっと経験が必要だ。

それには、危機的状況は利用すべきだ

少女はバレないように和人の後を追いかけた。



学校へ向かっている和人の前にさっきとは違う少女がいた。


「あれ、和人?」


彼女の名前は、オレと浩樹?の幼馴染の篠野(ささの)ヒカリだった。


「さっき帰らなかったっけ?」


と、彼女はとても不思議そうに聞いてきた。


「忘れ物したんだよ」

「そんなんだ、和人はうっかりやさんだね」

「ははは・・・」


オレがごまかして


「じゃあオレ行くわ」


と言ってこの場から去ろうとすると、


「・・・浩樹を助けに行くの?」

「・・・!」


なんかオレは今日、いろんな人に驚かされるな・・・と思いながら


「なんで知ってるんだ?」


と聞いてみた。すると彼女は


「見たの・・・浩樹が誘拐されるところを」


と、衝撃発言をした。


「なんだって!!」

「私が昨日、学校から帰って塾へ行こうとした時に、浩樹を見つけたんだ。

 私が声をかけようとしたら、一人の男の人が現れて・・・」

「そいつが浩樹を誘拐したのか?」

「多分・・・」

「そうか・・・」

「私を責めないの?なんでその時助けなかったのかとか」

「責めれないな、オレもさっきまで迷ってたわけだし」


と笑って言った。

すると彼女は


「また、無茶するの?あの時みたいに」


と言った。

あの時というのは、オレが浩樹を助けに行くのを躊躇わせたもう一つの理由だ。

オレは自信を持ってこう言った。


「あの時みたいにはならないさ」

「本当に?」

「嘘はつかないよ」


彼女はその言葉を聞いて安心したのか、口元を緩ませ、


「じゃあ、とっとと浩樹を助けて戻ってきなさいよ」

「わかってるって」


和人は彼女に「じゃあ」と言って、職員室を目指した。



「おう、真田か。どうしたんだ?」


オレは担任の高田先生を訪ねた。もちろん理由は・・・


「先生、浩樹を誘拐した犯人から来たビデオレターを見せてください」

「なに・・・?」


職員室を通った時に聞こえた中に「ビデオレターがありますしね」という言葉が聞こえたのだ。


「なんのことだ?ていうか谷川は今日病欠なわけで別に誘拐されたわけじゃ・・・」

「じゃあ、なぜ職員会議で浩樹の誘拐について話してたんですか?」

「な・・・なぜそれを・・・?」


と先生はしまった、という顔をした。それにオレはフッと笑った。


「ボロが出ましたね、先生」

「くっ・・・」

「見せてくれませんか?」

「しかし・・・」


高田先生が悩んでいると奥から中年の先生が出てきた。


「見せてやりなさい、この少年に」

「校長?」


そこにいたのは、南星中学校校長の上原先生だった。


「いいのですか?」

「いい、責任はすべて私がとる」


そう言って校長はオレを見た。


「いい目をしているな」


その言葉にオレはヒヤッとした。


「さあ付いてきなさい、こっちで見られる」


オレは、校長の後をついていった。

・・・浩樹を助けるために、自分のこの忌まわしい能力(ちから)を使ってやる!

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