ココロが視える少年
南星中学校に通う少年・真田和人はどこにでもいる中学生だ。
しかし、彼にはある能力があった。
『視心術』、言葉が示すとおり彼は他人の心が視えてしまうのだ。
それも無意識に視てしまうのである。
彼はいつも他人の薄汚い心の中で暮らしていた。
嫌だった。
彼の家系は特に何の特徴もない家だ。
そんなところにこんな能力をもった子が生まれるのはおかしい。
そう思った彼は親に、
「俺は本当にお母さんの子だよね?違う人の子とかってないよね」
と聞いた。
すると母さんは
「何言ってるの?あなたは私たちの自慢の子よ」
と笑いながら答えた。
和人は誰にもこの能力について話していない。
彼はどんどん心が能力に押しつぶされそうになっていた。
そんな時、ある事件が発生したのであった。
「和人、遊ぼうぜ!」
そう声をかけてきたのは、俺の幼馴染で親友の谷川浩樹だ。
「遊ぼうって、具体的には何してだ?」
「これだよ、これ」
そう言って浩樹が取り出したのは、携帯ゲームだった。
「発売してから結構経つんだけど、協力プレイとか出来て面白いんだよ」
「そうなのか?」
「ああ、お前も今日持ってきてるだろ?データ転送するから電源入れろよ」
「わかったよ」
そう言って俺はカバンの中から携帯ゲームを取り出し、電源を入れた。
それから浩樹にゲームのデータを転送してもらい、ゲームを起動した。
どうやらこれは難易度の高いダンジョン系のゲームらしい。
「へ~、確かに面白そうだな」
「だろ?ってもう時間ねえや。
また後でやろうぜ」
「ああ」
ゲームをしまい、授業の用意をしていたら他の生徒の心が視えた。
(この頃、中学生の誘拐が多発してるってお母さんが言ってたな。
私も気をつけなくちゃ)
中学生を誘拐?なんでだろうと思っていると先生が入ってきた。
・・・このことはまた後で考えよう、そう思った和人であった。
その日、和人と浩樹は一緒に帰っていた。
「いや~綺麗な夕日だな」
「そうだね・・・」
彼が心からそう思っているのはわかっていた。
和人が気にしているのは、別のことだった。
「なあ浩樹、今誘拐事件が多くなってるだろう?」
浩樹は緩んだ顔から真剣な顔に切り替えて答えた。
「ああ、母さんたちが言ってたな」
「みんな大丈夫かな・・・」
俺が心配そうな声を出すと弘樹は笑って
「心配するな、誰も誘拐されねえって」
と言ってくれた。俺はその言葉で吹っ切れた。
「そうだな、心配してても始まらねえし」
「そういうことだ」
彼は笑ってそう言った。
途中で別れて、和人と浩樹は家へと帰っていった。
そして次の日、和人は登校してから驚くべき真実を知る。
・・・浩樹が誘拐された