かみ~んぐあうとぉ~♪
会場であるグラウンドに戻ってみると、野外に作られたステージ上には三笠先輩が居た。どうやら今から仕切り直しとして会長として挨拶をするようだ。…顔のアザが痛々しいが、よくやる気になったなぁ…
「…えー、生徒の皆、待たせてすまない。ちょっと生徒会の仕事で手間取ってしまった。…では、仕切り直して、学校祭を皆で楽しむとしようじゃないか!希望高校学校祭…開幕だっ!」
「「うぉぉぉっ!!」」
こうして学校祭が始まった。だが出し物を出すショー部は…
「…弓佳先輩、戻って来ませんね…」
「あいつ、顔色悪かったからな…まだ動けないのかも知れないな」
「…う~ん…」
阿見津先輩が戻って来ないため、ロシアンたこ焼きの開始を見送っていたのだ。…声を出したことが、そんなに酷くなるのか…無理をさせちまったんだなぁ…
「にしても、阿見津先輩が声を発したのは驚きですわね…」
憐香が言う話ももっともだ。声自体が出ないのだと思っていたが…どうやら声は出るらしい
「とりあえずぅ、皆、一回自分のクラスを見に行っていいよぉ?」
桜先輩は一時解散の指示をだした。…まぁ無理もないか。ただ待ってても時間の浪費になりかねない
「じゃあ…一回解散~♪」
そして俺と桜先輩以外は全員クラスに帰って行く。…ただ、俺は戻らなかった
「…あっちゅん?戻ってもいいんだよぉ?」
「…桜先輩、何をする気っすか」
俺は気付いていた。…この人、一人で何かをしようとしてる。それは俺には関係ないとは思う、だけどなんか見過ごせないんだ
「…な、何の事かなぁ…?」
「解散なら桜先輩も動くべきなんではないっすか?」
「で、でもぉ…ひとみんが行ってくれるし…」
「桜先輩っ!」
「ひぅっ…」
俺は語気を荒くして桜先輩に対する。…無理をしてるのを、やめさせなきゃ
「…阿見津先輩が来るのを、待つんす」
「でも…でもぅ…」
「部員が…友達が心配なのは分かります。ただ、今桜先輩が見に行ってもなにも変わらないっす」
「…!!」
桜先輩が唇を噛み、うつむいた。…少しくらい嫌われても仕方ない、か
「…桜先輩?」
「…あっちゅんは…ちゃんと弓ちゃんの気持ちを理解してるのかも…ね?」
「分かんないっすよ。…俺、乙女心とか分かんないんで」
「…そこに乙女心は関係ないと思うよぉ?」
「違いないっすね」
そして少し桜先輩が、笑った。…これでいいんだ。桜先輩は、今つらい立場に居るんだから、笑わせてやらなきゃな
「…もう少し…」
そして再び桜先輩が口を開く。…なんだ?
「はい?」
「…近く、行っていい?」
「……え?」
そして俺が答えるより先に桜先輩は俺の隣に来た。…ちょ、近いっ…
「…合宿の時も、あっちゅんに助けられたんだよねぇ…」
「…あれは、結局俺は何もしてなかったじゃないっすかね」
「ううん…あのとき、もし一人だったら…って思うと、とても寂しかったと思うんだ…でもあっちゅんが手を伸ばしてくれたから、寂しくなかった…んだよぉ?」
「…」
昼前の部のテントの下に若い男女が隣同士で座ってる。…青春じゃね!?やべぇ、意識したら顔あっつ…
「…あっちゅん?」
「え?あ、あぁ、ちゃんと聞いてます聞いてます!」
「…変なあっちゅん♪」
俺の顔を見て、いつものような笑顔を見せてくる桜先輩。…可愛い!!
「…じゃ、私もクラスに行ってくるねぇ?…テントの管理、お願いしていい?」
「了解っす」
そして桜先輩は立ち上がり、自分のクラスの方に足を向ける。だが歩き出す前に一度振り返り…
「あっちゅんの様な男子ならぁ…私、付き合ってもいいかもぉ♪」
なんて笑顔で言って、足早にクラスの方に歩いて行った。……え~と…
「ええぇぇえぇぇええぇっ!!!?」