下がりなさい
「…止めなさい。そして、私の友達を離しなさい」
「え、ですが…」
「言い訳無用っ!早くっ!」
「は、はっ!」
桜先輩が部室から涙目で出てきて、黒服に指示を飛ばす。黒服はそれに従い、少し後退する。俺はとりあえずホコリを払いながら起き上がる。…なるほど、この黒服は桜財閥のガードマン的な奴か。…なんでこんな所に?
「淳君」
そんな俺に桜先輩が声をかけてきた。…目には涙が溢れてきてて、目が真っ赤だ。それに…愛称で呼んでくれない
「…なんすか、桜先輩」
「何で無茶したの?」
「そりゃあ…勘っすかね?なんとなくここに居た気がしたんす。…これでも、心配したんすよ…」
「…」
桜先輩は涙が止めどなく流れている。そして俺に近づき…
「…ありがとう……」
「うっ!?」
抱きついてきた。…え?え!?
「…カオ…ゲホッ!…カオル先輩…三笠さんは…」
そこで放置されてた阿見津先輩もやってきた。阿見津先輩の声はかすれてるが、しっかり出すと綺麗な声だなぁ…
「…中に居るよ、弓ちゃん」
「…はい!」
そして阿見津先輩は部室に入る。ただ桜先輩は俺を離してくれなかった。…ふくよかな感触が、身体に…
「…桜、先輩…?」
「…バカ…バカ…」
「あの…なんで罵倒されてるんすかね?」
「…だって…血が…」
「え?…あぁ…」
桜先輩に指摘され、額を拭ってみると…血がついていた。どうやら先ほどやりあったときに切ってしまったようだ
「…大丈夫っすよ、これくらい。これでも俺は男っすよ?」
「…でも…私たちの為に…」
「河内…君、三笠さん…居た…よ…ケホッ」
阿見津先輩が部室から出てきた。どうやら三笠も部室に居るらしい
「…分かりました。とりあえず桜先輩、阿見津先輩。部室に入りましょう?ここじゃ話をするのも…」
「…」
そう話そうとしてる中、黒服がひたすら俺を睨み付ける。…やりにくいな…
「貴方達、もういいです。下がりなさい」
「は?でもこれはお父様の…」
…お父様?…まさか、この件は桜先輩の父親が絡んでるのか…?
「私の指示です。…帰りなさい。貴方達の処遇は私がなんとかします」
「…分かりました」
そして黒服が帰っていく。…桜先輩、中々の大物なんだな…
「…中、入ろ?」
「あ、はい…」
そして俺は桜先輩に手を引かれ、部室に入っていく。…この件、ちゃんと理解して解決しなきゃ…




