和がーるず
太鼓の音が町中に響き渡る。今日は希望町で一年に一度だけ開かれるお祭りだ
「…今日は祭りか…」
俺は今日は全く予定がない。というのも、携帯はならず、妹は中学の友人と祭りにくりだしている。部活は桜先輩からメールで
「今日は休みだよ♪」
と伝えてきた。…なーんか嫌な予感はするけど…
「…ん~、どうすっかな…」
正直祭りは見に行きたいんだが、一人で行くのは寂しいんだよなぁ…
「…部の誰かを誘うか…?」
いや、待て待て待て。…風はまぁ幼馴染みだから良いとしても、他の面子は…
「デートになるじゃん…」
第一、今日休みの理由ってもしかして祭り?俺ハブられた?
「いやいや、あまり考えるな俺。…そんな事は無いだろ、うん」
…不安になってきた
「…」
そこで急にインターホンが鳴る。…誰だ?
「…」
ドアについてるレンズを見てみると、鳴らしたのは憐香の執事、奏夢さんだ
「…なんすか」
とりあえずドアを開ける。奏夢さんはそれに気付き、すぐお辞儀をしてくる。…一人か?
「今お暇ですか??」
「…まぁ…暇ですけど?」
「丁度よかった、ではこれからお祭りどうでしょう?」
…何で俺を誘うの?
「…あのバカからのお達しです」
「…憐香か」
「もう既にショー部の皆様が揃っています」
…そういうことか
「…了解っす」
…とりあえず目の前にある車に乗り込む事になった俺。…こっからドタバタお祭りの開始だ…
「…デカイ車っすね」
大道寺の家の車で移動している。車には全員乗ってもまだ余裕があるくらいデカイ車だ。ヴァンだ。とりあえず俺は最前列に座り、運転手は奏夢さん(てことは歳は18よりは上か)、二列目に憐香に風、三列目に阿見津先輩と時雨先輩、最後列に桜先輩がいる。車内はとってもにぎやかだ
「意外と素直についてきましたね、淳君」
「…ついて行かなかったら部の代表がうるさそうっすからね」
「あぁ、あの美少女ですか」
「まぁ、美少女かどうかはともかく、多分想像してる人っすよ」
「全く…貴方はとんだ美少女達とバカに囲まれたものですね?」
奏夢さんがクスクスと笑う。…おっしゃる通りで
ほどなく祭り会場に着いた俺たち。だが皆はその会場にすぐは行かなかった
「祭りと言えばぁ~??」
「「浴衣!」」
と、女性陣が声を揃えた位だ、多分着物をレンタルしに行ったんだろう。…その間俺は、少しふらつくとするか
「お待ちを」
「いっ!?」
何故か手首を捻られ、奏夢さんに止められる。…止め方あるだろって!?
「…ちょ、痛いっ…」
「あ、申し訳ありません。淳君がとても意味の分からない行動を取ろうとしていたので、つい」
「つい、でそんなに力強くやるかよ…」
「とにかく、です。皆さんが着物を来てくるのですよ?それを待つのが良いのではないですか?」
「確かにそれも分かるんすけど、結構時間もかかるでしょう?だったらその間でも見て回れるかなって…」
そう話すと、奏夢さんは深いため息をついた
「…はぁ…これでは主人公スキルも台無しですわね」
「なんすかそのスキル」
「こんな素敵イベント、中々ないでしょう?美少女と共にお祭りなんて…」
「あ~…」
どうやら奏夢さんは結構な乙女心を持っているようだ。…ん、ちょっと待て…
「そういえば奏夢さんって…女性っすか?」
「いかにも」
…へー…中性的な顔立ちだから分からなかったなぁ…
そんな感じで話してる間に女性陣は着物を着てやって来た。…うわぁ…さすが皆元がいいだけに可愛いなぁ…
「あっつ~ん♪しばらく振りの着物~♪」
風は水色の着物。水玉模様がまた可愛らしい。…昔に何回か着てるの見たことあるからあまり感動はないが…
「…私はこういうのは苦手なんだが…」
時雨先輩は赤の着物。帯がリボンの形に縛られてるせいか、いつもの様な豪胆さ(?)は影を潜めてるな
「…どう、草影?」
「バカなりには似合ってるのでは?胸も小さいのですから着物に助けられてよかったですね♪」
「…好き勝手に言ってくれるわね…!!」
憐香は黒を基調とし、所々に鳥の模様があしらわれた着物。…確かに胸は小さいから、着物が様になってる…
「淳、失礼なこと考えてますかしら?」
…目を逸らすか
「…」
阿見津先輩は薄い緑の着物。そしていつもしている眼鏡をかけてないせいか、別人に見えてくる。…べっぴんだな
「下駄がカランコロンって…なんか祭りって感じだねぇ♪」
桜先輩はやはりピンクの着物。模様で桜があしらわれてる。そして桜先輩は部一の巨乳(グラビア程じゃないが)のせいか、着物なのに胸の大きさが見て取れる。それに髪を後ろで束ねてるからうなじが見える。全国のうなじファンが見たら卒倒するくらい美しい…
「じゃ、行こっかぁ♪」
そしていつも通り桜先輩を先頭に、ショー部の祭りの練り歩きが始まった…