そう、それは突然に
「…じゃぁ、私たちも行くよぉ?♪」
「…うっす」
合宿の夜、俺たちはチームに別れて肝試しをすることになり、俺は桜先輩と組むことになった
「いやぁ、雰囲気が出てて良いねぇ~?♪」
「…そういうもんっすかね」
「むぅ、乗りが悪いぞぉ、少年♪」
「…はぁ」
…正直、俺はこういうのには向かない。あまりこういう物には驚かない体質なもんでね
それにコースも問題だ。まるで「肝試しをやりなさい」的な道がちゃんとできてる。…簡単に言えば、林の中なのに何故か舗装された道があるんだよ
「いやぁ~、風が気持ちい~♪♪」
隣の桜先輩は満面の笑みで歩みを進めている。…何が楽しいのやら…
「…あれ?」
だが程なくして舗装されていた道が途切れる。…話を聞いただけなら、ちゃんとその道を通れば別荘に戻れた筈だが…
「あれぇ?…道が無いねぇ?」
「仕方ないっすね、来た道を…」
「待たれよぅ!!」
だが引き返そうとした俺の首根っこを捕まえる。桜先輩の目はやる気に満ちている。…まさか…
「道なき道を進む…これこそ勝負じゃないかなぁ!?♪」
やっぱり
「…そっち行くのには反対しないっすけど、本当に帰ってこれるんすか?」
正直不安だ。正規ルートを外れれば間違いなく危険が潜んでる。そうなればもしかしたら怪我をするかも知れない…
だがそんな不安をお構いなしに桜先輩は笑顔でブイサインを作り
「その時はあっちゅんが守ってくれるからだいじょーぶぃっ♪」
と言ってきた。…あれ、危険だって言葉発したっけ…そういや、桜先輩も時々地の文読むな
「…分かりました、好きにしてください」
そんな言葉に抗えるはずもなく、俺たちは道なき道を進みだした
「…林にしてはずいぶん深いっすね」
「そうだねぇ…私もこんなに深かったとは思わなかったけどなぁ…?」
それから十分、俺たちは道なき道を進んでいた。だが林から抜ける気配はおろか、元来た道が分からなくなってしまっていた、平たく言えば迷子だ。…良い年した男女が迷子かよ…
「…あっちゅん、なんか失礼な事考えてない?」
「いえ、別に何も?」
横を歩く桜先輩がジト目で俺の顔を覗き込む。…地の文読まれるのはおぉ怖い
「にしても…俺たち、迷子みたいっすね」
「…うん」
…あれ…?隣を歩く桜先輩の元気が無くなった?
「…桜先輩?」
俺は不思議に思い、桜先輩の方に目を向ける。すると桜先輩はうつ向いていた
「…寒いね」
「あぁ…さすがに夜は冷えますね」
「…来た道、戻れば良かったね」
「…後悔なんてらしくないっすよ。どのみち桜先輩なら100%こっち来てましたから」
「むぅ~、それはど~いう意味だぁっ!!」
桜先輩が顔を赤くし、俺を叩いてくる。まだ少し笑顔も見えた。…まだこれなら大丈夫だな
「もうっ!!」
桜先輩は頬を膨らませ一歩前に進んだ、その時だった。桜先輩の足場が…崩れた
「ひぁっ!?」
「!!先輩っ!!」
俺は咄嗟に手を掴むも、そのまま崖を滑り落ちていった。そして…意識を失った…