猫原 実季
「…んな事で、今日も終わりっと。ここは復習しとけよー?」
「…終わったか」
とある日(便利な言葉だよね)の放課後、授業が終わり放課後になった。俺がいつも通り帰り支度を済ませる中、風がやって来た
「あっつん、今日も部活でしょ「にゃー」
「あぁ、そうだな」
「今日は一緒にお菓子を買って持っていこう「にゃーっ」
「…そうだな」
「先輩達ってどんなお菓子が好きなんだ「うにゃーーっ!」
「…風、後ろにくっついて居るのは誰だ?」
「…ん?」
「…うにゃっ!」
先程から風の後ろに一人の女子生徒がくっついてきていた。…背は低く、茶色い髪にネコミミカチューシャをつけ、人間ではあるが、随分と猫っぽい子だった。…だけど、女子生徒の割には制服が少し汚いような気がした。スカートの裾はほつれ、髪の毛も心なしか痛んでるように見えた
風はその子と目が合うと少し間があり
「…猫原ちゃん?」
「そうにゃ!実季にゃ!」
「…誰だ?」
俺の問いに、その猫娘は笑ながら答える
「同じクラスの猫原 実季にゃ!一応もう1ヶ月以上クラスメイトにゃよ?」
「…そうだったか?」
そういえば思い出した、こいつが自己紹介の時に浮いてた奴か。…でもそれ以降の印象が無いってことは、もしかして普通…
「…小腹が空いたから煮干し食べるにゃ」
猫原は鞄から煮干しが入った袋を取りだし、少しずつ食べていた。…猫だな、こいつ
「…とりあえず部活行くぞ、風」
「あ、そだねー!!実季ちゃんまたね?♪」
「ばいばいにゃ♪…」
俺は煮干しを頬張る猫原を尻目に風を連れ部室に向かった
「ごめんねぇ、あっちゅんにふーちゃん♪今日は部活やらないんだぁ♪」
「…どしたんすか?」
「いゃぁ、私とひとみんは進路指導、弓佳は…ちょっと体調悪くて病院なんだってぇ♪」
「…確かに、私たちだけでも仕方ないですよね」
「だな」
今日は部活が休みになった。今日はもう学校に用が無くなったな、よし、帰るか…
「風、帰るぞ?」
「あ、うん!桜先輩、お疲れさまでしたぁ♪」
「うん、お疲れぇ♪」
俺と風は桜先輩に別れを告げ、帰路に着いた。そして風と別れ、俺も家に入ろうか、と考えてはいたんだが…
「…ったく、何でついてきたんだよ」
「にゃ?にゃんでだろーにゃー?」
どうやら今までずっとついてきていたらしい。…気配は感じてたが、まさかここまで来るとは…
「なんなんだ?俺についてきても何もいいことは…」
そう言い切る寸前に、猫原のお腹が鳴った。猫原は恥ずかしそうにお腹を隠していて、なんか笑えてきた。…特に話もしてないが、本当に猫っぽいんだよな
「…サンマ、食うか?昨日焼いたんだが、まだ半切れ焼いてないはずだ」
「!!で、でも…」
猫原は一瞬目を輝かせたが、すぐに目線を逸らす。思った以上に遠慮深い人間らしい
「心配すんな、食ったら家まで送ってやるよ?」
今は夕方だ、たぶん猫原も今俺んちに寄ると帰り暗くなるのが心配なんだな?
「…別に、心配してもらわなくてもいいにゃ。…気分が紛れたから、帰るにゃ。ばいばいにゃ!」
そう猫原は言い終えると、そのまま走って去ってしまった。俺は急だったから追えなかった
「え?お、おい!?…ったく、なんだったんだ?…猫の気まぐれってやつか?」
だけど、俺はさっき教室であった時の猫原の容姿が気になっていた。…入学してから1ヶ月半しか立ってない割には、随分と制服がダメになってた気がするんだよなぁ。それに猫原の様な子は、髪の毛があんなになるまで痛む前に、何か対策する気がするんだが…
「…他人の事情は考えても分からない、か。…飯、作るか」
そして俺は考えるのをやめ、家に入る。そしていつも通り俺と妹の分の食事を作りにかかるのだった…