大道寺憐香
「…だるい…」
ある日の昼下がり。俺はぐだっていた。季節は梅雨時で、中々晴れないのが精神的にストレスになっていた。俺は机に突っ伏していると…
「河内って、あなたでしたかしら?」
唐突に声をかけられた。頭を上げると、そこには女子生徒が仁王立ちをしていた
「…誰だっけ?」
「ここの生徒が私の名前を知らないなんて…残念だこと」
常に上から目線で話しかけてくる女子。そういえば、クラスでの自己紹介の時…
「私の名前は大道寺憐香。ここの理事長の一人娘よ」
「あぁ…思い出したよ」
よく周りを見ると、クラスの皆が俺とこいつの会話を見ていた。…なんなんだ?
「今隣いいかしら?」
「あ、あぁ。俺は構わないが…」
すると大道寺はいきなり隣の机を俺の机にくっつけ、弁当を広げ出した
「貴方、ご飯は無いのかしら?」
「あ、…今日、購買行くの忘れてた」
俺は二日おきに購買を利用している。今日はまさにその日だったのだ
「そうなの。よろしければ私のお弁当をお分けしてもよろしくてよ?」
「…とか言いながら、既に取り分けてるじゃねぇかよ」
既に大道寺は鞄から紙皿を取りだし、お弁当からおかずとご飯を少しずつ皿に移し、俺の机に置いてきた
「…あの~、これは…」
「何も言わなくてもよろしくてよ?これが選ばれし人がやるべき事なのよ」
何か達観してしまっている大道寺。…変人オーラがぷんぷんしてきたぞ…
「あの~…話聞いて…」
「では、放課後は部活かしら?」
いきなり話が唐突にかわりだした。頼むから話を繋げてくれよ…
「…まぁ、部活だな」
「それに私も連れていって下さる?」
「は?まぁいいが…入部か?」
「入部?悪くはありませんが、まだ決めてませんわ。クズの集まりかも知れませんし…」
少しトゲのある言葉を使う大道寺。これは友達出来ないな
「クズじゃねぇよ。バカばっかりかも知れないけどな」
「ふぅん…なら、なおさら見てみたいですわね」
そして薄く笑みを浮かべ
「もう一度命じます。放課後私をショー部に連れていきなさい!」
勢いよく俺に指を指し、命令してきた大道寺。…面倒な事になりたくないから、ここは素直にしたがっとくか
「分かった。なら放課後一緒に行くか、大道寺」
「よろしい。…あ、後」
弁当をしまい、帰ろうとした大道寺はその場で振り替える。その勢いでスカートがふわっとしたのでドキッとしたのは言うまでもないな!
「私の事は憐香と呼びなさい。それと私は貴方を淳と呼ぶわ」
「へ?大道寺じゃダメなのか?」
「ダメよ」
即答。…えー
「わ、分かった。憐香…でいいんだな?」
「よろしい。では、また放課後。ごきげんよう♪」
そして悠然と去る憐香。…自己中で女王気質が強い女子、大道寺憐香。俺は大変な女子と知り合ったかもしれないな
その日の放課後。俺は今部室に向かっている。隣には約束通り憐香を連れてる。…憐香はこの高校のアイドル的存在だから、周りの視線が痛い…
「ねぇ、淳はなぜあの部に入ってるのかしら?」
「成り行きだな。なんか気付いたら入部させられてた気がするな」
「なんですのそれ?まるで自分の意思じゃなかったとでも言いたいようね?」
「正直まさにその通りなんだ。…だけど、やめる気もない」
「そうですの」
そして部室に着く。ドアを開くと今日は既に全員揃っていた。俺はとりあえず桜先輩の元へ憐香を連れていく
「あ、おはようあっちゅん!今日も元気かねぇ?♪」
「はは…元気っすよ、桜先輩。で、今日は見学者がいまして…」
「ごきげんよう」
「うん?見掛けない娘だねぇ?」
桜先輩は珍しそうに憐香を眺める。憐香は気恥ずかしそうだ
「な、なんですの!?」
「にゅふふ~…これは、久々に行くしかないなぁ~♪」
そして桜先輩は部室の隅にあったテレビに…昔流行ったハイパーフミコンを繋いでいた。…?
「じゃあ、久々にショー部の…勝負だよぅ!」
「…なにをするんですの?」
部員の皆が集まってきた中、唯一憐香だけが流れにのれなかった
「ねぇ、何が始まるんですの!?」
「…諦めてくれ」
ここでまた勝負が始まる…!…なんで!??