喫茶「シグレイ」
『目的地に着いたよ』
「ここが阿見津先輩の言ってた場所っすか」
俺と阿見津先輩は下校時間が過ぎ、辺りは夕焼けに包まれてる今、喫茶店「シグレイ」に足を運んでいた。…何となくなんだが、阿見津先輩が連れてきた意味、分かった気がする
『はいろっか?』
「あ、あぁ、はい」
阿見津先輩に促され店に入ると、そこは残念なくらいに普通の喫茶店だった。…おもしろみを期待した奴、すまん
「…店員が見当たらないっすね」
強いていって不思議なのは店員が居ないのだ。というより、物音1つ…
「お客様、何名で?」
「うわぁぁっ!?」
…物音1つたてずに目の前から60代くらいであろう老人が現れた。…忍者か!?ここは忍者喫茶か!?
『お久しぶりです、おじさん』
阿見津先輩がひょこっと現れ、携帯を見せる。すると老人は柔らかに笑い
「おぉ…久しぶりだねぇ、阿見津さん。今日は一人じゃないんだね?」
と、返していた。…普通に会話してるように見えるけど、普通じゃ、ないからな?
「今日は二名だね、じゃああっちの席で待っててくれるかな?」
そして柔らかくなった(けして軟体動物になった訳じゃないぞ←知ってるわっ!!)老人に促され席に着く。本当に、どこにでもある小さな喫茶店。よくコ○スとかス○バとか、若い人が沢山行きそうな店が近くにあるのに潰れないな
「では、当店自慢のコーヒーです」
すると何故か頼んでも居ないコーヒーが出てきた。…阿見津先輩が頼んだのか?
「あぁ、君はこの店ははじめてだったから困惑してるのだな?ここは『溜まり場喫茶』なのだよ」
老人は少し自慢げに話している
へぇ、溜まり場ねぇ…
「経営が成り立たないだろうがぁぁぁっ!?」
思わず叫んでしまった。その様子に二人は笑っている。…別に受け狙ったわけじゃ無いんだよ?
『さすが、突っ込み王子』
「勝手にあだ名つけないで下さい」
「さすがは、突っ込み少年だな」
「おっさんにいきなり馴れ馴れしく言われる筋合いねーよ!?」
なんなんだよこの店!?フレンドリーが売りなの!?コーヒーただで、まさかサービスが金取られるの!?変すぎるだろっ!?
そう頭の中で考えてると、阿見津先輩は老人に
『瞳ちゃん、いますか?』
と聞いていた。…瞳?
「おぉ、じゃ、今呼んでくるから待っててくれんか?」
そういい席を外す老人。…瞳って、聞いたことあるような…
「いらっしゃーい…て、あら、弓佳に河内か。珍しい組み合わせだな?」
店の奥から出てきたのは時雨先輩だった。どうやら今さっきまで運動してたようで、上下白いユニホームだった
「…時雨先輩の家なんすか?」
「そうだな。私の家、喫茶店だって話、したことなかったっけ?」
「無いっすね。つか、全くやる気の無いおじさんがやってるっすけど、大丈夫なんすか?」
「全然大丈夫!なんか、なんとかなっちゃってるし、一応コーヒー以外は金取るから♪」
軽く言う時雨先輩。だけどメニューを開いて見ると、俺はその言葉が理解できなくなった。…少し、公開しよう
メニュー
ケーキ(5号1ホール)
1000円
コーラ(500ml)
50円
スパゲッティ
200円
カレー
200円
…安い、安すぎる。ケーキ1ホールって普通2000円はするだろうがっ…!!つぅか、喫茶店で1ホールも食うかっ…
この突っ込みはもう疲れて口からは出てこなかった。…今日の収穫は、時雨先輩の家は、溜まり場喫茶って事、時雨先輩のおじいさんは経営感覚がおかしいって事…
後日談…この店のカレー以外とおいしかったヨ)笑