鍾乳…胴っ!(なんか違う)
「にゃは~、すっずしぃ~♪」
「…そうっすねぇ」
俺たちショー部は今、鍾乳洞にやって来てます。…正直この時期には少し寒いなぁ…。そのわりに部長…桜先輩はピンク色の半袖ワンピースではしゃいでる。…たくましいこと
「私は比較的こういうのは好きだな。この風情は中々だ」
上下ジャージの時雨先輩は桜先輩と同様上機嫌だ。だが眼鏡をかけ制服姿の阿見津先輩は…
『帰りたい(´;ω;)寒い、狭い、怖い…』
と、俺に見せてくる。肘を抱え、目線は様々な所に動いてる。…さすがインドアっぽいとは思ったけど、凄いな
「あっつんはこーいう所、好きなの?」
そしてYシャツにデニム姿の風もなんか怖がってる様だった。…珍しいな
「好きじゃないが、なんか楽しくないか?」
「ん~…いまいち分かんないや」
「よぉ~し、このまま奥へしゅっぱぁつ!!」
桜先輩の号令で皆が進みだした。先頭から桜先輩、時雨先輩、俺、風、阿見津先輩の順で自然と列が出来上がっている。…こうみたら、確かに遠足っぽいな
「あっるっこー、あっるっこー♪私はっ元気ー♪」
片や元気に歌う人
「…うぅ、帰りたいなぁ…」
『同じく(ΤДΤ)』
かたや帰りたがる人たち。…不思議な集まりだな
「…ふふっ」
そこで不意に時雨先輩が笑だした。なんか俺、変な顔してたかな
「どうしたんすか、時雨先輩」
「いや、この部も賑やかになってきたなと思ってな。…カオルも楽しそうだ」
「そうっすね~…」
部にはいって1ヶ月、遊んでばっかだけど、結構楽しい部に入った気がする…
「…随分広いところに出ましたね」
「やっほー♪秘密基地みたいっ♪」
俺たちは進む内に開けた場所にたどり着いた。そこで時雨先輩は荷物の中からブルーシートを取りだし、その場に引いた
「じゃ、カオル。ここらで昼飯にしようか?」
「そだねー♪お腹空いたし、食べよっかぁ♪」
時計を見るとちょうどお昼時だったので、時雨先輩の提案で皆でシートで座り、各々の弁当を広げた。…と言っても、俺はコンビニ弁当だけどな!?
「それにしても、随分広いな、河内。どれくらいの深さなんだ?」
「ここがたしか道半ばで、後少しで最奥っす」
「そうか、ならもうすぐだな」
時雨先輩と談笑する俺。最近気付いたのは時雨先輩は残り二人(桜先輩と阿見津先輩)と比べると常識人だって事だ。おかげで自称凡人の俺もなんとかこの部でやってけるのだ
「んじゃ、ご飯も食べたし、奥に行くよぉ!」
そして昼食も過ぎ、また桜先輩を先頭に歩き出す。そして間もなく最奥に着いた。そこは鍾乳洞が長い年月をかけ作り出した幻想的な世界が包んでいた
「わぁ~…」
風は目を輝かせて、この景色に見とれていた。幼馴染みでも、ここには誘ったことはなかったからな
「大したものだな、河内。よくこんな場所を知っていたな」
「いやいや、俺も最近知ったんす。気に入ってもらえました?」
「ふっ…カオルの様子を見たら分かるだろう?」
時雨先輩が見ていた先には尻餅をついた桜先輩が居た。どうやら驚いて転んでしまったらしい。だが表情は笑顔だった。桜先輩はすぐ立ち上がり、ワンピースについた埃を払って俺に近づいてきた
「あっちゅん、ありがとー♪」
そして俺の手を握ってきた。…生まれて15年、今まで一回も女性と手を繋いだことがない俺(可哀想とかいうなっ!)にとっては、とても衝撃的な出来事だった…
だが、そんな余韻に浸る暇は無かった。手を離された次の瞬間だった
「鍾、乳…胴ーっ!!」
「うぎゃぁぁああっ!!」
桜先輩が俺の脇腹に正拳をぶちこんだのだ。…な、なん、だよ…何なんだよ、それ…
そのまま俺は意識を失った。消え入る意識の中、時雨先輩が何かを言ってた気がするが、俺は聞き取れなかった…
「桜が興奮したら、何をしてがすか分からないから気を付けろって話、しとくべきだったね…」